米朝首脳会談は実現するか、失敗の歴史を振り返る

[16日 ロイター] – トランプ米大統領は16日、来月開催予定の北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との首脳会談の実現が不透明な情勢になっていることを認めたが、朝鮮半島の非核化を主張は続けるとの立場を示した。

北朝鮮は、米国が核開発計画放棄を一方的に主張し続けるならば米朝首脳会談への出席を再考する可能性があるとして、会談中止をちらつかせた。

北朝鮮に核放棄を促すため過去に行われたさまざまな試みは、北朝鮮が他国から攻撃される可能性を懸念したほか、米朝の敵対関係もあり、失敗に終わっている。

トランプ大統領と金委員長による史上初の米朝首脳会談が来月12日に計画された今回の経緯と、過去の失敗の歴史を振り返る。

●2017年─2018年、トランプ氏登場と歴史的計画

2017年1月に大統領に就任したトランプ氏は、北朝鮮問題で中国の習近平・国家主席に支援を求めた。韓国では同年5月、北朝鮮との対話路線を掲げる文在寅(ムン・ジェイン)氏が大統領に当選した。

米国に到達可能なミサイル発射実験などを北朝鮮が強行したことを受け、トランプ大統領は同年9月、国連演説で、米国は北朝鮮を「完全に破壊」せざるを得なくなると脅す一方、金委員長のことを「ちびのロケットマン」と罵倒した。金氏も「錯乱した米国の老いぼれを炎で黙らせる」との声明を出して応酬し、緊張が高まった。

石炭や鉄鋼、海産物などの禁輸措置を含めた、北朝鮮に対する国連経済制裁の強化を米国が主導。トランプ大統領は11月、韓国の国会で演説し、対話を求めるならば、北朝鮮は非核化に向けた行動を取らなければならないと述べた。また、2008年に解除されていた北朝鮮のテロ支援国指定を再導入した。

韓国の平昌で開催された2018年冬季五輪は、北朝鮮が代表選手団を派遣するなど、大きな転換点となった。

そして3月、トランプ大統領と金委員長は、史上初となる米朝首脳会談の開催で合意。北朝鮮は、ミサイルと核兵器の実験を凍結すると表明し、トランプ氏は過去に罵り合った金氏のことを「極めて尊敬すべき人物だ」と称賛した。

トランプ大統領は10日、米朝首脳会談が6月12日にシンガポールで行われるとツイートで発表した。

北朝鮮は豊渓里(プンゲリ)の核実験場を今月解体するとして、その詳細な計画を公表している。

●2010年ー2016年、対話の崩壊

2010年3月、北朝鮮が黄海上の軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)付近で韓国海軍の哨戒船を沈没させたことが、対話再開の障壁となった。同年11月、北朝鮮が韓国延坪島を砲撃し、兵士2人が死亡したことを受け、緊張状態はさらに悪化。北朝鮮の核問題を話し合う6カ国協議の再開を呼びかける中国に対し、韓国、米国、日本は、関係改善が先だとして拒否した。

2011年には、中国やロシア、米国が、それぞれ個別に交渉再開に向けて動いた。だが12月に北朝鮮の金正日総書記が死亡。息子の金正恩氏が後継者として権力を掌握した。

北朝鮮がミサイル技術の前進を見せ、追加の核実験を行った2013年には関係国の懸念が高まったが、交渉は再開されなかった。オバマ前米政権は、北朝鮮への制裁を強化した。

 

●2003年ー2009年、6カ国協議

金正日総書記は2003年1月、1985年に加盟した核兵器不拡散条約(NPT)からの脱退を表明。その3カ月後、核兵器の保有を宣言した。

北朝鮮の核開発計画に平和的な解決を模索する目的で、北朝鮮のほか、韓国、中国、米国、ロシア、日本が参加する第1回の6カ国協議が北京で開催された。

2004─05年にかけて6カ国協議は断続的に開催されたが、北朝鮮はミサイル発射実験を継続した。北朝鮮側は、支援と引き換えに実験などの一時停止を申し出る一方、米国などの「敵対的行為」への懸念を表明することが、いつものパターンとなった。

6カ国協議が中断していた2006年、北朝鮮はミサイル実験を加速させる一方で、米国が核の脅威となっていると批判。当時のブッシュ米大統領が警告を発した。

2007年2月に開かれた6カ国協議で、北朝鮮は、重油提供と引き換えに原子炉を停止すると約束。また、凍結された資産2500万ドルの返還を米国に要請。6月に要求が通り、その1カ月後の再協議に道が開かれた。

