豪州、外国からの政治献金禁止へ 中国の影響力増大を懸念

Tom Westbrook

[シドニー 5日 ロイター] – ターンブル首相は5日、オーストラリアが外国勢力による政治介入を防ぐ政策の一環として、外国からの政治献金を禁止すると発表。背景には中国による影響力拡大に対する懸念があるとみられる。

外国勢力が、オーストラリアや世界の「政治プロセスに影響を与えようと、これまで前例のない、ますます巧妙な工作を行っている」と、ターンブル首相は首都キャンベラで記者団に語った。また、「中国の影響について懸念すべき報告がある」と指摘した。

世界では約3分の1の国が外国からの政治献金を認めており、オーストラリアや隣国ニュージーランドもそれに含まれる。米国や英国、欧州の数カ国では、こうした献金は禁止されている。

ターンブル首相によると、今回導入する新たな法律は、米国の外国代理人登録法を一部参考にしたもので、外国の介入を犯罪とみなし、外国政府のために働くロビイストに対して登録を義務付ける。

オーストラリアでは、中国政府が影響を拡大しつつあるのではないかとの懸念が高まっており、自国の政治家と中国政府の国益との関係が注目を集めている。

地元メディアのフェアファックス・メディアやオーストラリア放送協会(ABC)は6月、中国の利益を促進するため、中国が組織的に豪州政治への「浸透」工作を行っていたと報じた。中国側は、こうした報道を否定している。

中国外務省の耿爽報道官は、オーストラリアの内政に介入したり、政治資金を使って影響を及ぼそうという意図は中国にないと述べた。「同時に、オーストラリアには偏見を取り払い、中国と中国との関係について、客観的かつ前向きな態度で評価することを求めたい」と、耿報道官は付け加えた。

しかし、野党労働党のサム・ダスチャリ上院議員は先週、党の方針に反して、中国の南シナ海での領有権主張を支持するような発言をした録音が表面化したことを受け、党の幹部職を辞職した。

メディアにリークされたこの録音は、同議員が、不動産デベロッパーで大口の中国人献金者でもある黄向墨氏の隣にいるところを捉えたものだ。

「私も、私の同僚と同様に、これらの報道を非常に深刻に受け止めている」と、ターンブル首相は述べた。新たな法律については「特定の国を念頭に置いたものではない」と語った。

「外国からの介入は世界的な問題だ。例えば、ロシアが米国選挙に積極的に介入しようとしたの信頼できる報道について、われわれはみな知っている。脅威は現実のものだ」と首相は説明した。

新たな法案が議会で承認されれば、政党や、過去4年間で選挙などに10万豪ドル(約850万円)以上を投じた政治グループに対する外国からの政治献金が禁止される。環境団体などの運動団体も対象になるとみられている。

新法案では、国家反逆や諜報の定義も拡大され、機密情報を伝達するだけでなく、そうした情報を所持したり受け取ることも対象となる。

北部ダーウィン港を中国企業に99年間貸与する2015年の契約が批判を浴びて以降、オーストラリア政府は最大の輸出相手国、中国との関係の線引きを明確にしようと苦慮しており、中国企業による国内最大の牧場や最大の電力網会社の買収を差し止めている。

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