報道と宣伝

中国のジャーナリズムとは? 選択迫られる外国人教師(2)

2016/08/30 11:00

 この文章は、中国のジャーナリズムとは? 選択迫られる外国人教師(1)のつづきです

ウィキリークスで「天安門事件」の全貌を探る

 米バージニアコモンウェルス大学のマスコミュニケーション学部准教授、ジェフ・サウス氏の研究テーマの一つは、ソーシャルメディアだ。

 中国東北師範大学のジャーナリズム学科で教鞭を取っていた同氏は、天安門事件から25年を迎えようとしていたある日、自分の微信アカウントのプロフィール写真を、ある有名な写真と取り換えた。天安門事件の時に撮影された、軍の戦車に丸腰で対峙している男性の写真だ。中国のネット検閲機能がどの程度のレベルなのか知りたかったのと、これを見た中国人学生がどのような反応を示すかにも興味があったからだ。

 その結果、同氏の微信アカウントは3日後に閉鎖されてしまった。学生たちはほぼ無反応で、わずかに女子学生1人から「先生、どうして戦車の写真に変更してしまったのですか?」と尋ねられたに過ぎなかった。

 「私のプロフィール写真は戦車じゃなくて、戦車の前に立っている人なんだけど、この写真を見たことがある?」と学生に尋ねてみたが、この学生は写真について何の知識も持ってなかった。

 同氏が初めて中国を訪れたのは2014年。米国政府のフルブライト・プログラムからの援助によって訪問学者として中国を訪れた。

 フルブライト・プログラムとは、アメリカ合衆国の学者や教育者、大学院生、研究者、各種専門家などを対象とした、国際交換プログラムと奨学金制度の総称。このプログラムにより、毎年約500人の米国人研究者が世界約130カ国に派遣され教鞭を取る。中国に派遣される教員は、渡中前に必ずスタッフからあるアドバイスを受ける。

 「それは3T、つまりチベット(Tibet)、天安門(Tiananmen)、台湾(Taiwan)問題に触れるな、ということです」スタッフの言うことは理解できるが、実際のところ、ジャーナリズム学科で教鞭を取りながら、これらのテーマを避けて通ることは難しく、同氏にはこうした話題を避けるつもりもなかった。

 中国に来るまで知らなかったことだが、「ウィキリークス」も中国では封鎖されていた。だが、ウィキリークスのミラーサイトの一つが、中国のファイヤーウォールによる封鎖対象から漏れていたため、講義中にウィキリークスを使って89年の天安門事件の詳細を検索するという試みを行った。

 「1989年5月21日夜、天安門広場にいた学生の数は?」学生らはグループに分かれて、たった今習得したばかりの「ネット検索わざ」を使って、この質問に対する回答を探し始めた。

 当初、学生らはこの問いの意味するところをよく理解していなかった。だが学生らの出した回答が、一つ一つパズルのピースのように組み合わせられてゆくと、最終的に天安門事件の全貌が浮かび上がった。

 学生らは、検索結果から分かったことをレポートにまとめたが、最終的にはこのレポートをクラスのウェブサイトで発表するのは控えた方がよいとの意見で一致した。彼らは、このレポートが中国当局の目に触れたら問題が起きる可能性があると憂慮していたのだ。そのため、同氏は学生たちの意見を尊重し、このレポートは同氏個人のウェブサイトでしか公表しないことにした。

編集部からのおすすめ
関連記事
注目記事
^