劉鶴中央財経指導グループ弁公室主任が2018年1月24日、スイスで行われたダボス会議で発言した(FABRICE COFFRINI/AFP/Getty Images)

習氏の経済ブレーン・劉鶴氏が急きょ訪米 貿易戦争回避を図るためか

中国習近平国家主席の経済ブレーン、中国共産党中央政治局委員で中央財経指導グループ弁公室主任の劉鶴氏(66)が2月27日から5日間の日程で米国を訪問している。米中関係は貿易摩擦で緊張するなか、米側と二国間の貿易交渉などで会談する予定だ。

米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)2月27日付によると、3月に開かれる全国人民代表大会(全人代、日本の国会相当)で、ハーバード大に留学経験のある劉氏が経済・金融・貿易担当の副首相に起用され、中国経済の新指揮者になる見通し。

2月24日付けのロイター通信は複数の情報筋の話として、経済通の劉氏が習近平国家主席の信頼を得て、中国人民銀行(中央銀行)の次期総裁の最有力候補と位置付けられたとし、人民銀総裁と副首相を兼務する可能性もあると伝えた。

劉氏が2月26日から28日まで開かれる共産党の重要会議「3中総会」を欠席してまで渡米したのは、緊急な協議があったとみられる。

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幼馴染から信頼できる同盟者へ

劉鶴氏は、習近平国家主席とは中学校のクラスメイトであった。同じく中国共産党の元高級幹部の子弟で、仲の良い幼馴染である。1979年に人民大で工業経済を専攻、修士号を取得後、米シートン・ホール大学やハーバード大学ケネディスクールなどの名門大に留学した。

劉氏は2012年末に発足した習近平指導部に加わり、国務院発展研究センター、国家計画委員会、中央財経領導小組などで要職を務め、習近平国家主席を経済政策面で支える中心人物とみられている。

劉氏訪米の「2つの重要任務」

劉氏が先月23日に、スイスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席し、世界各国首脳や政府と経済界の関係者に向けて中国の新たな市場開放策の展開を述べた。今回の訪米は二度目の外訪となる。

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劉氏の訪米目的について、香港中文大学経済学部の副教授、経済学者の庄太量氏は大紀元の取材で、劉氏が習近平国家主席の首席経済アドバイザーとして、主に経済問題や中米貿易摩擦の解決に注力する。いっぽう、習近平主席の特使として国際社会で強い関心が寄せられている中国共産党による国家主席の任期制限を撤廃する憲法改正についても、米国側に説明を行う可能性が高いと分析した。

高まる米中貿易の摩擦 緩和に努める中国

 

米トランプ大統領は中国の対米貿易の巨額黒字を「経済的侵略」と批判し、中国たたきを繰り返した。1月30日、米議会で行った一般教書演説では、中国をロシアとともに、「米国の国益や経済、価値観に挑戦しようとしている競合国」と位置づけた。

また、トランプ政権は今年初めから、鉄鋼やアルミニウムの輸入制限や中国による知財侵害に対する取り締まり措置など、数多くの貿易制裁措置の決議を採択する見通しだ。これは最大の貿易赤字対象国・中国をターゲットにしたもので、米中が貿易戦争で火花を散らしている。

米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は25日、トランプ大統領が通商政策などで名高い、対中強硬派のピーター・ナバロ(Peter Navarro)氏を大統領補佐官に昇格させる見通しだと報じた。トランプ政権が中国に対して貿易摩擦の圧力を強める動きが高まっている。

楊潔篪国務委員(外交担当、副首相級)も8日から9日まで米国を訪問した。中国当局の公式発表によると、双方は会談で北朝鮮の核問題や米の対中貿易赤字に焦点を当てた。2回目の米中閣僚級による「外交・安全保障対話」の開催や、事実上の決裂とみられる「一括経済対話」の再開についても協議が行われた。

一方、14日付けの英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が複数の関係者からの情報を引用して伝えたところによると、習近平主席と外交トップに就くとうわさされている王岐山・前党中央規律検査委員会書記が秘密裏に習氏の「古い友人」であるテリー・ブランスタッド(Terry Branstad)駐中国大使と会見した。習氏の指示で劉鶴氏も14日、ブランスタッド氏と会談したという。

中国のトップ指導層が米国側と頻繁に連絡を取り合ったのは、米中の対抗や貿易戦争を何としても回避したい思惑を浮き彫りにした。

劉氏の訪米で、中国商務省は27日、2021年に終了する米国産輸入の鶏肉に課していた反ダンピング(不当廉売)関税措置を、同日をもって撤廃すると発表した。米中関係の緊張緩和への積極的な姿勢を鮮明にしている。

(翻訳編集・王君宜)

 

 

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