米当局、出産ツアー企画の中国人を一斉摘発 20人起訴

2019/02/01
更新: 2019/02/01

米当局は1月31日、出生する子どもの米国籍取得目的で中国人妊婦を訪米させる「出産ツアー」を企画運営していた中国系の経営者20人を、ビザ詐欺資金洗浄などの容疑で逮捕、起訴した。

米国法では、米国で生まれた子どもは無条件で国籍を取得する資格が付与される。出産ツアーは、米国法の乱用として国内で問題視されていた。

検察の挙げた20人の一例として、李冬媛(Dong Yuan Li 音訳、41、女性)は中国人女性に、妊娠を隠して旅行ビザで訪米することを教えたり、入国ビザ取得のための面接の訓練を施した。

検察発表によると、李容疑者はカリフォルニアで出産ツアーを企画運営する「You Win USA」を経営。2年間で500人もの妊婦を中国から呼び、300万ドルの利益を得た。料金の相場は4万~8万ドル。3カ月の米国滞在中の出産やその前後のケア、国籍申請代行などの費用が含まれている。李容疑者は20軒のマンションを賃貸し、妊婦らを住まわせていた。

ロサンゼルス米連邦検察トム・ムロージェク報道官は、出産ツアー関連で他に十数人を起訴したが、多くは中国に逃亡したと考えられているという。

連邦大陪審も同日、出産ツアーを企画する「Star Baby Care」を運営する4人を起訴した。会社は2010年から約8千人の妊婦を子どもの国籍目的で米国へ入国させる手続きを行った。半数は中国で、ほかロシア、ナイジェリアなどの出身者。

「Star Baby Care」の顧客は共産党の高官がメインだった。こういう「VIP」の顧客には10万ドルのツアー費用を請求している。河南人民ラジオ局、北京市政府公安局と黒竜江省ハルビン医科大学など政府部門に勤務する共産党幹部などが顧客だった。「魅力のある国籍」「きれいな空気」「優良な教育環境」「手厚い老後の保障」のため、顧客らは躊躇することなく費用を支払っているという。

検察によると、一部の顧客は低所得者を装い、医療費を全額払わなかった例もあるという。

ある夫婦は低所得者として2万8千ドルにのぼる出産費用のうち、4080ドルしか負担しなかった。夫婦はアメリカの銀行に22万5千ドルを超える貯金があり、ロレックスやルイ・ヴィトンなどの贅沢品を購入していた。

米当局は中国共産党政府の高官が顧客になっているため、出産ツアーが国家安全にリスクをもたらすと指摘する。生まれた子どもは中国で育てられた後、米国に戻り、21歳になったら両親を呼び寄せることができる。

米国の入国管理・関税執行局マーク・ジト国土安全保障調査特別補佐官は、出産ツアーについて「深刻な国家安全保障上の懸念と制度の脆弱性だと考える」と述べた。ジト氏は、この法の抜け穴を使って外国政府による悪用もありうるとした。

ニューヨーク・タイムズ1月23日付によると、同じく出生無条件市民権付与のあるカナダでは、議員や同国元移民局代表が、出産ツアーの違法化や無条件市民権付与の見直しを提言している。同様の法案は世界30カ国にある。日本の場合、両親のどちらかが日本人である場合や両親が不明、または無国籍などの場合に限っている。

(編集・佐渡道世)

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