中国李克強首相が5日の全人代会議で、当局主導の製造業振興策「メイド・イン・チャイナ2025計画」をあらためて強調した。写真は、広東省東莞市にある携帯電話用半導体メーカーの労働者。(NICOLAS ASFOURI/AFP/Getty Images)

中国、「中国製造2025」を推進へ、欧米で懸念強まる

中国の李克強首相は5日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)会議で、高い競争力を持つ製造強国を目指す製造業振興策「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」を進めていく、と改めて表明した。欧米政府や財界関係者は、同計画が知的財産権の侵害など公正な競争を損なう恐れがあると懸念を示した。

李首相は同日全人代会議で、2時間にわたって政府活動報告を行った。

「中国製造2025計画」について、首相は「(中国を)製造強国に押し上げる取り組みを加速させる」と述べた。また、第5世代移動通信システム(5G)、航空エンジン、新エネルギー自動車など産業の発展を推し進め、「中国製造2025」のモデル地区を設立すると言及した。

中国当局は2015年、ロボット、バイオなど10の分野で、国内生産比率を大幅に引き上げる「中国製造2025」計画を発表した。2025年までに日本、米国、ドイツなどの世界の製造強国に仲間入りし、2035年までに中級レベルへアップ、2049年には技術・品質などの総合力で、世界製造強国のトップに立つとの目標を掲げる。また、イノベーション能力の向上は最優先課題として位置付けられている。

中国当局は現在、2030年までに人工知能(AI)関連産業リーダーを目指し、国内で集積回路(IC)の生産力を拡大させている。

米紙・ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)6日付によると、米通商代表部などの政府高官は、中国当局主導の振興策は公正な競争を損なうと批判した。米政府関係者は、中国当局は国内企業に補助金を給付するほか、外国企業に対して技術移転を強いる可能性が高いとの認識を示した。

トランプ政権は昨年から、中国による知的財産侵害の疑いで調査を行っている。調査結果によっては、米政府が今後、関税引き上げや輸入制限を含む対中制裁を強化するとみられる。

米中貿易摩擦を回避する目的で、習近平国家主席の経済ブレーンの劉鶴・中央財経領導小組弁公室主任が2月末に訪米した。

WSJによると、劉氏は米政府や財界関係者との会合では、「中国製造2025」が経済成長を促進するという重要性を強調しなかった。また、劉氏は同計画がすでに過剰すぎる生産能力をむしろ悪化させる可能性に言及したという。

また、中国当局内部の一部の高官が、劉鶴氏と同じ懸念を示しているという。

米シンクタンク、戦略国際問題研究所のスコット・ケネディ副所長はWSJに対して、「ハイテク強国との目標を達するために、中国当局は歳入拡大や市場アクセス制限、技術を移転するよう企業に圧力をかけている」と指摘し、「米は中国の行動に注視している」と述べた。

在中国の欧州連合(EU)商工会議所が2017年、「中国製造2025」について、「極めて問題」があり、海外企業の差別につながりかねないとの報告書をまとめた。「海外企業の間では、中国市場に参入する条件として、技術の譲渡を迫られるのではないかとの懸念が浮上している」と指摘した。

経済政策の研究とマクロ調整を行う中国の国家発展改革委員会はこのほど、「中国製造2025発展基金」を設立する意向を示した。

(翻訳編集・張哲)

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