ドイツ大統領ガウク氏来日 早稲田大学で講演

2016/11/17
更新: 2016/11/17

2016年11月16日、訪日したドイツ連邦共和国大統領ヨアヒム・ガウク氏が早稲田大学で講演を行った。ガウク氏は日独関係を強調し、友好関係のさらなる発展を訴えた。また、社会問題や移民問題、さらには民主主義の直面する問題についても言及し、アメリカ大統領選を受けて安全保障も重要なテーマの一つとなった。

ガウク大統領はまず日独の友好関係について述べるとともに、ドイツにおける日本文化の受容について語った。そして日独共通の問題として、社会の高齢化を挙げた。ドイツでは高齢化の対策として移民を受け入れて来た。30年前と比べて有権者の意識が変化し、現在では国民の三分の二が社会の多様化を認めていると指摘。日独で移民に対する考え方や高齢化問題の対策が異なることを認めつつ、移民による社会活性化の可能性を示した。

同氏は安全保障の問題に対しても見解を述べ、資源が乏しいドイツと日本にとって国際貿易は不可欠だとした。自由な航行を保証する国際秩序が、「新たなテロの脅威、新たなナショナリズム、そして保護主義と外部との隔絶がこの21世紀に繁栄をもたらすという誤った考え」に脅かされていると述べ、同時に、民主主義の理念に異を唱える者が増えていることについてもガウク氏は警鐘を鳴らす。その上で、「日本とアメリカ、ドイツとNATO(北大西洋条約機構)という我々の同盟関係は、両国の安全保障にとって依然として決定的な重要性をもっている」と強調した。

ガウク氏はハンブルクの国際海洋法裁判所が二十周年を迎えたことにも注目して、国際法遵守の大切さについて、これは「戦争とホロコーストから導きだされた歴史的な責務」であり、ドイツは「平和的で、国際法に基づく紛争解決を求めていく」と述べた。そしてドイツが戦後フランスやポーランドと和解できたことを例に挙げ、東アジアにおける相互理解を訴えた。3月の中国訪問の際に習近平国家主席と会談し、民主主義の良さを訴えてきたことにも触れて、人権尊重と開かれた社会の大切さを訴えた。

ガウク大統領の訪日は11月18日まで続く。ガウク大統領は先日、安倍首相と会談を行ったほか、16日から17日にかけては京都を訪れ、最終日の18日は長崎を訪問する予定。

【人物紹介】

ヨアヒム・ガウク氏はドイツ連邦共和国第11代連邦大統領。1940年、ドイツのロストックで生まれる。大学ではメディア学を志望したが許可されず、神学を学び牧師になる。東ドイツ統治下では反体制運動を行い、共産党政権崩壊に貢献した。統一ドイツ成立後は特別監理官として旧東ドイツ問題を処理し、政治からは距離を置いていた。2012年2月に前任のクリスティアン・ヴルフ氏が汚職事件で辞任に追い込まれ、同年3月18日に大統領として選出され今に至る。

(文・文亮)

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