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平昌オリンピック

【写真】羽生結弦「皆さんに幸せを」晴明神社の絵馬に願掛け

2018年02月18日 15時33分
右足首靭帯損傷というケガから4カ月、満身創痍で臨んだ羽生結弦。平昌オリンピック8日目フィギュアスケート17日目、フリープログラムを終え、前日のショートプログラムと合わせて合計300点以上を獲得し、金メダルが決まった。日の丸をまとい氷上を滑る羽生結弦選手(ROBERTO SCHMIDT/AFP/Getty Images)

平昌オリンピック、フィギュアスケート男子で見事66年ぶりの五輪連覇を記録した羽生結弦選手。フリープログラムで舞った楽曲は、平安時代の伝説的な陰陽師・安倍晴明をテーマにしたもの。2015年夏、羽生選手は京都一條戻橋にある晴明神社に参拝し、絵馬に思いをつづっていた。

「思い描いた演技ができますように、そして私の演技がきっかけで、皆さんに幸せがおとずれますように」―願いは現実に。日本および世界の五輪観戦者を感動させる、名演技を披露した。

映画『陰陽師』使用曲を用いた、羽生選手のフリープログラム「SEIMEI」は2015年に初披露された。フィギュア競技用ではめずらしく、竹笛や和太鼓の音が響く、神秘性と荘厳さに満ちた曲だ。振り付けはカナダの振付師シェイ=リーン・ボーン氏。羽生選手とともに、能や狂言など日本舞踊を学び、創作したという。

平安時代の和装「狩衣(かりぎぬ)」に似せた衣装は、デザイナー担当者にも「デザイナーは羽生さん」と言わしめるほど、本人のアイデアを基調にしたという。(2017年10月3日付け日刊スポーツ)。映画で主演を務めた能楽師・野村萬斎氏の要望も含まれている。模様入りの白地、「五芒星」を入れることなど。羽生選手は、デザイナーに直前まで細やかな修正を求めていたという。

夢枕獏氏の『陰陽師』シリーズが愛読書のひとつであるという羽生選手は、表現力にも磨きをかけるため、2015年、実際に安倍晴明が奉られる京都一條区の晴明神社に参拝している。晴明の死後、その屋敷跡に一条天皇が1007年(寛弘4年)に創建した。羽生選手は樹齢300年の御神木に触れ、境内を1時間近く見学したという。

陰陽師とは、中国古代から伝わる陰陽五行説を用いて呪術や天体を研究する者で、1600年前に日本に伝わった。当時から、津波や地震、洪水、疫病などあらゆる天災の脅威は人々の関心を集めていた。万物を陰と陽で成り立つとする「陰陽説」と、自然界は「木火土金水」の五つの要素で成るとする「五行思想」を合わせ、運命を占った陰陽師は、天皇や公卿、貴族たちに助言を施し影響力を持った。

安倍晴明が疫病神を退治する様子(Public Domain)

平安時代の伝説的な陰陽師、安倍晴明(920-1005)は少年時代から、人に見えない鬼が見える、鳥の話が分かる、など不思議な力を備えていたという話が伝わっている。『今昔物語集』にある記録では「道の向こうから恐ろしい鬼がくるのを見て、牛車のなかで眠っていた師匠である陰陽師・賀茂忠行に知らせ、術を使って難を逃れさせた」。村上天皇や花山天皇の命で、天狗封じ、疫病神退治を命じられており、信頼のおける陰陽師だったされる。

フリーの演技で演じた安倍晴明は、上界と下界の境で、式神(鬼神)を司る陰陽師の美妙さを見事に表現した。氷上の芸術的な舞台を「異次元の演技」とNHKは例えたが、天災による苦難も受けて磨かれた強さが心にある。羽生選手自身は、2011年3月11日の東日本大震災で被災しており、自宅が半壊し、避難所生活を送った。金メダル確定後のインタビューでは、震災を振り返って、改めて被災地に向け「今度はちょっと自信を持って、皆さんに笑顔になってもらえたらと思う」と答えた。

羽生選手も憧れる2006年トリノ冬季五輪金メダリスト、エフゲニー・プルシェンコも自身のSNSで「ユヅルを誇りに思う。なんて王者なんだ」と称賛を送った。

「コンサートも野球観戦も行かない」ひたすらフィギュアスケートに注力

 

羽生選手は2012年からコーチ、ブライアン・オーサー氏のいるカナダ・トロントに拠点を移したが、「コンサートや野球観戦にも行かない」「関係者との食事も断り続けた」(2018年2月18日スポーツ報知)と、修道する人のように自分自身にひたすら向き合い、フィギュアスケートに注力した。

昨年11月のNHK杯の練習で右足首靱帯(じんたい)を負傷。4カ月ぶりのステージは、自身も「夢の舞台」と例える五輪ショートプログラムだ。結果、ほぼ完ぺきな演技を堂々と披露し、演技後の会見で「とにかくスケートは楽しい」とはにかんだ。ケガ、五輪連覇の期待、アイドル扱い…周囲からの重圧をはねのけ、精神力の強さを見せつけた。

弛まず、全力疾走で自らの可能性を広げることに臨んできた羽生選手。男子シングル競技におけるショートプログラム(112.72点)、フリースケーティング(223.20点)、トータルスコア(330.43点)の現世界歴代最高得点記録保持者だ。

現行の審査システムが採用された2004年以降の国際大会で、ショートプログラムで100点、フリースケーティングで200点、トータルスコアで300点超えをそれぞれ、史上初めて達成した。

世界記録を2012年から2017年の間に12回更新しており、国際オリンピック委員会は「限界なき記録突破者」と称している。

(ROBERTO SCHMIDT/AFP/Getty Images)
(ROBERTO SCHMIDT/AFP/Getty Images)
銀メダルを決めた宇野昌磨選手(左)と、金メダルを獲得した羽生結弦選手(右)(ROBERTO SCHMIDT/AFP/Getty Images)

 

(文・甲斐天海)

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