中国で発生した大規模珪肺病中毒事件の背景

2005年06月20日 10時12分
 【大紀元日本6月20日】アジアの宝石半加工最大業者・香港力奇宝石公司の中国の子会社は、長期にわたって職場環境の安全管理責任を怠ったため、従業員47人が重度の珪肺病中毒となり、数人がすでに死亡したのがこのほど調査により分かった。

 香港力奇宝石公司の子会社・恵州港力奇宝石公司は中国広東省の恵州にあり、長期にわたって職場環境の安全管理責任を怠ってきた。宝石の加工過程では、大量の粉塵が発生するため、防塵設備が必ず必要であるが、当会社の工場では、それがまったく設置されていない。粉塵濃度は安全基準を大幅に超えており、47名の従業員が重度の珪肺病中毒となり、数人がすでに死亡したという。

 多くの外資系企業が投資している恵州には、中国全土から大量の出稼ぎ労働者が集まっている。彼らは生活のために故郷を離れて就職活動をするが、教育をあまり受けておらず、技術もないので肉体労働や危険作業に従事するしかない。少ない賃金で働く彼らの運命は工場の支配人に委ねられているのが現状であり、劣悪な作業環境のために健康を損ねることが少なくないのである。

 頻繁に工場を移転する

 力奇宝石公司は中国恵州市と河源市に、二つの工場を設立し、その工場面積は、合計で約5万平方メートルである。製品は全部海外市場に流通している。

 恵州の工場には、約三千人の従業員が働いている。最初は、深センにあったが、97年に恵州に移転した。今度はまた新に広東省汕尾(センオウ)市海豊県に工場を建設している。法律の制裁や弁償問題、環境汚染などの問題から逃れるために、力奇宝石公司は度々、従業員、原材料と機械を、まるごと移転し、会社の名前まで変更するという手法を使ってきた。深センや恵州などの工場に勤めて珪肺病中毒となった従業員に対し、同社は一切の責任を認めようとしていない。被害者らは、自らの権利を守ることが非常に困難な状況になっている。

 極めて劣悪な作業環境

 従業員らは、10年を超える長い期間にわたって、大量に鉱石の粉塵を吸い込みつづけてきた。工場には、本来設置すべきである粉塵防護装置がまったくなく、マスク一枚、支給されたことがないという。

 2001年ごろから、従業員たちに労働災害として珪肺病の症状が現れ始め、今日までに粉塵汚染で死亡または終身障害を負った従業員の数は47人に上った。そのうち、完全に労働能力を失った人が26人、死亡したのが3人、残りの18人は、一期珪肺病患者であり、ほとんど働けない状況である。その中には末期珪肺で、いつ死亡するか分からない人も多く含まれている。

 湖南省出身の夏徳来さんは、33歳、工場で働いてわずか二年の間に、病状が一期から三期まで進行した。このために妻と離婚し、4年間ずっと休業し、治療を受け続けてきた。収入はゼロの状態で、工場からもらった賠償金2万元(約日本円で28万円)も、とっくに底をつき、新たに2万元以上の借金を負うことになった。現在、夏徳来さんの病状は日々悪化し、50メートルも歩けば胸に石が置かれたかのように、息苦しくなり、咳をすると、吐血する状態に直面している。

 李維中さんを含む窮地に立たされた被害者ら25人は昨年5月、北京に上告した。李さんたちは最高裁や衛生部(日本の厚生省にあたる)、労働社会保障部などの関連部門に、切実な状況を訴えたが、被害者に対する賠償問題は依然として解決していない。

 李維中さんも、現在、「二期甲等」の珪肺病に苦しんでおり、完全に労働能力を失い、他の被害者が死亡したときと同じ症状が現れた。李さんの長男は、学費を払えないために学校に行くことを断念し、次男は、まだ生後10ヶ月の赤ん坊である。裁判をするために、李さんの借金の総額は4万元に上り、一家四人はいまホームレス状態となっている。

 楊人平さんとフン興中さんは、珪肺ニ期と診断されている。

被害を受けた従業員の一人(写真提供・石炳坤氏)

 記者は、この事件を担当している北京の著名な弁護士・高智シンさんを取材した。

 記者: 高さんは、どうやってこの案件を受理したのですか?

 高智シン弁護士: 私のもとに、香港の労工通信という組織から、関連資料が送られてきたのです。

 記者: 会社の理事長・王盛龍宛の公開状を拝見しました、その後、被害を受けた従業員らは、会社に賠償請求することが出来たのでしょうか?

