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任期撤廃・後継者不在、中国政局に大きな変化あるか

2018年03月02日 13時20分
中国当局はこのほど、国家主席任期撤廃を盛り込んだ改憲案を提案した。(FRED DUFOUR/AFP/Getty Images)

   中国共産党中央委員会は2018年2月25日、国家主席の任期を「2期10年まで」とする憲法の規定を撤廃する改正案を新華社通信を通じて発表した。昨年10月の党大会で習近平国家主席が後継者を指名しなかったことから、同氏の3期目続投に関する憶測が飛び交っていた。今回の改憲で鄧小平氏に端を発した「次の次の後継者を指名する」制度は事実上、終焉を迎えた。

 「立儲しないことで、中国に大きな変化」

 大紀元時事評論員の夏小強氏は、「歴史上、後継者指名を最重要視してきた中国の政治環境に大きな変化が起きることを意味する」との見解を示した。

 中国古代から、「太子者、国之根本」(皇太子という者は国の根本である)と言われている。各王朝の歴史をみても、後継者の指名が従来、皇帝権力の継承と国家の安定に関わる最も重要な事だった。それだけに、中国の史書をめぐると、立太子をめぐる骨肉の争いやクーデターに関する記述も非常に多い。

 明の万暦帝(明神宗)はこの典型的な事例であろう。歴史学者の研究では、万暦帝が25年間も朝政の会に姿を現さず、国政に関心を示さなかった一因は、立太子をめぐり、臣下との間に強い対立があったからだと分析する。そして、万暦帝が個人の蓄財に走り財政が悪化し、民衆の反発を受けて明は滅亡した。『明史』は「明亡、実亡于神宗」(明朝は万暦帝に滅ぶ)と評した。

 清の康熙帝は2回も立太子と廃太子を繰り返した。また、次期皇帝になるため、皇子の間で暗闘が繰り広げられたとの有名な史話もある。この教訓から、次の雍正帝になると、立太子の決定を公にしない、いわゆる秘密立儲制(りっちょせい)に変更した。

 中国共産党政権発足からまだ100年は経っていない。各王朝と同様に、政権の伝承と安定が最重要課題となっている。このため、権力移行制度が不可欠だ。 

 中国共産党の1代目指導者、毛沢東は生前、劉少奇から林彪、王洪文へと後継者を変えていた。しかし、毛が亡くなる直前に、後継者として決定したのは華国鋒だった。華国鋒が退任後、鄧小平政権が発足したが、後継者指名に変化が現れた。

 1989年、「64天安門事件」で、民主化運動に理解を示した趙紫陽総書記は失脚した。後任として権力の中枢に上り詰めたのは民主化運動弾圧を支持した江沢民。

 しかし、鄧小平は常に江沢民の統治能力を疑問視していた。このため、鄧は「ポスト江沢民」として、胡錦涛氏を次の次の後継者に選定した。

 胡錦涛氏が最高指導者になってから、江沢民派の後継者とされる陳良宇元上海市長、薄熙来氏らが権力闘争で相次ぎ失脚し、派閥色が薄く、各派に受け入れられる習近平氏に白羽の矢が立った。中国共産党内の権力移行も、明らかに血で血を洗う政治闘争であった。

 夏氏は、後継者不在の習近平政権にとって、今後2つの可能性が残っているとした。「一つは、習近平氏が中国共産党中央委員会総書記の肩書きのまま、共産党政権の終結を見届ける。もう一つは、すでに権力集中を実現した習氏が、国内外の難題を解決するために大規模な政治改革を主導すること。いずれにせよ、中国の政治と社会に大きな変化が訪れるだろう」

 任期撤廃案で改革が進むか 

 

 在米中国経済専門家の何清漣氏は2月26日、「国家主席の任期に関する改憲案は、党内一部の利益集団に打撃を与えるだろう」との分析記事を自身のブログに投稿した。

 何氏は、習近平氏一強に変わったとしても、中国共産党は一党独裁政権であることに変わりはないと指摘した。

 また、改憲によって最も打撃を受けるのは、独裁政権の中枢である最高指導部(中央政治局常務委員会)に入れる「有力候補者たち」だという。「最高指導者になる夢が閉ざされた」

 一方、豪紙・オーストラリアン(27日付)によると、オーストラリア在住の中国民主化活動家の謝宏(Stanley Xie)氏は、任期撤廃案で中国が「毛沢東時代」に逆戻りする可能性は低いとした。最大の理由は「インターネット技術の進歩により、共産党政権はすべての外部情報を封鎖することができないからだ」。

 謝氏は、国家主席の任期撤廃案は、習近平氏が今後政治・社会改革に取り組むことに必要だと分析。「習氏が完全に絶対的権力を掌握できて、はじめて中国の複雑な利益集団に対して改革を行ない、誤った政治理念を正すことができる」と話した。

 中国国家行政院教授の汪玉凱氏は2016年3月と7月、中国は「国家主席制」から「大統領制」へ変更する可能性に言及した。汪氏は「大統領制に変える前に(中央政治局)常務委員制を終了する必要がある」と述べた。

(翻訳編集・張哲)

 

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