「滬港通」導入3周年 香港株の中国A株化が鮮明に、「相場の急騰落に要注意」=専門家

2017/11/24
更新: 2017/11/24

香港株式市場と中国上海の人民元株式市場(A株)が互いの上場株を取引できる制度、「滬港通」は11月17日に導入してから3周年を迎えた。

香港証券取引所の最新統計によると、過去3年間で中国本土投資家がこの制度を利用して、約8088億香港ドル(約11兆3232億円)規模の香港上場株式を保有することになった。本土からの投資資金流入で、香港株式市場での1日の売買代金は3年前と比べて10倍に膨らんだ。専門家は、香港株式市場が今後「中国A株化」する傾向が強いと指摘した。同市場での投機リスクが増大し、株価相場が急騰急落する可能性が高いため、リスク管理が必要だと投資家に注意を促した。

 本土資金で売買代金が3年間で10倍に

2014年9月に、香港では学生や市民らが民主化を求める大規模なデモ、「雨傘運動」を展開した。中国当局は、香港市民の人心を収めようとする狙いで、それまで延期されていた「滬港通」計画を10月末に突如許可し、11月17日に導入を始めた。

中国当局は現在、2015年と16年に株価大暴落が発生した国内A株式市場に対して、取り締まりを強化している。この結果、本土から膨大な資金が次々と香港市場に流れ込んだ。背景には、本土投資家が香港市場の銘柄を過小評価している、銘柄の選択肢が多いなどと認識していることが挙げられている。

香港市場主要株価指数のハンセン指数は、今年始めから今月16日までにすでに31%上昇した。主因は、本土投資家からの積極的な買い注文だった。

香港証券取引所によると、10月31日まで「滬港通」の3年間の累計売買代金は3兆3270億香港ドル(約47兆円)。本土からの流入資金総額は累計6375億香港ドル(約8兆9250億円)。本土投資家が保有する香港株の規模は8088億香港ドルで、香港市場の時価総額全体の2.5%を占める。

また、本土投資家の1日の売買代金は14年の4億6000万香港ドル(約64億4000万円)から、今年10月の44億6500万香港ドル(約625億1000万円)に拡大した。香港市場の1日の総売買代金の占める割合は、15年の2.4%から現在の7.2%に上った。

香港証券取引所の李小加・最高経営責任者(CEO)は16日、新規株式上場の記念イベントに出席した際、滬港通によって今後5~10年間、より多くの資金が中国本土から香港市場に流れ込むと推測した。潤沢な資金流入に伴い、今後外国企業は、香港市場の上場を加速化させるとした。

しかし、李CEOは現在香港市場が過熱化しているため、「リスクに警戒すべきだ」と、中小個人投資家に呼び掛けた。

 市場関係者「香港市場の投機ブームに拍車を」

香港証券会社、宏高証券有限公司の投資アナリストの梁傑文氏は大紀元に対して、「本土資金の流入で、香港市場に投機ブームをもたらし、しかもそれに拍車をかけた」と指摘した。

香港株式市場で取引を行う主力は、これまで香港の機関投資家だった。「香港の機関投資家は比較的理性的で、企業の業績や収益などを綜合的に分析して、資産運用をしてきた。このため、今まで株価の値動きは激しくなかった。しかし、本土の投資家が企業のファンダメンタル分析をしないで、どんな銘柄でもとことん買い注文を出す特徴がある」

梁氏は、香港市場の株価相場は急騰落する可能性が高いとみている。

また、梁氏は本土資金の流入で、「香港市場に上場する本土の不動産企業の収益が低迷しているのに、株価は高値を維持しているという奇妙な現象が起きている」との見解を示した。

中国当局は国内で、不動産価格抑制措置を実施しているため、不動産大手の恒大集団などの収益が縮小した。しかし、昨年1年間で恒大集団の株価は前年と比べて5倍も上昇したことで、同社の許家印会長は9月米フォーブス誌が発表した中国富豪番付の1位となった。

「今注意しなければならないのは、もし香港の個人投資家、またはヘッジファンドが企業業績・収益の分析に頼って投資を行えば、必ず大きな損失を被ることだ。資金的に優勢な本土投資家に勝ち目が全くないだ」

さらに、梁氏は本土投資家の取引方法が「非常に野蛮で」「冷酷だ」と批判した。本土投資家に狙われた銘柄の相場は短時間で、必ず急騰し急落するという。

「本土投資家が投資利益率を吊り上げるために、相場の低い銘柄を狙って大量に買うが、儲けが出たらすぐに大量に売却する。たとえば、昨年年末に上場したIT企業の美図秀秀。当初、香港投資家と海外投資家はこの企業の業績に悲観的で、投資意欲がなかったため、相場は低い水準を維持していた。しかし、今年3月同銘柄が深セン市場との乗り入れ制度である『深港通』に採用されると発表を受けて、美図秀秀は9日間連続で急騰した。3月20日、同銘柄が過去最高値を付けた直後、利益確定で本土投資家から売り注文が殺到して急落が始まった。この日の下落幅は11.2%。多くの個人投資家が巨額な損失を被り、市場は阿鼻叫喚の様相となった。美図秀秀は時価総額で、この日、一時300億香港ドルが消えた」

 「政治的リスクも要注意」

 

梁傑文氏は、香港市場に上場する中国企業の急増で、個人投資家は中国企業の潜在的な政治的リスクにも警戒すべきだと提案した。

今年始め、中国当局は香港在住の中国人富豪の肖建華氏を本土へ連行した。肖氏は、香港市場で銀行や保険などの分野の銘柄を積極的に取引してきた。同氏は中国共産党指導部の高官や親族と深いつながりがあって、高官らに代わってマネーロンダリングを行っていたとみられる。

「香港金融界には、このような本土の大物がどれほどいるかはわからないが、中国企業のトップについては事前に把握した方がよい。突然中国当局の取り締まり対象になることもあるため、個人投資家としては損失を最小限するため、注意が必要だろう」。

香港の市場関係者は、「中国A株化」後の、香港市場の株価大暴落の可能性は、現時点では「ない」とした。しかし、香港の金融当局に対して、市場監督体制の強化を呼び掛けている。

(記者・梁珍、翻訳編集・張哲)

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