現代中国の「知の衰退」

「読書しない中国人」年平均で0.7冊 あるインド人の憂慮

2016/06/04 20:49

 あるインド人エンジニアによるエッセイ『読書を忘れた中国人を憂慮する』が中国のネット上で話題になっている。このエンジニアは、読書しない中国社会に、いずれその代償を支払うときがくるのではないかと憂慮しており、中国人に「することがなければ友達を誘って図書館に行こう!」と熱く呼びかけている。

 以下はそのエッセイの抄訳。


 私が上海行きの飛行機に乗っていた時のことだ。機内は消灯時間に入っていたが、眠らずにiPadの操作にふけっている乗客たちがいた。ほどなく私は、かれらのほぼ全員が中国人だということに大きな驚きを覚えた。もう一つ驚いたのは、彼らは一様にゲームに興じたり映画を観たりしていたが、読書をする人が皆無だったことだ。

 落ち着いて座って本を読む中国人はめったに見かけない

 この時の光景は今も私の脳裏に焼き付いている。フランクフルト空港ではドイツ人乗客のほぼ全員が静かに読書や仕事をしていたが、中国人乗客の大半は免税店を忙しく行き来したり、大声で談笑しながら品物の値段を比較したりしていた。

 どうやら現在の中国人には落ち着いて座って本を読むことができない人たちがいるようだ。私とフランス人の友人が一緒に上海虹橋駅で列車の到着を待っていた時、それが初めての中国訪問だった友人は、私にこう尋ねたものだ。「どうして中国人はみな電話や携帯電話をいじってばかりで、本を読む人がいないんだ?」

 報道によると、中国人の年間平均読書数は0.7冊だという。韓国人の平均7冊、日本人の40冊、ロシアの55冊と比較しても、中国人の読書量がいかに少ないかが分かる。

 中国各地の中小都市で最もにぎわっている娯楽施設は雀荘とネットカフェだ。人口1万人ほどの小都市でも、数十カ所もの雀荘と5~6軒のネットカフェがあり、中高年は麻雀に、若者はネットに、子供たちはテレビに夢中になっている。中国人の娯楽といったら、麻雀、ネットサーフィン、テレビくらいしかないからだ。ネットカフェであろうが、大学のコンピューター室であろうが、そこにいるほぼ全員はネットゲームをやっていて、その他のごく少数はおしゃべりに興じている。

 インターネットや図書館で資料を調べたり読書したりする学生はほんのわずか。各部門の指導者たちも、一日中各種の報告や接待、宴会に明け暮れている。読書はもはや学者だけの特権となったように思えるが、実はその学者でさえも本を読まない人は多い。これは非常に憂慮すべき状況だ。

 なぜ、中国人は読書をしなくなってきたか

 日本のビジネスコンサルタント、大前研一氏は著書『「知の衰退」からいかに脱出するか』のなかで、中国旅行中にマッサージ店ばかりが軒を連ね、書店をほとんど見かけなかったことに触れ、中国人の一日の読書時間はわずか15分足らずで、1人当たりの読書量は日本人の十分の一に過ぎないことを挙げている。そして中国は典型的な「知の衰退国家」で、今後、先進国の仲間入りをすることはありえないだろうと述べている。

 中国人が読書を好まない原因は4つある。1つ目は国民の教養レベルが低いこと。2つ目は子供のころから読書習慣を身につけていないこと。3つ目は厳しい受験教育によって、子供たちに授業以外で本を読む時間も気力も残っていないこと。4つ目は良書が減り続けていることだ。


 世界で一番読書好きの国民、イスラエル人とハンガリー人

 世界で一番読書好きの国民はイスラエル人とハンガリー人だという。イスラエル人の年間平均読書数は64冊を誇り、子供たちは物心ついた時から、母親からこう言い聞かされて育つ。「本には智慧が詰まっており、お金やダイヤモンドよりも価値がある。なにより智恵は誰も盗むことができない」

 ユダヤ人は世界でただ一つ、文盲がいない民族で、乞食であっても読書を捨てることはできない。ユダヤ人にとっては、本や新聞を読むことは単なる習慣を超えて、美徳とさえいえる大切なものだ。

 ユダヤ人の読書好きを表す好例として安息日がある(訳注:安息日は金曜日の日没から土曜日の日没まで)。ユダヤ人はこの間、全ての商業活動や娯楽を行ってはならないため、あらゆる店やレストラン、娯楽施設が一斉に定休日となる。乗合バスや飛行機も全て運休となり、人々はみな自宅で安息日の祈りをささげる。だが、国中の全ての書店だけは営業が許されている。そして、この日に書店を訪れる人は、他のどの日よりも多いのだという。

 もう一つの読書大国ハンガリーは、国土面積や人口のいずれも中国の百分の一にも満たないが、2万カ所もの図書館を有している。これはハンガリー人500人に対し図書館1カ所という驚くべき数だ。中国の場合、45万9000人に対しやっと1つだけだというのに。ハンガリーは世界で一番読書を尊ぶ気風が高い国で、常に読書に親しんでいる人たちは人口の約1/4を超える500万人以上にのぼるという。

 知識は力であり、財産だ。読書や学習を尊重する国が有り余る見返りを得られるのは当然のことだ。

 イスラエルの人口は少ないうえ、建国してからまだ日が浅いが、これまでに優れた人物を数多く輩出しており、ノーベル賞受賞者は8人もいる。イスラエルの自然環境は厳しく、国土のほとんどが砂漠で覆われているが、イスラエル人はその砂漠をオアシスに変えた。その結果、食料自給率が驚異的に高まり、今では農業立国となっている。

 ハンガリーはノーベル賞受賞者を14人も有しており、その分野も物理、化学、医学、経済、文学、平和など多岐にわたっている。人口比率で考えると、ハンガリーはまさに「ノーベル賞大国」だ。ハンガリー人による発明品も多く、小さなものから先端技術製品まで幅広い。

 この2国とも見かけは小国だが、読書によって知恵と力を手に入れた。そして知恵と力によって、誰もが認める「大国」となった。

 読書を忘れた民族は、希望のない民族

 以前に耳にしたある学者の言葉を思い出す。人間の精神発達史は、その人の読書歴にほかならないという。一つの民族の精神性は、民族全体の読書レベルで大きく左右される。一つの社会が繁栄するか、それとも衰退していくかは、その社会に読書文化が深く根付いているかどうかを見ればよい。

 ある国で誰が本を読んでいるか、またどんな本を読んでいるかで、その国の未来が決まる。読書は個人に影響を与えるだけでなく、その民族や社会全体に影響を与える。読書を忘れた民族は、恐ろしい民族だ。読書を捨てた民族は、希望のない民族だ。このことを心に留めておくべきだ。

 することがなければ図書館へ行こう。映画館でも繁華街でもなく、図書館へ!

(翻訳編集・桜井信一/単馨)

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