THE EPOCH TIMES
中国伝統文化百景

女媧の功績

2018年03月25日 06時00分

1、女媧、天を補う

女媧(じょか)が天を補修したことについて、『淮南子(えなんじ)』覧冥訓(らんみょうくん)にこう記されている。

往古之時、四極廃、九州裂。天不兼覆、地不周載、火熞炎而不滅、水浩洋而不息。猛獸食顓民、鷙鳥攫老弱。於是女媧煉五色石以補蒼天、断鰲足以立四級、殺黑龍以濟冀州、積蘆灰以止淫水。

遠い昔のとき、四極が崩れたため、九州の大地は裂けた。天は地を覆いつくせず、地は万物を乗せ尽くせず、火は盛んに燃え広がって消えず、洪水ははてもなく広がってやまず、猛獣は民を食い殺し、鷙鳥(しちょう)は老弱に掴みかかった。そこで、女媧は五色の石を煉って蒼天を補修し、鰲(おおがめ)の足を切って四極を立て直し、黒龍を殺して以て冀州(きしゅう)を済い、蘆灰(あしばい)を積んで以て陰水を止めた。

天が崩れた原因、女媧が天を補修した経緯について、二説がある。『列子(れっし)』湯問(とうもん)には、「天地も物である。物には不足がある。ゆえに昔女媧が五色の石を煉ってその欠けたところを補い、鰲の足を切ってそれをもって四極を立てなおした」とある。この「天地不足」説は一家言(いっかげん)とされつつもそれほど影響力はない。これに対し、『淮南子』天文訓の記述は古来広く認められている。

昔者共工與顓頊爭為帝、怒而觸不周之山、天柱折、地維絕。天傾西北、故日月星辰移焉。地不滿東南、故水潦塵埃歸焉。(『淮南子』天文訓)

むかし、共工(きょうこう)は顓頊(せんぎょく)と帝位を争い、激怒したあげく不周の山にぶつかった。そのため、天柱が折れ、地維が断ち切れた。それで、天は北西に傾き、日月星辰(じつげつせいしん)も移った。また、地は東南が落ち込んだゆえ、水や塵埃はその方向に帰することになった。

『淮南子』の外、『論衡(ろんこう)』談天篇にもほぼ同じ記述がある。天地開癖や人類創造の神話は、各文明の中に多く見られ、かつ共通的・相似的ものも少なくないが、しかし破損した天を補修するという話は他文明の神話に見られず、きわめて希有なものである。

女媧は「五色の石」(白、黒、赤、黄、青)をもって天を補修したというが、この「五色の石」とはいったい何であるか。

宋の羅泌(らひつ)『路史』には、「煉石成赮」すなわち、石を煉って夕焼けとなるという説があるため、女媧が天を補修した五色の石は五色の夕焼けであろうとの推論がある一方、五色の石は実はただ普通の石であると思われる。

『淮南子』脩務訓に、「禹生于石」とある。『西遊記』の孫悟空も石より生まれた。玉などの石をアクセサリーや飾り物、またお守りとして愛される民俗風習は、昔より現代まで中国のほぼ全域で代々継がれている。すなわち、霊性ある石は、観賞や審美の価値があるのみならず、厄払いやお守りの効用もあり、生殖とも関係すると思われるからである。

石崇拝を女媧の天を補修する神話の文化背景として女媧の「五色の石」を検証すれば、そこには多重で深い意義があるようである。

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