特別リポート:サウジ「王室分裂」の裏側、汚職口実に政敵排除

2017年11月18日 10時47分

[ベイルート/リヤド 10日 ロイター] - 何か異変が起きているという最初の兆候は、1通の書簡にあった。サウジアラビア首都リヤドにある高級ホテル、リッツカールトンの宿泊客らは4日、次のような通告を受けた。

「地元当局よりセキュリティ強化を要する予期せぬ予約が入ったため、通常営業に戻るまで、お部屋をご用意できなくなりました」とそこには書かれていた。

このときすでに粛清は始まっていた。数時間内には、治安部隊が主に首都リヤドと沿岸都市ジェッダで、サウジ政財界のエリート数十名を拘束。なかには、11人の王族のほか、閣僚や富豪が含まれていた。

一部は、拘束現場での会合に招かれていた。自宅で逮捕された人々は、飛行機でリヤドまで、それから自動車でリッツカールトンまで護送された。こうして同ホテルは一時的な監獄となった。

拘束された人々は、自宅に1回だけ、短時間の電話を掛けることが許された、と逮捕状況に詳しい関係者がロイターに語った。

「外部からの着信に応じることは許されず、厳重な警備下に置かれた。誰も出入りすることは許されなかった」とこの関係者は語る。「よく準備されていたことは明らかだ」

今回の汚職摘発を命じたのは、サルマン国王の息子ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(32)だ。国王の公式の継承者となった同皇太子は、現在、実質的に国家を運営する立場にあり、サウジを現代国家へと改革することを表明している。

そうした改革遂行に向け、また自身の権力を強化していくため、ムハンマド皇太子は、王族の一部を含む国内エリート層を、収賄や事業コスト水増しなどの容疑で訴追することを決意した。拘束された人々のコメントを得ることはできなかった。

問題は、世界最大の産油国であるサウジの政治安定性だ。ムハンマド皇太子が抵抗を受けずに統治を行うことができるかどうかは、今回の取り締まりの成否次第だ。

国が変わらなければ、サウジ経済は危機に陥り、社会不安が煽られると同皇太子は懸念している。そのような事態は、サウジ王族を脅かし、中東地域のライバルであるイランに対する立場が弱体化する可能性がある。

<政敵排除が目的か>

ムハンマド皇太子が今回の行動を決意したのは、自身が王位継承することに対して、思っていたよりも親族の反対が多いことに気付いたことがきっかけだった、と今回の事件に詳しい関係者は語る。

「皇太子への支持を躊躇する者は警戒すべきだというサインだ」とこの関係者は語る。「汚職撲滅キャンペーンという考え自体、王族を標的にしている。それ以外は見せかけだ」

サルマン国王は今回の粛清について、「公共の利益よりも私的な利益を優先して違法に金を稼ごうとする、一部の心の弱い者による搾取」に対応するものだと述べている。内部関係者によれば、容疑は情報機関が収集した証拠に基づいているという。

政権支持者は、今回の汚職撲滅キャンペーンが実際には政敵の排除を目的としているのではないかという憶測を否定。本記事について、宮廷からのコメントは今のところ得られていない。

リッツカールトンで現在拘束されている人物の1人が、ムハンマド皇太子の従兄であり、強力な権限を持つ国家警備隊の隊長を務めるムトイブ王子だ。

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