THE EPOCH TIMES

アングル:ハワイ島の噴火で孤立、「荒廃した楽園」に残る夢

2018年06月26日 12時13分

Terray Sylvester

[ハレカマヒナ・ヒル(米ハワイ州) 19日 ロイター] - デール・アルトマンさん(66)と孫のジョシュ・ドランさん(22)は、噴火活動が続く米ハワイ島キラウエア火山近くの丘にある2ヘクタールの土地で、医療用大麻を栽培して暮らしている。

大地にできた亀裂から噴出した2つの溶岩流が海に流れ込み、彼らが住むハレカマヒナ・ヒルのコミュニティーは完全に孤立した。2人は、ここに残った最後の住人だ。

アルトマンさんは、彼らの農場では10万ドル(約1100万円)相当の大麻が収穫されると言う。「だから、よそへは行かなかった。これには大変な手間がかかっている」

アルトマンさんは、収入や住む場所のあてもなしに、自宅と大麻畑を残して避難したくないと言った。丘の上にある自宅には、溶岩流やそこから広がる火災の心配はないと語る。

「われわれはバカじゃない。きちんと考えた」とアルトマンさんは言った。

いまや荒廃してしまったこの楽園に、記者はボートでたどり着いた。そこはかつてアルトマンさんのような退職者や、彼の孫のように冒険好きな若者を引きつける、世界的に非常に活発な火山のふもとに広がる楽園だった。

5月3日に噴火を始めて以来、キラウエア火山は600戸以上の住宅を破壊し、溶岩は2388ヘクタールの範囲にまで広がった。大地にできた亀裂の数は少なくとも22カ所に及び、なかには45メートルの高さまで溶岩を噴き上げた亀裂もある

その中の1つ、「第8亀裂」から流れた出た溶岩流は、ハレカマヒナ・ヒルと外部をつなぐ道を寸断し、海へと流れ込んだ。

<女神に供え物>

ハレカマヒナ・ヒルの住人2人と一緒に、記者は現地に入った。

マーク・クローソンさん(64)とトム・マキャロルさん(68)は、溶岩流がそれぞれの自宅に通じる道を寸断し始めた時に避難した。自宅や家財道具の様子を確認するため、彼らは一時帰宅した。

最初の夜は、マキャロルさんの自宅に泊まり、缶詰を開けて、彼の妻がキラウエア山の女神ペレへの供え物として残していったジンでそれを流し込んだ。

見上げる空は、少し離れた場所まで達した溶岩流で赤く光っていた。その夜は、空気の悪さに悩まされた。硫黄混じりの重い「ボグ」と呼ばれる汚染された大気のせいで、のどが痛くなった。夜が明ける数時間前、私はガスマスクをつけ、空が白み始めるまでうとうとした。

「戻ってきてこれを目にするのは、心が痛む」と、マキャロルさんが言った。テキサス州出身のマキャロルさんは、妻と一緒に11年前に移住してきた。3人の息子も、後から加わった。

マキャロルさんの自宅は無事だが、今は住むことができず、今後も2度と住むことはかなわないかもしれない。

「いっそペレが奪ってくれたなら」と、マキャロルさんは言う。火山を取り巻く土地は女神のものだという言葉は、このあたりでよく耳にするものだ。

夜が明けてすぐ、クローソンさんの自宅まで歩いた。まだ割れ目から蒸気が上がる、固くなった溶岩の上を歩く最短ルートで行こうとしたが、崩れやすかったり、空洞になっている場所があったりすることが分かり、そのコースをあきらめた。

クローソンさんの自宅は、ハレカマヒナ・ヒルに数十軒ある一軒家の1つだ。この地区はいま、3方を溶岩に囲まれ、中にはまだ赤くうごめく溶岩流もある。

噴火は、気候にも影響を与えているようだ。熱い強烈な風が家々の間を吹きぬけ、千切れた金属シートや破れた温室をガタガタと鳴らしていく。

ニワトリが5羽、後をついてきた。空腹なのか、それともただ寂しいのかは、分からなかった。溶岩流のすぐ上にある道路には牛が3頭いた。ハワイ島の密林に生息する野生の豚が、いまやコミュニティーを堂々と歩き回っていた。

溶岩の塊でさえぎられた別の道の端まで来て、私ははっとした。

400メートルほど先に、高さ12メートルほどの固まった黒い溶岩が、山のようにそびえていた。3週間前、私はこの同じ場所から谷を見下ろし、森に隠れた新たな亀裂から溶岩が噴出するのを眺めていた。

5月に噴火が始まったとき、自分がコミュニティーの中で起きた噴火活動を取材しているのだと考えていた。今、それは逆だったと分かった。これは、内側にコミュニティーを抱えた火山の話だったのだ。

<酸の嵐>

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