【紀元曙光】2021年1月20日

「萬朶の櫻か襟の色、花は吉野に嵐吹く。大和男子と生まれなば、散兵線の花と散れ」。
▼軍歌『歩兵の本領』は、かつて陸軍兵士が出征する際に、武運を祈念して盛んに歌われた。もちろん戦後生まれの筆者に当時の記憶はないが、聞き及んだその歌詞を「短兵戦の花と散れ」と誤解して、「見事に散華せよ」の意だと長らく思い込んでいた。そうではなく「桜の花のように、敵前に散開して戦え」だと後に知った。
▼明治44年に発表された『歩兵の本領』は歌詞を軍国調にした替え歌である。同じ曲調の歌に旧制一高の寮歌で明治34年『アムール川の流血や』があるが、元歌はと言えば、明治32年の『小楠公』。七五調の美文で、楠木正成の忠義をうたい上げている。
▼これをパクって、大正11年に『メーデー歌』としたのが労働運動の人々。つまり、自分たちこそ「貧しい労働者の味方」であり、労働者から搾取する「大企業や資本家」および「アメリカ帝国主義と日本政府」を絶対悪と決めつけて、「万国の労働者よ。団結して闘争せよ」と扇動した人々である。共産主義に毒された重症患者といってもよい。
▼目の毒なので、お読みにならなくて結構。「聞け万国の労働者。轟き渡るメーデーの、示威者に起こる足どりと、未来を告ぐる鬨の声」。これを集団催眠にかけられた群衆がデモをしながら高唱すれば、確かに麻薬的な陶酔作用がはたらくだろう。
▼ゲバ棒を手にした最後の世代は、いま70代であろうか。大紀元の社説『悪魔が世界を統治している<第五章>西側への浸透』を、世代を問わず、ご覧いただきたい。