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一帯一路に蚕食された中南米 中国警戒論が台頭

2017年12月22日 08時00分
中国主導の経済サミット「一帯一路」が北京で5月15日、16日に開かれた。会場外(Getty Images)

  中国当局が主導する「一帯一路」巨大経済圏構想に、本来「一帯一路」に含まない中南米諸国を取り込もうとしている。当局は、「一帯一路」経済協力枠組みへの中南米国家の参加は「21世紀海上シルクロード上の自然延長だ」との見解を示した。中国の拡張主義に米国や中南米の専門家は警鐘を鳴らしている。

 パナマなど中南米諸国が相次いで中国と国交樹立

 今年、中南米と中国の関係に関して最も注目されたのは、パナマが台湾と断交、そして中国大陸と国交樹立したことだ。今年6月12日、中国との国交樹立を宣言した同国フアン・カルロス・バレラ大統領は、台湾との断交は「正しい決断」で「中国当局に対して何も求めていない」と強調した。

 しかし、香港メディアなどによると、実際のところ中国当局の2016年パナマへの直接投資(FDI)は2億3000万ドルを上回った。昨年末まで、中国企業が受注したパナマの建設プロジェクトの総額は13億3000万ドルだった。毎年、1000隻の中国の船舶がパナマ運河を利用していることもパナマに多くの利益をもたらした。

 バレラ大統領は11月中国を訪問した際、パナマのように中国と国交を樹立すべきだと、他の国に呼び掛けた。

 米陸軍戦略大学・中南米専門家のエヴァン・エリス(Evan Ellis)教授はVOAに対して、パナマが中国と国交を樹立した後、エルサルバドル、ホンジュラス、グアテマラなど中米諸国は中国との新たな外交関係を築く可能性が高い、と指摘した。これらの中米国家は、米国政府に強い不満を持つことが共通している。また、カリブ海のドミニカ共和国も同様の意向を持っているという。

 米紙・ワシントンタイムズが今年6月20日掲載した『中国はラテンアメリカを蚕食している』と題する評論記事では、中国当局は、地政学的に米国を孤立させるために、中南米における中国の経済・政治的な影響力を強めようとしている、と分析。

 同記事は、中国企業によるパナマ運河への長期間管理、パナマの港の買収、中南米の10数カ所のランドブリッジへの投資を通じて、中南米地域における中国当局の影響力は一段と拡大すると危機感を示した。同紙は、将来的に米海軍の艦隊がパナマ運河の通過を拒否される可能性がある、と述べた。

合わせて読む:「アメリカの裏庭」に中国マネー「軍事衝突で対米戦略に利用される」と警鐘

 「一帯一路」、中南米への「自然延長」?

 

 米シンクタンク「インターアメリカン・ダイアログ」の中国問題専門家のマーガレット・マイヤーズ(Margaret Myers)氏はVOAに対して、中国当局の最大の野心は世界経済・政治を支配することだと指摘した。そのために、当局は一帯一路を通じて、最大限にアジア・ヨーロッパ・アフリカの一体化を実現させると同時に、「ラテンアメリカをも統合しようとしている」と分析した。

 中国当局は5月に開催された「一帯一路」国際フォーラムにおいて、今後中南米諸国との経済協力関係を強化し、「中国-ラテンアメリカ運命共同体」を確立していく姿勢を示した。今年この動きが加速しているようだ。

 南米・チリの大統領が5月に訪中した際、習近平国家主席はチリとの全面的戦略パートナーシップを深めていくとの方針を示した。チリは今後、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への加入や、アジア太平洋地域自由貿易圏への参入などを計画している。

 同月、アルゼンチン大統領も訪中した。アルゼンチンは正式に、AIIBの加入を申請した。

 8月、中国北京で「中国-ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体」フォーラムが開催された。11月「中国-ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体国際博覧会」が広東省珠海市で開かれた。このイベントに62カ国・地域の524社の企業が参加した。

 ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体には北米の米国とカナダを除き、すべてのアメリカ大陸の国が加盟しており、6億2000万人の人口をカバーする。

 さらに、10月に北京で「中国プラスABC(アルゼンチン・ブラジル・チリ)地域協力フォーラム」も行われた。マイヤーズ氏によると、中国はアルゼンチン、ブラジルのほかに、チリ、ペルー、メキシコ、コロンビアなどの中南米諸国によって設立された「太平洋同盟」にも接近している。

