曽錚コラム:北京大大学院卒なのに「チベット問題」何も知らず 講演で赤っ恥

2017/05/02 13:14

 この「残念な」写真は私が中学校に上がったころのものだ。この時のカメラマンはとても手際が悪く、私たちが踊っている間のいいショットを逃すわ、踊り終えてから私たちにポーズを指示するわで、いつまでたってもいい写真が取れなかった。イライラしてポーズを取るのをやめてしまった子もいる中、3人だけはまだ頑張っていたが、そのうち2人の顔は苦痛でゆがんでいた。その1人が、後列にいた私だ。

 私たちが踊っていたのはチベット舞踊で、共産党が「チベット農奴」を解放したことに感謝し、その偉業を称えるという内容だった。30年以上にわたってこの踊りに使われた歌や、その他数多くの共産党の「偉大・光栄・正義」を宣伝する歌が私の中に深く刻み込つけられている。これらが記憶の底からいつなんどき飛び出してくるか、自分でもわからないくらいに。

 私がチベットについて、いかに誤った知識しか持っていなかったかに気づかされたのは、35歳といういい年になってからだった。しかも、非常に恥ずかしい思いをして。

 2001年の世界人権デーに、オーストラリア・メルボルンで人権に関するフォーラムが開催された。そこに招待された私は、法輪功を学習したことを理由に中国当局から労教所(強制労働収容所)に送られ、非人間的な迫害を受けたことを語った。話し終えて質疑応答に入ると、こんな質問を受けた。「チベットの状況についてどんなことをご存知ですか?チベット人も同様の迫害を受けているのでしょうか?」

 私は瞬時に、頭の中でチベットに関するありったけの知識を総動員した。だが、共産党賛美の歌と教科書で読んだ「中共がチベットを解放した」という宣伝文句以外、何も浮かんではこなかった。当時、私は中国から逃げてきて数カ月しかたっていなかったうえ、毎日本の執筆に追われて、あまりネットを使う時間もなかったため、中国国内での常識しか持ち合わせていなかったのだ。

 労教所で九死に一生を得た私は、中国当局が法輪功に関する事実無根のデマを流していることを、身をもって知っている。だから、中国国内で語られているチベットに関する全てのことが、中共のねつ造だということは容易に想像できた。だがそれだけだ。みなに伝えるべきチベットの真実を、私は知らない。このときの恥ずかしさといったらなかった。人々の眼が私に注がれ、私が何か言うのを待っている。私は顔を赤くして「チベットについて、私は何も知らないのです」と答えるしかなかった。北京大学大学院を卒業し、自分は学歴が高く優秀なのだとうぬぼれていた私の鼻が、ぽきんと折れた瞬間だった。

 帰宅すると私は、すぐにチベットに関する情報を検索した。そしてようやく分かった。ああ、中国の共産党政権が、あんなにたくさんのチベット人を殺していたなんて!

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