中国共産党政権はグローバル規模でソフトパワーを浸透させ、諜報活動を展開している。2017年10月、第19回中国共産党全国代表大会が開催された北京の人民大会堂に集まるメディア(VCG/VCG via Getty Images)
中国のソフトパワー輸出

日本語ニュースサービスを開始する新華社、報道機関、それとも諜報機関?

中国国営メディア・新華社通信は2月1日から、日本向けの日本語でのニュース配信サービスを開始した。新華社によると、中国関連ニュースを中心に1日約80本の記事や、写真、映像も配信する。中国の経済などに関するニュースを中心とし、それ以外に国際関係や日本に関する報道についても配信する予定としている。

新華社は中国語以外では、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語、アラビア語、ポルトガル語でニュースを配信しており、日本語は7番目の言語となる。

現在、日本では新華社と並ぶ中国の大手国営通信社・中国新聞社(日本語名:中国通信社、CNS)はすでに日本語記事を配信している。

海外で宣伝攻勢を強める中国共産党

中国共産党はこれまで政治経済で外交を続けてきたが、国際的イメージが良いとは言えない。2007年以来、国際地位向上のため、文化の海外浸透を図るための「ソフトパワー」に注力してきた。とくに当時の胡錦濤主席の「伝播力が影響力を決定する」との発言を受け、共産党中央宣伝部で「国際社会における発話権を獲得できる」国際的伝播能力を有する国際的一流メディアを目指すメディア拡張計画が実行されるようになった。

中央テレビ、人民日報、新華社などの党直轄メディアに膨大な資金が投入され、発信力を強化してきた。2009年、新華社英語ニュースチャンネルを開設した。同年、人民日報は海外報道を中心に紙面を増やし、海外の記者室を支社に昇格した

近年、インターネットの普及で、人民網、新華網、中国網、環球在線、国際在線などのニュースサイトが立ち上げられ、発信言語も最初の4カ国語から40数カ国にまで拡大した。

SNSの台頭を受け、Facebook,Twitter,Youtubeなども影響力を高めるツールとして利用された。ニューヨーク・タイムズ紙昨年11月、匿名消息筋からの情報として、中国最大手国営メデイアの中央電視台(CCTV)や新華社通信などが、3カ月ごとに総額数十万ドルを投じて、フェイスブック上で中国共産党のイメージ・政策などを宣伝していると伝えた。

Youtubeで新華社は「New China TV」というアカウント名でチャンネルを開設した。新華社のプロバガンダ的な報道を懸念し、Youtubeは今後、「新華社が中国政府から資金提供を受けている」と画面で明記するとの方針を示した。「ユーザーが情報提供元を理解するための注意書きだ」としている。

Twitterでも新華社はフォロワーを購入するなど、影響力の拡大に力を入れている。米ニューヨーク州の検察当局がツイッターで偽アカウントを販売する企業デバミー(Devumi)社を調べており、中国国営の新華社通信は重要顧客であると1月28日、ニューヨーク・タイムズ(電子版)が報じた。

合わせて読みたい:米検察当局、「偽フォロワー工場」を摘発 新華社は重要顧客

新華社(China Xinhua News)の公式Twitterアカウントのフォロワー数は1100万人を超えている。

 一方、Facebook、Twitter、YouTubeはいずれも中国のネット封鎖でアクセス不能。

新華社は報道機関、それとも諜報機関? 

 

オタワ在住のジャーナリストで新華社カナダ支局に勤務していたマーク・ブーリエ氏は2012年、同国訪問中のダライ・ラマ14世の記者会見を報道しない前提で出席し、発言記録や、カナダ首相との私的会談の詳細を調べるよう同支局責任者から命じられたと主張した。さらに、法輪功学習者の集会に取材の名目で参加し、学習者の住所を聞き出すよう求められたと告発した。

ブーリエ氏は新華社が報道機関ではなく、諜報機関だとして、カナダ政府に対して新華社の追放を求めた。

また、今年2月、米議会の諮問機関が発行している中国に関する年次報告書で、新華社通信をはじめとする中国国営メディアが「情報機関の機能のいくつかを担っている」として、記者をはじめとする職員を、ロビー活動を行う代理人として登録を義務付けるように提言した。ここの代理人とはスパイの意味合いが含まれている。

すでに報道機関としての人民日報や英字紙のチャイナ・デイリーは登録されているが、職員個人の登録までは義務付けられていなかった。

新華社は現在、国外で150を超える支局に600人(推定)以上の記者を配置している。

 (翻訳編集・李沐恩)

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