中国共産党の「浸透工作」 浸透するチャイナマネー

投資そのもの「武器化」する 中国の外国技術力入手戦略=米国委員会

2018/01/17
更新: 2018/01/17

 米議会では、外国投資の審査を厳しくするよう求める声が上がっている。外国投資と国内安全保障を審査する対米外国投資委員会 (CFIUS)は9日、専門家を招き聴聞会を開いた。委員会は、海外資本による米企業の買収阻止や合弁企業の監視など権限強化を目指している。

「米国への経済効果をもたらす各国からの投資は歓迎するが、それは米国の国家安全保障を犯さないことが必須だ」。公聴会を主導した金融サービス委員会のアンディ・バー下院議員は述べた。

出席したロバート・ピッテンジャー下院議員は、外資規制強化案について、セッションズ司法長官、マティス国防長官、ムニューシン財務長官の支持を得ていると聴聞会で語った。

招かれた専門家たちは、中国のほか外国企業の国内の活動を管理するために、米国にとって敵対的な国に技術が渡ったり、安全保障に係る情報にアクセスされたりする危険性や、資金ルートの追跡、投資元の特定について議論した。

米国商務省テオドール・カッシンガー前事務局長は「CFIUSの改革は、戦略的ライバルであり経済大国である中国を念頭とした見直しであることは明らかだ」と述べた。

聴聞会のなかで、専門家は、中国当局による外国技術の入手方法は6つあると指摘した。▼外国企業を中国に招き、合弁会社を作らせる▼中国企業が海外で対象企業を買収する(M&Aや株式取得を含む)▼中国が対象技術製品を輸入する▼中国企業や研究機関で、技術力ある外国人を雇う▼中国人留学生が技術を学ぶ▼インターネットやその他の手段で盗み取る。

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安全保障の「壁」

財務省主導の省庁間委員会であるCFIUSは、米国の安全保障のうえで「壁」の役割を果たしている。先日、中国の電子商取引大手アリババグループ(阿里巴巴集団)の関連会社螞蟻金融が米送金サービスの買収について、CFIUSは承認せず、両社に買収案を断念させた。

FOXニュースは匿名の安全保障に詳しい情報筋の話として、CFIUSは、米国市民が特定されるデータ管理の安全性に懸念があるため、買収案を却下したと明かした。

CFIUSは契約内容の変更を命じたり、大統領に買収阻止を勧告できる権限を有する。2017年9月にも、CFIUSの勧告を受けたトランプ大統領は、中国系投資ファンドが米半導体メーカー・ラティスセミコンダクターを買収する計画を停止させた。

「米国の知的財産権を盗用したり、米国の安全保障政策上に違反するなど、国益に反する行為をした企業の投資は許されるべきではない」。聴聞会に出席したデニス・ブレア米軍太平洋司令部元長官で国家情報局(NIA)元局長は述べた。

「米国は知的財産の盗用により毎年6000億ドルの損失を被っている。これはアジアと米国の貿易赤字よりも大きく、対米輸出の中国製品が最大の原因だ」と指摘した。

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2000年と比較すると200倍になった中国の対米投資

 

対米中国投資を監視するロジウム・グループは、急速なチャイナマネーの浸透をデータで示している。2000年時点では6800万ドル(約73億円)だった対米投資が、2017年には1365億ドル(約13兆円)と200倍近くなった。投資件数は17件から1510件に爆増した。ロジウムによると、中国政府は近年、外国投資規制を厳しくしたため、伸び率は鈍化したものの、中国側からの積極的な取引姿勢は継続してみられるという。

CFIUS見直し案について知る中国研究者ロバート・ウィリアムズ氏によると、投資規制の議論は、特に中国からの技術部門に関する大規模な投資や買収の懸念から過熱していったという。

「立案者たちは、中国は戦略的目標を達成するために、対米投資事態を武器化(ウェポナイズド)していると危機感をあらわにしている」とウィリアムズ氏は見ている。

複数の米国政府高官は、中国が投資を拡大させる人工知能(AI)や機械学習などの分野を特に懸念している、とロイター通信が報じている。米国の最先端技術が中国側に渡れば、軍事転用されたり、米国市場の優位性を先に奪われる恐れがある。

ウィリアムズ氏によると、投資手続きは表向き民間企業によって行われるが、こうした企業は中国共産党政権と密接な関係にある。安全保障の観点から審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の役割を強化するのは、この点に着眼されているという。

すでに中国共産党政府は、外国技術の獲得への支援を隠していない。中国国務院は2015年に、「中国製造2025(Made in China 2025)」と名付けた、主要産業政策計画を発表した。米通商部によると、この取り組みには、海外の最新技術を獲得しようとする中国企業を支援する優遇策が記されている。

「法律は今日の状況に適するよう見直されるべき」

2017年11月、ちょうど、トランプ大統領が初訪中していた時期である。ブルームバーグは関係者の話として、米議会超党派議員がCFIUS見直し案を両院へ提出する予定だと報じた。法案は今年8月に可決を目指すという。

「CFIUSが運営する法律は10年改正されていない。今日の状況に適したものとなるよう考えるべき」とメンバーの一人であるアンディ・バー議員は事前の準備会議で発言している。

対米のアジア太平洋政治に詳しいメルシー・クオ氏は、外交専門誌ディプロマットでの寄稿文で、CFIUS見直し案は「超党派で進められていることは事実だが、その重要性を示している。きょうび民主党と共和党が何かに同意することは頻繁にあることではない」と指摘した。

クオ氏は、見直しの狙いは「兵器やテロ懸念の域を超えた国家安全保障問題」とした。外資の市場拡大は長い目で見た際、米国で技術的地位を奪われたり、米市民の個人情報が外資の金融機関や医療組織により不正入手されるというリスクを指摘した。

(翻訳編集・佐渡道世)