米テキサス州立大学オースティン校、中国マネーを拒否 「学問の自由を保障するため」

中国共産党政権が世界各国でお金をばら撒き、影響力を拡大させようという企みに、各国は警戒を強めている。米紙ワシントン・ポストのコラムニスト、ジョシュ・ロジン(Josh Rogin)氏は14日、米テキサス州立大学オースティン校が学問的価値観を守る観点から、中国政府とつながりのある財団からの寄付を拒否したと伝えた。

中国政府は近年、海外で積極的に勢力を伸ばし、世界各地に中国共産党の洗脳機関とされる「孔子学院」を設置するほか、寄付や資金援助を通じて学術機関に浸透している。

米国の公共政策を担う高度人材を育成する同大のリンドン・B・ジョンソン公共政策大学院が昨年8月、「中国公共政策センター(China Public Policy Center)」を開設した。事務局長のデビッド・ファイアスタイン(David Firestein)氏は自身が外交官を務めたときの提携先だった中米交流財団(CUSEF)を同プロジェクトの主要な後援者にすることを提案したが、校内で強い反発を招いた。

同大のグレゴリー・フェンヴェス(Gregory Fenves)校長は中米交流財団からの資金援助を受け入れることが学術的客観性を損なう可能性があるかどうかについて、情報機関などの専門家らの協力を得て、予備調査を行った。

影響力を浸透 マネーが「武器」

調査が行われている最中、ファイアスタイン事務局長が11月、自ら司会を務め、同財団主催の検討会を開いた。そのとき、中国外交部の前外交部長(前外務大臣に相当)が検討会に出席したことがメディアの注意を引きつけた。

2008年に香港で設立された中米交流財団の代表理事は、香港初代行政長官を務めた中国人民政治協商会議(政協)副主席の董建華氏である。政協が中央統一戦線工作部(統戦部)とともに、中国共産党の海外における勢力拡張の推進を担当する機関である。

同財団は「民間スポンサー企業・非政府組織・非営利団体」といった看板を掲げている。しかし、米国連邦議会の本会議速記録(Congressional Record)によると、昨年末迄の5年間にわたり、同財団は2240万香港ドル(約3億2000万円)を投じて毎年3〜4社の企業を雇い、議会で主に中米関係に関するロビー活動を行っている。

中米交流財団はかねてから、ジョンズホプキンス大学ポール・H・ニッツェ高等国際関係大学院(SAIS)や米国を代表するシンクタンクのブルッキングス研究所など名高い学術機関に資金を提供してきた。

学問の自由を保障 中国マネーにノー

テッド・クルーズ(Ted Cruz)米上院議員が1月2日、フェンヴェス校長に送った書簡のなかで、中米交流財団の資金援助を受け取ったら、中国共産党の宣伝を広めることになり、大学の名誉を汚す可能性があるとの懸念を示した。

フェンヴェス校長は12日の返信で、クルーズ議員の手紙を受け取る前に、大学側はすでに同財団の資金援助を拒否することに決めたと話した。「潜在的な利益相反が生じ、学問の自由や思想の交流に制限を加えるというリスクを心配しているからだ」という。

同大の決定は、米高等教育機関における中国マネーの今後の動向だけにとどまらず、「シャープパワー(Sharp Power)」と呼ばれる自由社会における中国共産党の干渉や浸透工作に対抗するための努力にも大きな影響を及ぼしていると見なされている。

9日付けのワシントン・ポスト紙は米政府情報筋の話として、トランプ政権が中国共産党によるオーストラリアへの「内政干渉」を受け、中共政権の米国での浸透工作に関し、米国家安全保障会議(NSC)を通じて調べていると伝えた。これらの工作は「伝統的なスパイ活動以外にある、灰色の領域で隠れている影響力」とされている。

 

(翻訳編集・王君宜)

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