「今後中国当局は、他の地域の経済協力統合組織にも近づこうとするだろう」とマイヤーズ氏は述べた。

 一方、20日付のVOAによると、今年出版された中国とラテンアメリカ諸国経済調査報告では、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体の「中国ブーム」が去ろうとしている。昨年、同地域の対中貿易は拡大していないという。また、中国向けに輸出されている同地域の原油や金属鉱石などの鉱物資源は全体の5分の1にとどまっている。中国当局がこれらの資源をより多く取得するため、現在中南米の採掘産業への投資と融資に力を入れている。

合わせて読む:中国の「一帯一路」、隣国がプロジェクト中止相次ぐ 高すぎる対価で警戒

 中国当局に警戒する中南米の国

 

 一部の中南米の国は中国への警戒を高めている。

 VOAによると、ブラジルとペルーの両政府は今年9月、両国間の「南米大陸横断鉄道」の建設計画に関して、今後ヨーロッパの金融機関から融資を受けることで意見交換した。これまでに、中国当局は同鉄道建設に600億ドルの融資を提供すると意思を示した。

 一部の専門家は、「米国に代わって、中国当局の中南米での影響力が強まりつつあるが、実際は多くの中南米の政府は、経済・政治的に中国の付属国になりたくないと考えている」と評した。

 また、中国当局が中南米各国に約束した投資プロジェクトはすべて実行されたわけではない。最もいい例は、投資額500億ドルのニカラグア運河建設だ。「第2のパナマ運河」と呼ばれるこの運河は、2020年に完成する予定だが、いまだに本格的に着工していないという。建設工事を受注した中国企業の資金不足が主因とみられる。

 VOAによるとブラジルの学者は、中国当局がラテンアメリカにまで拡張する最大の狙いは、金属、鉱石、原油や大豆などの資源だと警鐘を鳴らしている。また学者は中国と米国を比較すると、「中国当局は人権・民主主義と道徳観などの面において差が出ている」と指摘した。

 一方、中国からのばく大な融資に苦しむ国も多い。石油輸出国機構(OPEC)加盟国のエクアドルはその一例だ。エクアドルは、前コレア政権で2009年、中国国営石油大手の中国石油天然気集団からの10億ドル規模の融資を受ける代わりに、生産した原油で返済するとの契約を結んだ。その後、中国企業からの融資がどんどん膨らんだ。

 ロイター通信などによると、エクアドルで生産された原油の9割は中国向けに輸出されている。しかし、過去1年間で原油価格が急落したことで、昨年1バレルの原油で返済でできた債務は、今年になると2バレルで返さなければならないという。

 独メディア「ドイチェベレ」によると、2013年8月に発表された中国・エクアドル融資報告書では、中国がエクアドルに貸した金額は90億ドルで、同国の国内総生産(GDP)の11%を占めた、と示された。

 中国国営石油企業は、ベネズエラに少なくとも430億ドルを融資し、エクアドルと同様に「原油・融資の交換」契約を結んだ。また、ブラジルでは、原油関連の融資が100億ドルだという。

 中国当局の資金はどこから

 中国国内では企業債務の急増など、多くの経済問題が山積しているにもかかわらず、中国当局は「一帯一路」構想で、中南米だけではなくアフリカ諸国や南アジアなど多くの国に資金を提供している。

 英投資銀行「グリソンス・ピーク(Grisons Peak)」のヘンリ―・ティルマン(Henry Tillman)氏は、中国当局の資金調達方法を考察した。

 英紙・フィナンシャルタイムズ(10月13日付)によると、ティルマン氏の調査結果では、中国主導のAIIBが2014年に設立された後、中国当局名義での「一帯一路」沿線国の融資が減り、84カ国・地域が加盟するAIIB(12月19日現在)の名義による融資が増えたことが明らかになった。

 ティルマン氏は、「現在の融資は、アジア・アフリカ・中央アジア・ラテンアメリカ諸国による混合融資となった。中には、世界銀行や他の金融機関による融資もある」と指摘し、「中国当局にとって、最大のリスク分散となった」との見解を示した。

 しかし、ティルマン氏はAIIBの融資がどのように返済されるかについては言及しなかった。

 中国当局がAIIB加盟国から調達した資金で、世界的な支配を実現しようとたくらんでいるかもしれない。


(翻訳編集・張哲)

 

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