逆境を乗り越えて

ハンディキャップを背負ったシャチ ハンティング・リーダーに変身

弱肉強食が徹底し、捕食できなくなったら取り残される動物の世界。しかし、中には仲間に助けられながら、大きく成長していく動物もいるようです。ハンディキャップを背負ったシャチが、群れのリーダーになるまで成長したケースをご紹介します。

2013年、ツアーコンダクター兼カメラマンのレイナー(Rainer)さんとシルク・スキムフさん(Silke Schimpf)夫妻は、シャチを観察するため、南アフリカのケープタウン近くの海にやってきました。その時、群れの中で目立っていたのが、片方の胸びれがなく、背びれも欠けていた一匹のシャチ。まだ小さかったこのシャチは群れから離れ、泳ぎもぎこちなく、非常にゆっくりでした。夫妻はこのシャチを「シラ(Sira)」と名付けましたが、ハンディキャップがあるため自分で餌を捕獲することはできないだろうと思っていました。

それから4年後、夫妻はマリンツアーの参加者たちと共に同じ場所を訪れました。するとその時、群れの中に身体に特徴のあるシャチを発見。それは、4.5メートル~5メートルになるまで成長し、群れのリーダー的存在になっているシラでした。ハンディキャップを背負っていましたが、仲間のメンバーがどうやら彼に餌を分け与えていたのでしょう。大きく成長したシラとの再会に、夫妻は大変喜びました。

更に、スキムフ夫妻は、シラのグループに背びれが曲がっているメスのシャチがいることを発見しました。シラは仲間たちと餌を分け合い、ハンディキャップを持つ他のシャチの世話もしているようです。

周りの助けを借りながら、強くなるだけでなく他のシャチを思いやるほど成長したシラ。逆境は人を強くするといいますが、動物にも同じことが言えるのかもしれません。

(翻訳編集・豊山)