1900年前の中国典故

罪をとがめるより更生を励ます

2017年07月28日 07時00分

 悪行を改めるよう、寛大な心で更生を励ますことは、良知ある人を育てることに繋がる、というお話。1900年も前の物語とされる、「元」泥棒と賢人の典故を紹介します。出典は中国北宋時代に、学者・宋李昉らにより編纂された『太平御覧』の第900巻、兽部十二 牛下から。


 2世紀ごろのお話。主君のように敬われていた賢人・王烈は、道理に精通し度量が大きく、良し悪しを見通す人として知られていまいた。王烈の教えにより、人々は善行に努め、悪行を避けていました。

 ある日、牛を盗んだ泥棒が、牛の飼い主に捕まりました。飼い主は泥棒が盗みを白状したので、許すと言いました。

 泥棒は「今後、心を入れ換えます。飼い主様は寛大です、どうか王烈に告げないで」と謝罪しました。当時も現在と同じく、罪を犯せば刑罰を受けなければなりません。

 しかし、この話を耳にした王烈は、刑罰を下すどころか、一反の布を贈り、更生を励ましました。この泥棒の「罪の告白」という正直さと、悪事を恥じていることを評価したのです。

 1年ほど過ぎて―。重い荷物を担ぐ老人を手助けするために、ある男が老人の荷物を数十里(1里は約4キロメートル)も担いで運びました。老人はお礼のために家に招きましたが、男は名前も告げずに去りました。

 別の日、この老人は出先で、価値の高い剣をなくしてしまいました。同じ男が、落とした場所で剣を見守り、持ち主の帰りを待っていました。

 名も言わず去ろうとする男を引き留め、老人は「どうか名前を教えてください。あなたの善行を王烈にぜひ知らせたい」と言うと、男は老人に名を言いました。王烈が家来に男の名を調べさせたところ、以前、牛を盗んだ泥棒と同じ人物だったことがわかりました。

 王烈は感心して、男を高く評価しました。こうして、男の住む村の評判さえ高められたといいます。

(編集・甲斐天海)

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