中国吉利集団 独ダイムラー株式を約9.7%取得、筆頭株主に

ドイツ自動車大手のダイムラーが24日、株主に対して送った書簡において、中国の浙江吉利控股集団(以下、吉利集団)が同社の株式の9.69%を取得し、筆頭株主になったことを発表した。浙江吉利控股集団傘下の吉利(ジーリー)汽車は中国自動車生産大手だ。

ブルームバーグによると、吉利集団の創業者で中国人富豪の李書福氏は同買収案に約75億ユーロ(約9886億円)の資金を投じた。ダイムラー側は、吉利集団を含めるすべての外国企業による長期的な投資を歓迎するとのコメントを発表した。

ドイツ国内メディアは2月初め、李書福氏がダイムラーの株式の買収を検討していると相次いで報道した。ドイツの世論は、李書福氏が習近平国家主席と近い関係にあるため、ダイムラーの株式取得には「政治色」が強いとの見方をしている。

ドイツ通信社など複数のメディアは、ダイムラーは吉利集団が同筆頭株主になることで、中国市場でのシェア拡大を目指していると分析する。過去数年間、中国はダイムラーの重要市場として、同社の業績に大きく貢献した。しかし、国内同業のBMWとフォルクスワーゲンと比べてダイムラー傘下高級車メルセデス・ベンツなどの中国での販売は、少ないという。

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吉利集団は2010年、米自動車大手フォードから、スウェーデン自動車メーカー「ボルボ・カーズ」を買収した。

独メディアは、ボルボが買収されたのち、中国での販売が増加したことを受けて、ダイムラーも中国資本を受け入れれば、中国で販路拡大ができると認識するようになった、と分析。

2月上旬、ダイムラーは中国当局に対して2回も「謝罪」した。きっかけは、広告にチベット仏教最高指導ダライ・ラマ14世の言葉を引用したことだった。

交流サイト(SNS)「インスタグラム」では8日まで、メルセデス・ベンツSクラスのモデル写真に、「あらゆる角度から状況をみれば、もっとオーブンになれる」とのダライ・ラマの言葉を付けているダイムラーの広告が掲載されていた。

中国政府系メディア「環球時報」は、この広告からダイムラーがチベット亡命政府を支持する意図が見受けられ、中国主権を侵害したとして、批判した。ダイムラーはこれを受けて、インスタグラムでの投稿を削除した上、同社の中国販売子会社は「ひどく誤った情報があった」「当社の社員を含む中国国民の感情を傷つけた」とSNSの微博で謝罪した。

さらに、ダイムラーのディーター・ツェッチェ最高経営責任者(CEO)と同社中国事業責任者が連名で、史明徳(シー・ミンダー)駐ドイツ中国大使に謝罪文を送ったという。

ドイツ世論は、ダイムラーの2回の謝罪は「やり過ぎた」と非難した。フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙は、「中国市場に依存し謝罪を続けたダイムラーは、中国当局に利用されるだろう」と評した。

一方、吉利汽車は、親会社がダイムラー株式取得後に、グローバル進出戦略を一段と加速化していくとみられる。

(翻訳編集・張哲)

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中国自動車メーカー吉利汽車の創業者である李書福氏が、ドイツ同業ダイムラーの株式を買収する計画をしている。買収案が成功すれば、李氏はダイムラーの筆頭株主になるとの見通しだ。独紙・ビルトが4日報道した。独メディアは、李書福氏と習近平国家主席と近い関係にあるため、今回の買収案には中国当局の意向があるとの見方をする。
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