マレーシアのマハティール首相(MANAN VATSYAYANA/AFP/Getty Images)

マハティール首相がまもなく訪中 「一帯一路事業を諦めたい」中国と交渉へ

マレーシアマハティール首相は、8月17日から5日間の日程で訪中して、習近平国家主席らと会談を行う。首相は13日にAP通信のインタビューを受け、訪中の際、前政権が中国と調印した「一帯一路」インフラ事業の中止に関する協議を行うと表明した。中国訪問は5月の首相就任後、初めてとなる。

AP通信のインタビューでは、マハティール首相は中国との友好的な協力関係も保ちたいと明言しながらも、「マレーシアにとって、中国の支援プロジェクトが経済的恩恵をもたらさないと判断した場合、できるなら、これらのインフラ事業をあきらめたい」と示した。

中国主導の広域経済圏構想「一帯一路」が今、窮地に立たされている。昨年、パキスタンやネパール、ミャンマーで中国関与のインフラ整備・建設案が相次いで中止や延期に追い込まれた。今年、マハティール首相は就任した5月中、「契約内容だけでなく、融資率も高く、国益にそぐわない」を理由に、マレー半島高速鉄道などの2つの計画中止を表明した。同計画は、中国が推進するマレーシア最大級のプロジェクトとして、受注攻勢をかけていたマレー半島を横断する「東海岸鉄道」事業である。同計画は、ナジブ前首相の公的資金流用疑惑を抱えている。

かつて、親中ナジブ前首相が「一帯一路」に相乗りし、マレーシアの対中関係を緊密化させていた。2016年末、ナジブ前首相は中国と共同で協定した「東海岸鉄道」(688キロ)と天然ガス・パインライン事業が総経費の200億ドル(約2兆4440億円)超に達した。

マレーシアでは、「一帯一路」に関連するプロジェクトが鉄道、電力、工業団地、港湾などのインフラ整備投資や、IT事業、製造業、教育、農林水産、観光など幅広い事業に及んでいる。

中国主導で、昨年8月に着工済みの長距離「東海岸鉄道」事業は全体13%ほど建設工事が進んでいる。マハティール首相は「すべての中国企業のプロジェクトについて取り消しは不可能である。現時点で高速鉄道計画など2つのプロジェクトを見送る方針だが、将来必要な時点で回復させる」との趣旨を発言していた。首相は訪中し、不公平な工事契約、ローンの見直しなどについて、習近平主席と交渉する見込みだ。

中国のマレーシアのインフラ事業について、マレーシア財政部特別幹部のプア氏(Tony Pua)は、中国当局がマネーロンダリング(資金洗浄)をしようとした疑いがあり、「すべての支援プロジェクトはまるで詐欺のようだ」と話した。  

ナジブ前首相は、2009年に主導して設立した政府系ファンドの1MDBをめぐる巨額の資金流用疑惑で、5月の総選挙で敗れ、7月5日に背任罪や収賄罪など4つの罪で起訴された。不正に流用された資金総額が1000万ドル(約11億7000万円)に上り、ナジブ自身の銀行口座に移されたとされる。また、マレーシア政府側によると、ナジブ前政権が88%の工事請負契約約款を中国石油集団に支払ったが、まだ工事進捗状況は13%にしか達していない。

英・BBCニュースによると、マレーシアの高官は、中国国有企業はナジブ前首相のマネーロンに関与した疑いがもたれていると示した。さらに、ナジブ前政権時代に中国企業と結ばれた契約の不公平な部分について、新発足政権は、「1MDBの不正事件が中国企業に繋がっている」とみており、関係国と連携して、1MDBから失われた巨額の資金の行方を追っている。 

(翻訳編集・柳雅彦)

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