【中国伝統文化】 賢い裁判官

【大紀元日本10月24日】古代中国の時代、ある農夫の隣に狩人が住んでいた。狩人は狩猟犬を飼っていたが、この犬は獰猛で、よくフェンスを飛び越えては農夫が飼っているを追いかけていた。農夫はたびたび狩人に犬を鎖につなぐよう頼んだが、狩人は全く聞き入れなかった。

ある日、犬は再びフェンスを飛び越えると、農夫の羊を追いかけまわして、ひどいケガを負わせた。我慢の限界を感じた農夫は町へ赴き、智慧ものと評判の裁判官を訪れた。

裁判官は慎重に農夫の話を聞くと、次のように述べた。「私が狩人に通告すれば、彼は犬をすぐさま鎖につなぎ、または檻に入れるでしょう。しかし、それによってあなたは友人を一人失うことになり、敵を作ることになります。あなたは、どちらがいいですか。友人がほしいですか、それとも敵でしょうか」。農夫は、友人だ、と答えた。

「いいでしょう。それでは、私が羊の安全を確保し、なおかつ近所の友人ともよい関係を保つ方法を教えましょう」。裁判官がその方法を教えると、農夫はうなずいた。

農夫は家に帰ると、早速裁判官の方法に効果があるかどうか、試すことにした。彼は、飼っている羊のうち、最も見栄えのよい3頭を選び出し、それを狩人の幼い三人の息子にプレゼントした。子どもたちは大変喜び、羊と遊び始めた。狩人は、子供たちの大事なペットを傷つけたら大変とばかりに、頑丈な檻を作って犬を常時その中へ入れることにした。その後、犬がフェンスを飛び越えて農夫の羊を襲うことはなくなった。

農夫からのプレゼントに対するお礼として、狩人は時々捕らえた獲物を農夫に分け与えた。農夫はまたそのお礼として、時々羊の肉や、彼が作ったチーズなどを狩人に分け与えた。そうこうしているうちに、彼らはとても仲のよい隣人となったのである。

中国には、古くから次のような諺がある。「寛容と慈悲の心を示すことが、人の心をつかむもっともよい方法だ」。また、アメリカには「One catches more flies with honey than with vinegar (甘い言葉の方が辛辣な言葉より多くの成果が得られる)」という言葉がある。古今東西、古人は似たような智慧を持っていたようだ。

(翻訳編集・田中)