だが、その年末までに核開発活動の全てを公表するという、北朝鮮の約束は果たされなかった。

2008年5月、北朝鮮は米国に、テロ支援国家の指定解除を要請。米国は同年10月にこれに応じ、北朝鮮は寧辺(ニョンビョン)核施設の取り壊しを再開した。

2009年、国連の安全保障理事会は、ミサイル実験を行った北朝鮮に対し、制裁強化を表明。それまでも査察に反発していた北朝鮮は、これを契機に6カ国協議からの離脱を表明した。

●1994年─2002年、クリントン、ブッシュ政権の米朝対話

1994年、当時のクリントン米政権は、北朝鮮との間で米朝枠組み合意を締結。北朝鮮に核開発プログラムを凍結させ、最終的に破棄させる目的だった。北朝鮮は、その引き換えとして、米国との国交正常化や軽水炉建設支援、そして燃料供給を受ける可能性を探った。

だが、北朝鮮によるミサイル生産・輸出が問題となった。米国は、北朝鮮にミサイルビジネスの停止を迫るための交渉を開始。北朝鮮側は、収入減少を穴埋めする補償を求めた。1998年、パキスタンにミサイル技術や部品を提供したとして、北朝鮮に制裁が科された。

2001年にジョージ・W・ブッシュ大統領が就任すると、北朝鮮側は米国の態度が敵対的に変わったことを察知。米政府は、ミサイル関連の資金送金にかかわったとして、北朝鮮企業に制裁を科した。

2002年、ブッシュ大統領が、北朝鮮はイランやイラクと並ぶテロ支援や核兵器の入手を企てる「悪の枢軸」だと発言したことで、両国関係はさらに悪化した。

米朝の枠組み合意は、米国政府が北朝鮮が秘密裡に核兵器の開発を進めていたと断定し、北朝鮮が自衛のために核兵器を保有する権利があると反論したことで、2002年に崩壊した。北朝鮮は、米国が約束した重油の提供を遅らせていると非難。国際査察官に国外退去を命じ、核施設の稼働を再開させた。

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

関連記事
賊を捕らえるにはまずその頭目を捕らえよ―。孫子の残した、兵法三十六計のなかの言葉だ。問題を解くには、その重点を捉えなければならない。中国社会の安定には、裏舞台で権勢を振るう江沢民・元国家主席の逮捕が不可欠だ。大紀元は評論として、その背景を伝える。
中華民族は重要な転換点に差し掛かっており、中国共産党による約百年の踏みにじりと侮辱と破壊のため、いまや深刻な危機に陥っている。共産党による民族と国民への迫害の制止を急がなければならない。現在中国の情勢は未曾有の変化をみせている。この特殊な時代において、「豪傑の士」が時勢に沿って偉業を成し遂げれば、中華民族を明るい未来へ導くことができる。それについては、特別な立場にいる習近平氏は実に優位にあり、天意に沿って行動し、共産党を捨て、民族の危機を回避させることができれば、歴史にその名を刻むことができる
トランプ新内閣の国務長官候補に上がっているダナ・ローラバッカー(Dana Rohrabacher)下院議員は11月28日、ロサンジェルスで新唐人テレビのインタビューに応じた際、もし自分が国務長官になることがあれば中国政府による法輪功学習者からの臓器狩りを止めさせ、多くの人が信仰の自由を持てるようにしたいと述べた。  
米連邦議会議員の間では、中国共産党政権に対する懐疑的な見方が強まっている。共和党ダナ・ローラバッカー下院議員はワシントン市内で開かれた「中国における人道犯罪と脱党ムーブメント」に参加し、中国共産党の圧政について言及した。
カール・マルクスほど現中国の思想・制度作りに影響を与えた人物はいない。中国が共産党国家になった1949年以降に生まれた中国人は皆、小学校入学の時に「共産主義のために命を捧げ
マルクスが演劇『オーラネム』などの作品を書いた頃は、まだ社会主義の理念を持っていなかった。それどころか、彼は社会主義に激しく反対していた。「ライン新聞」の編集長だったマルクスは次のように書いた。「単に理論的なものであっても、共産主義の存在は許せない。実践などはとんでもない…」
政府はこのたび、年次の外交青書を発表した。東アジアの安全保障と日本に対する脅威について、北朝鮮のほか中国に関して多く記述。「中国の透明性を欠いた軍事力の強化と一方的な現状変更」は断じて認めないとし、関係国との連携を強化しながら意思疎通を強化していくとした。