女ひとりで世界一周放浪記 7

ボリビアで見た過酷な鉱山労働

2016/07/18 07:00

 世界一周第6カ国目はボリビアです。ボリビアには5月12日から6月16日までの36日間滞在しました。滞在期間中には7つの都市を訪れましたが、今回の記事では「ポトシ」という都市についてご紹介します。

 スペイン統治下時代に金や銀が大量に発掘され、繁栄を極めたポトシ。標高4000mの場所にあるポトシは日本の真冬並みの寒さです。ポトシのコロニアル様式の街並みは、鉱山と共に世界遺産に登録されており非常に美しいです。

 そんなポトシには影の歴史があります。かつて繁栄を極めたポトシの鉱山は奴隷制度の象徴とされており、負の遺産としても挙げられています。これまでに多くのインディオやアフリカ人奴隷が強制的に働かされ、800万人もの人が犠牲になったと言われています。そして今もなお、多くの人がこの鉱山で働いているというのです。

 私が今回ポトシを訪れたのは、その鉱山で働く鉱夫達の様子が見学できるという「鉱山ツアー」に参加するためでした。 ここで、私が体験したツアー内容の一部始終をお伝えしたいと思います。

坑道に入るための準備 服を着替えヘッドライトを装着します(田中 撮影)

 ツアー当日、参加者はまず坑道に入るための準備をします。上着、長ズボン、長靴、ヘッドライトを装着します。坑道の中は空気が悪いため、口を覆うためのバンダナを持参することも必須です。次に鉱夫御用達の店に行き、ツアー参加者同士でお金を出し合って坑夫達へのお土産を購入します。お土産として購入するのは、何と本物のダイナマイト。150円ほどで買えるそうです。その他、ジュースやアルコール度数96度のお酒なども用意します。

 鉱山へ行く準備を整えたら、銀の精製工場へ向かいます。こちらの工場では銀山で採掘した石から銀を取り出すという作業が行われています。取れたもののほとんどはゴミだそうですが、その中には確かに銀が含まれています。

銀鉱山の入り口(田中 撮影)

 そして、セロ・リコ銀山です。いざ、入山!

 坑道内は天井が低い場所が多く、身長150㎝の私でも腰をかがまなくてはいけません。そして、辺り一面には凄まじい量の粉塵が舞っています。バンダナで鼻と口を覆わないと、まともに息が吸えません。中は薄暗くて視界が悪く、ヘッドライトの明かりなしでは前へ進めないほどです。坑道内にはパイプが通っており、外から酸素が送り込まれています。どんどん奥の方へ進むに従って急激に気温が上昇していきます。

 坑道内は、歩くだけでかなりの体力を消耗します。「落ちたら一貫の終わり」というような細い木の上を歩いたり、不安定な梯子を登り降りしたりと、ツアーといえどかなりの危険が伴います。時折、鉱夫達がもの凄いスピードで、鉱山物を乗せたトロッコを押して駆け抜けていきます。

「落ちたら一貫の終わり」というような細い木材の上を歩く(田中 撮影)

 坑道内の岩には、グロテスクな物体が至る所に付着しています。ガイドさんによると、場所によってはアスベストなどの有害物質があるそうです。

 坑道内で会った鉱夫達にお土産として持参したアルコール、ダイナマイトやジュースなどを渡しました。彼らは皆、コカの葉を口に含んで頬をいっぱいに膨らませた状態で仕事をしています。鉱夫達の中には若い男性も多く見られました。若いうちから坑道に入り経験を積んでいくのです。

 電動ドリルで坑道を掘り進める作業を見せてくれると言います。急な傾斜の岩をやっとこさよじ登り、その作業を見ようとすると…凄まじい粉塵!粉塵で視界が真っ白になり、目を開けることができず、呼吸もできません。こんな過酷な作業を長時間続けるなんて、私にはとても考えられません。

身長150センチの私でも腰をかがめなくてはいけないほどの低い天井(田中 撮影)

 坑道内の奥には、安全の神様「ティオ」がいます。鉱夫たちは出勤時と出社時にティオに挨拶をします。ティオの口にタバコをくわえさせ、お酒を捧げて機嫌をとるのです。

安全を守ってくれる神様ティオ(田中 撮影)

 2時間半ほど坑道内を歩き続け、ようやく外へ出ました。こんなに標高が高いのに、酸素が豊富にあることを実感します。

 リタイアする人もかなりいるという鉱山ツアーは、噂に聞いていた通り過酷でした。私たちは短時間坑道内にいただけでこんなに苦しかったのに、それが毎日の仕事場である坑夫達の苦労は計り知れません。

  鉱夫達はコカの葉を口に含み、アルコール度数96度のお酒を飲んで気を紛らわすのだそうです。そうでもしないとやっていられない、そんな環境でした。彼らは昼食もとらずに1日平均8時間働き続け、日給は僅か3ドル程度。粉塵で胸を悪くし、早死にする人も多いそうです。

 お給料を頂くわけだから楽な仕事なんてない。そうは思っていますが、彼らの仕事はいくら何でも過酷すぎではないでしょうか。とてもまともに働ける環境ではありません。

 そして、今なお1万人以上の人々が鉱山で働いており、そこから採掘された資源がボリビア経済を支えているという現実があります。かつての奴隷制度は過去の歴史になったわけではなく、現在も形を変えて続いているのです。

ボリビア経済を支える鉱物。キラキラしていてとても綺麗(田中 撮影)
 

 旅をしていると、いかに自分が恵まれた国に生まれたのかということを痛感します。勿論ストレス社会と言われる日本でも大変なことは多く、辛くてしんどいことも沢山あるでしょう。それでも、粉塵で顔を真っ黒にして坑道内を駆け抜けていく鉱夫たちの姿を目の当たりにすると、世界は何て理不尽なんだろうと思わずにはいられません。日本に生まれた自分は生活水準の面において間違いなく恵まれています。

鉱夫達へお土産として購入した本物のダイナマイト(田中 撮影)

 ポトシ銀山で働く彼らと、自由気ままに旅をしている自分。そのあまりにも大きなギャップをうまく受け止めきれないまま、私は旅を続けていきます。それでも、世界で今起きている事実について知り、これからの未来に向けて世界はどのようにあるべきなのか考えることは、とても大事なことであると思うのです。

 様々なことを考えさせられたポトシの鉱山ツアー。過酷な状況の中でも必死に生き抜いていく鉱夫達の姿を見て、ふと日本での自分の生活を思い返しました。自分は置かれた環境に甘んじず、与えられた命を精一杯生きる努力ができているだろうか。そのようなことを見つめ返すきっかけにもなりました。今後、彼らの労働環境が少しでも改善されることを願ってやみません。

(田中美久)

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