「ニュースは酒の肴にしかならない」挫折する中国ジャーナリストの本音

2017/03/12 06:00

 中国のネットで2月、ジャーナリストの心境を吐露した文章が出回った。作成者は、自称元メディア関係者で匿名の微博ユーザによるもの。中国全体に広がる嘘と欺瞞のなかで生き抜こうとしたジャーナリストたちの本音が、生々しくつづられている。

 作者は微博ネーム「youyouluming99」、下記はその抄訳。


 某所で、元メディア関係者20人の会合があった。元ベテランのジャーナリストの話に、皆がうなずいていた。

 「どんなに骨を折って働いても感謝されない。人に損を与え、自分の利にさえならない。これが(中国の)ジャーナリストだ」。

 なかには中国に大きな影響をもたらす報道機関に所属していた人、国際的に高い評価を得た人もいる。いずれも、人々の生活に影響を与えた。

 何年も前、上海の新聞社が北京の大企業の不正をスクープした。狙われた企業の代表は、騒動を鎮めるために3つの話を出してきたという。「1.どれくらい金が欲しいのか 2.上海の同業者が画策したことだ、その企業を調査しようか 3.政治的背景のある誰かに指示されたのか?(その名前を暴露しろ)」。

 そのスクープには、実際どんな裏取引もなかった。メディアは大企業の不正を暴いた。スクープした上海の新聞社の編集長は「それが私たちのすべきことじゃないのか?」と吐露した。

 北京の大企業は、その新聞社にあらゆる嫌がらせをした。編集長への殺害予告は何度となくあったという。

 編集長は、こうした圧力を「馬鹿馬鹿しい」と思っていた。その後、別の報道機関に不正をスクープされたある『お金持ち』が来て、この編集長に「何のために暴露なんてするのか?」と報道自体に疑問を投げかけた。

 編集長は「事実はそこにある。記者はただ報道しただけだ」と言い放ってやったという。例えば、もし登山家に「どうして山に登るのか」と聞けば、「そこに山があるから」と答えるのと同じだ。

 地位と富は確かに人を幸福にさせる。しかし、それだけが幸福の源ならば、人生は何て味気なく、寂しく、表面的なものだろうか。ロシアの作家ソルジェニツィンは、「真実を話すことは、全世界の重さよりも重い」と言った。

 真実は美しい。何十年も、万年筆の先を修理し続ける北京の老人。機械化に頼らないスタイルを貫く福建省の古い農家。何世代にもわたり、ただ一品種の桃を栽培してきた日本の家族。これらに私たちは真実を見出す。

 最近はますますメディアが増えている。24時間体制で情報を収集し、報じている。しかし「本当のニュース」は非常に少ない。独立した意見と知識はますます少なくなった。…見渡せば、すぐに砕けてしまうような泡ばかり。

 私を含めて集まった20人の元メディア関係者は、かつては報道の最前線にいた。 情熱を持ち報道するために、危険を冒したこともある。

 いまや誰もニュースに関わっていない。養豚、金融業、家具売り、映画監督、移民人材派遣、本屋、公共事業…。望んでニュースから離れた訳ではない。ただ、諦めなければならなかったのだ。

「骨を折っても感謝されない。人に損を与え、自分の利にさえならない。これが(中国の)メディア人だ」。

 ここでのニュースはただ、酒の肴にしかならなかった。

(翻訳編集・佐渡 道世)

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