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中国企業によるM&A、EUが規制強化の動き 問われる日本の対応

2018年02月09日 12時37分
ドイツ産業用ロボットメーカー・クーカが2016年中国企業の美的集団に買収された。写真は、自動車メーカー・ダイムラー社の生産ラインで作業するクーカのロボット。(Thomas Niedermueller/Getty Images)

 中国企業による企業買収が急増している欧州連合(EU)では、中国資本を規制する法整備が加速化している。

 独紙・ヴェルト・アム・ゾンターク(1月28日付)によると、ドイツ経済省のマティアス・マハニック次官はこのほど、同紙の取材に対して、技術やノウハウの流出を防ぐために、中国企業によるドイツや欧州企業の買収を規制し投資を監視するのに「より厳しい法案が不可欠だ」と述べた。

  欧州企業の高い技術力を狙って、中国資本による買収案が近年増加している。ドイツのベルリンにあるメルカトル中国研究所(MERICS)2017年9月の発表によると、16年の中国企業によるEU企業M&Aの件数は309件で、投資額は858億ドルとこれまでの4年間の総額を超えている。

 マハニック次官によると、ドイツ政府はすでにフランス、イタリアとともに、立法に向けて草案を起草し、EU議会に提出した。次官は「法案を年末までに可決すべきだ」と述べた。

 マハニック次官は、投資元となる企業は所在国政府に背後でコントロールされている可能性があるとして、「中国を含む各国の買収案は詳細に調査する必要がある。場合によっては、買収案を中止させるべきだ」と、中国を念頭において強調した。

 ガブリエル外相はこのほど、ミュンヘンで行われた科学技術関連会議で、中国企業に押し切られている現状を「技術の冷戦」と称した。「西側諸国の技術大国の地位は初めて厳しい挑戦を強いられている」と政府が国内の重要先端技術を保護すべきだと発言した。ガブリエル外相は2013年12月~17年1月まで経済・エネルギー相を務めていた。

 高まる警戒感

 中国の家電メーカー大手の美的集団(ミデアグループ)は16年8月、世界の産業用ロボットメーカー大手でドイツの代表的な企業である「クーカ(Kuka)」を買収した。これをきっかけに、ドイツ政府と国民は中国資本への警戒感を高めた。

 当初、ドイツ政府は同買収案に介入しなかった。ガブリエル外相が当時経済相だったため、「クーカ」経営陣や株主などに対して、買収の再検討を要請した。しかし、同買収案が中国市場への進出の好機と捉える関係者は多く、結果的に「クーカ」は美的集団傘下に収められた。

 しかし、同年12月に中国企業の、ドイツの半導体メーカー「アイクストロン(Aixtron)」の買収計画が報じられると、ドイツ経済省は初めて難色を示した。アイクストロンが米国に子会社を保有していたため、当時のオバマ政権が最終的に大統領令を発して、同買収案を阻止した。米政府は、中国当局はアイクストロンから入手した技術を武器製造に応用し、結果的に米の国家安全保障を脅かす可能性が高いとの見解を示した。

 中国企業への疑問

 独メディアの報道によると、中国企業はおもに、宇宙航空、自動車、医療設備、ロボットなど、独主要の製造業に集中して買収を行っている。ドイツでは中国当局が、買収案を通じて戦略的に技術と知的財産の獲得を企んでいるとして、世論の批判が高まっている。世論が最も疑問視するのは、中国企業の不透明さだという。

 経済紙・ハンデルスブラットは、中国企業がメディアの取材を拒否する傾向があるため、中国企業の投資元が不透明で、中国当局との縁故関係がベールに包まれていると指摘した。

 英会計事務所大手のアーンスト・アンド・ヤングによると、17年に中国企業は54社の独企業を買収した。総投資の規模137億ドル(約1兆5070億円)。中には、中国複合企業・海航集団が33億ユーロ(約4392億円)でドイツ銀行を買収し、同行の筆頭株主になった事例も含まれている。

 独政府は昨年7月、外国企業による買収案は「公共の秩序および国家利益に害を与える場合、政府はその買収案を禁止する権限がある」と盛り込んで新貿易規定を発布した。

 EU域内で、独政府の主導の下では、今後中国企業による買収の急増を規制する動きが広がっていくとみられる。

 日本、規制がないのが現状

 

 中国企業が日本企業を対象に行う買収や資本参加は、米国やEUと比べて、まだ少ない。

 日本貿易振興機構(JETRO)が昨年12月末にまとめた調査では、15年末で、中国と中国企業の金融子会社が多い香港を合わせた直接投資残高は、米国が259億ドル(約2兆8490億円)、EUで730億ドル(約8兆300億円)、日本は約84億ドル(約9240億円)だと示された。

 また、財務省の対内・対外直接投資フローによる、中国の対日直接投資フロー(ネット)は2010年の過去最高額の276億円となった後、11年89億円、12年57億円と減少傾向にあった。13年には138億円まで回復した。14年は前年比で2倍増の351億円となった。15年には107億円と再び大幅に減少した。

 JETROやロイターによると、中国企業の対日企業買収(M&A)件数は、10年17件、11年7件、12年は9件、13年2件。

 日本国内外企業M&A情報サイト「マールオンライン」の統計では、中国企業による対日M&Aは、16年前年比で45.7%増で、過去最多の51件となった。この年、中国企業の対日M&Aでは、大型案件が目立った。中国の家電メーカー美的集団が、投機規模514億円で東京ライフスタイルを買収した。ネット大手テンセント(騰訊)は、ソフトバンク傘下のゲーム会社のスーパーセルの株式84.3%を86億ドルで取得した。

 日本は外資参入への規制が非常に少ない。米国の外国投資を審査・規制する「外国投資委員(CFIUS)」のような政府機関がなく、また外国投資規制強化の法整備も行われていない。

 現状では、航空法や放送法など個別の法令により、一部の業種において外国企業に対して投資規制はある。しかし「航空機・武器・原子力・宇宙開発などの産業分野への投資は、事前に国土交通省や財務省など関連政府機関に届出を提出する必要がある」程度に止まっている。

 欧米諸国で中国企業による資本参入規制を強化している今、日本が国内先端技術やノウハウ保護の観点から、規制強化に動き出すかに注目したい。

(翻訳編集・張哲)

 

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