ある日本人が教えてくれた、相手の長所を学ぶということ

2017/05/04 15:00

 私には、師と仰ぐ日本人がいる。22年前、私の勤務する深圳の会社に、会社のマネジメント方法を改善するため、三辺成雄さんという人がやってきた。社会通念や習慣の違いから、三辺さんと会社の上層部は衝突を繰り返し、毎日のように激しいやりとりが繰り返されていた。議論が白熱してくると三辺さんは机をたたき激高することもあって、たいていの管理職や従業員から嫌われていた。だが、三辺さんが強力に指導したため、たった3カ月で業績は黒字転換し、会社は黄金時代に突入した。

 三辺さんが会社にいたのはたった6カ月だった。三辺さんが在職していた時には、早く日本に帰ればいいのになどと言っていた従業員たちも、彼が去った後、「三辺さんがいればなあ」といって、当時を懐かしんでいた。これは管理職の面々も同じだった。私の人生も三辺さんから大きな影響を受けたと言える。三辺さんから教えられたことは今でもよく思い出す。そして私を育ててくれたことに感謝の念を禁じ得ない。

議論倒れの中国人と行動重視の日本人

 当時、三辺さんが私に語ったテーマで最も多かったのが、中国人と日本人の考え方や習慣の違いから生じる問題についてだった。

 彼は、中国人はなにか起きた時にいつも議論から入ると指摘していた。これはする必要があるのか? どうやってするのか? 成功できるのか? 十分に勝算があるのか? などとひとしきり並べ立てると、それから、人がいない、金がない、時間がない、条件がそろってないなどと、できない理由を探し始める。そして時間だけが過ぎ去って、最終的には事態は何も進展していないといった具合だと。

 日本人はそうではないと三辺さんから聞かされた。日本人はいったんやるべきだと思ったら、勝算が6割か7割あればすぐに着手する。そして最初は余り状況が芳しくなくても、何か方法を考えて少しずつ改善し、少しずつ進歩してゆき、最後には上々の結果が得られるのだと。こうした過程では、日本人はまず着手して、それから改善を重ね、淡々と焦らず努力を続けるのだ。少しずつ進歩させることで達成感や喜びを感じるようになり、彼らにとってそのことが改善を継続させるための動力源となるというのだ。

 だが我々中国人は違う。言ってもやらないか、やっている最中に困難にぶつかるとそれを口実に止めてしまう。そして最後に「議論がたくさんしたが、実際の行動がほとんどなし、大抵結果が出ないで有耶無耶になってしまいます」という。そして、人が驚くような成果を上げること、大きなことを成すことばかりをやりたがり、小さなことは軽んじてやろうとしない。その結果、なにも成し遂げることができない。

思わぬ結果をもたらした倉庫の片づけ

 三辺さんが中国に来て間もなく、会社に新しい倉庫が必要だという話が持ち上がった。三辺さんが理由を尋ねると、倉庫が狭すぎて、新しい倉庫を建てなければ製品を雨ざらしにするしかないからという答えが返ってきた。それを聞いた三辺さんは倉庫を確認するとこう言った。「倉庫の中にはこれまでのプロジェクトで残った建材やケーブル、ゴミが山積みになっています。それらを整理すれば空きスペースができますから、新たな倉庫など必要ありません」そして会社の上層部に対し、関連部門から人を出させて倉庫を片付けるよう求めた。私は工場の副責任者にありのまま報告したが、副責任者はできない理由を山のように並べたて、「あなたもご存知の通り工場は今、生産で手一杯で人手も足りません。倉庫を片付ける余裕などありませんよ」と一蹴した。

 私は三辺さんのところに戻ると正直に報告した。話を聞き終えた三辺さんは何も言わなかった。次の日になると、三辺さんは私に、社長以下全ての管理職員に昼食をとったら倉庫に集まるように伝えてほしいと言った。何か重要なことでもあるのですかと尋ねたが、三辺さんは何も答えなかった。昼食を食べ終えて倉庫に集合した管理職たちは、指示に従い整列した。そして三辺さんはいったい何を考えているのだろうといぶかしく思いながら、彼が口を開くのを待っていた。

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