米・EU、貿易障壁削減へ交渉開始で合意 新たな関税棚上げ

2018/07/26
更新: 2018/07/26

[ワシントン 25日 ロイター] – トランプ米大統領は25日、欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長と会談し、自動車を除く工業製品に対する貿易障壁の撤廃に向けて取り組むことで合意した。交渉を進める間は自動車関税の発動を控えることも示唆した。

ホワイトハウスで会談した両氏は、関税や政府補助金、非関税障壁の引き下げに向け、「高官級作業グループ」を立ち上げることで合意。トランプ政権による鉄鋼・アルミニウムへの輸入関税や輸入自動車・自動車部品に25%の関税を課すとの警告を背景に米・EU間の貿易戦争を巡る懸念が強まっていたが、後退する可能性がある。

トランプ大統領とユンケル委員長は会談後、今後の交渉で欧州製鉄鋼・アルミへの関税や、オートバイ、バーボンなど米国製品にEUが課している報復関税の「解消」に取り組むことで合意したと明らかにした。

トランプ大統領は記者団に対し、EUが米国産LNG(液化天然ガス)の輸入を拡大させるとともに、大豆の非関税障壁を削減することで合意したとし、「EUはほぼ直ちに多くの大豆を輸入する」と述べた。

その後ツイッターに、書類の作業は「迅速に進んでいる」と投稿し、「誰も想定しなかったペースで事態の打開が得られた」と述べた。

ユンケル委員長は、交渉が行われる間は新たな関税を発動しないことで双方が合意したと述べた。米国側が提案している自動車関税も含まれる。

「交渉を進める間は、一方が交渉を止めない限り、さらなる関税は控える」とし、「既存の鉄鋼・アルミ関税も見直す」と続けた。

委員長はその後記者団に対し、トランプ大統領が「大きく譲歩」したと語り、大統領が合意を実行に移すことを期待すると述べた。

交渉を進める間、米国の鉄鋼・アルミ関税は引き続き適用されるが、ユンケル委員長は「鉄鋼・アルミ分野の措置の見直しに米国が同意したのは初めてだ」と評価した。

EU当局者は今回の合意を大きな成功と評価し、ドイツのアルトマイヤー経済相は「貿易戦争の回避や多くの雇用保護につながる前進が得られた。世界経済に朗報だ」とツイートした。

合意を受けて、世界の株式市場は上昇した。貿易戦争を巡る懸念が重しとなっていたユーロが買われたことで、ドル指数<.DXY>は下落。米国債価格も下落し、10年債利回りは1か月ぶり高水準の約2.98%となった。

米自動車工業会(AAM)は交渉開始での合意を歓迎し、「貿易障壁を削減するためには関税引き上げではなく交渉がより効果的なアプローチであること示している」と話した。

トランプ大統領とユンケル委員長は、今後の交渉では自動車を除く工業製品の関税、非関税障壁および補助金の撤廃に加え、サービス、化学製品、医薬品、医療機器の貿易における障壁削減に取り組むと明らかにした。

また、世界貿易機関(WTO)のルール改革でも協力する。

米商務省はトランプ大統領の指示を受けて、自動車の輸入が安全保障を脅かしているかどうかの調査を行っており、早ければ9月に追加関税の導入を提言する可能性がある。

トランプ、ユンケル両氏は声明で、自動車関税には直接言及せず、他の工業製品に焦点を当てた。

EU当局者は、米政権側から大豆の輸入を拡大するよう強い圧力があったと明らかにした。米農家は米国産大豆に対する中国の報復関税の打撃を受けており、トランプ大統領は24日、農家に対し最大120億ドルを支払う支援策を発表した。

ユンケル委員長は、米国が欧州向けLNG供給を拡大するため輸出ターミナルを増設することで合意したと明らかにした。

トランプ大統領は「欧州は大規模なLNG輸入国となり、エネルギー供給の多様化が可能になる。米国には十分な供給量がある」とした。

*内容を追加しました。

Reuters
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