 高弁護士: 最終的に、多大な努力を費やした結果、私が受理した4人の被害者は、賠償金をもらうことで和解しましたが、しかし、裁判所の判決は、賠償する必要がないというでたらめな内容でした。4人を除いて、そのほかの43人の被害者らは、以前に賠償金を受けとっています。しかし、法律規定から判断すると、とても不十分な賠償額です。中国の法律制度は、弱者を保護するためのものではないので、とても残念です。被害者たちは、終身障害となり、わずかな賠償金では状況を変えられない。一部の人たちには、既に残された時間がすごく短いのです。私に会いに来るために三階まで上がるのに、何回も休みをとらなければならない人もいました。

 記者: この現実を、どう受け止めていますか?

 高弁護士: とても残念で、心が痛みます。これらの出稼ぎ労働者が非常に可哀そうでならない。私たちの国家の法律制度が、あまりにも不健全なのです。それは悲しいけれど現実です。法律制度のシステム全般が腐敗しているので、全社会弱者層が被害者になってしまうのです。

 多くの多国籍企業に関していえば、海外においては、労使関係になんら問題がないのに、どうして、中国に投資すると悪魔に変身するのでしょうか? どうして、海外においては法律を遵守し、労働者権益を尊重するのに、中国に来ると、これらを無視することになるのでしょうか?  

 記者: これは中国政府の法律制度と関係しているのではないでしょうか?

 高弁護士: それは明らかでしょう。

 力奇宝石公司は手段を選ばず、政府はまったく無関心 

 2001年5月、工場での珪肺労働災害汚染が発覚して以来、会社側は詐欺と脅迫で、被害者らに圧力をかけた。一部の被害者らは、示談に応じることに同意したが、彼らが手にしたのは、法律規定よりはるかに低い、24000元という低額な賠償金であった (日本円に換算して約30万円程度) 。 その中にはまったく賠償金をもらえなかった被害者もいた。

 責任を逃れるために、会社は社名を変更したり、工場を丸ごと移転したりした。中国政府の各管理部門も、被害者らの陳情を無視し、介入する姿勢を全く見せない。弱者には、法律的な保護がなく、窮地に追い込まれるだけである。

 一部の被害者は民事訴訟を起こし、恵州裁判所は、48000元の人身損害弁償を命じたが、治療費に関しては、結論がだされていないまま、別案件で処理するという。被害者らのその他の請求は、すべて却下された。しかし、会社側は、強硬に、賠償金を支払うことを拒否している。

 高弁護士は、「中国政府には正義のかけらもなく、労働災害者を無視している。法曹界の腐敗が、刑法の価値をゼロにしている、本来あるべき司法の役目を果たさず、被害者たちを守るどころか、否定する場になっている。これは、中国国民の恥である! 裁判所は労働者の正当な権利を守るべきである。力奇宝石公司は、窮地に追い込まれた労働災害者らとその家族に、さらに追い討ちをかけている」と厳しく批判した。

 香港各界が被害者らを声援する

 2004年9月、香港労働団体は、被害者らを声援する集会を開き、力奇宝石公司に抗議し、法律に則って賠償することを要求した。

 その後、力奇宝石公司は、集会参加者と石炳坤さんを誹謗中傷の罪で告訴した。香港労働団体は、これは法律を利用して、労働者運動を抑圧するための手段であるとの見解を発表した。

 調べによると、力奇宝石有限会社、高雅宝石有限会社、麗人宝石公司、芸昇宝石有限会社の4つの香港会社の中国工場では、連続して合計60件の珪肺病案件が発覚したという。

 石炳坤さんは、これからも活動を継続し、被害者らを支援していくつもりであると語った。

 珪肺病中毒とは、どういう病気?

 珪肺病中毒とは、きわめて微細な珪粉塵が、肺気胞に沈積し、炎症を起こし、食細胞を増発させ、珪粉塵を丸呑みする、そのため、肺に繊維化現象が現れ、換気機能に障害が起こる。症状は、よく咳をする、胸が苦しい、痛みを感じる、体力を消耗すると、呼吸が苦しくなるなどである。初期には、ほとんど症状が現れないが、5年から10年後に発病する。

 現在では、特別な治療法が無い職業病である。肺結核を併発する可能性が高く、病状が重い者は、心臓に障害を及ぼすため、死亡する可能性が高い。

 中国は職業病死亡率が世界一位

 中国厚生省の報告によると、中国国内で、有毒有害物を扱う企業は1600万軒に上り、労働災害を受けた人は2億人を超える。2003年の報告書では、各種職業病発病実例数は10467件、塵肺病が8割を占め、塵肺病の累計発病例は58万人、すでに死亡したのが14万人、現患者数は44万人であると発表した。専門家の意見では、実際の発病例は100万人を下らないという。

 中国では、職業病を予防するための法律制度が整っておらず、一部の地方政府は経済利益のために監督責任を放棄し、労働災害が蔓延しているのである。中国の労働災害死亡率は世界のトップで、ヨーロッパとアメリカの合計を超えている。

 職業病患者に対する支援と理解を

 被害者たちは通常、職業病のために生活が一変し、再就職するのは極めて難しい。生活のために、多額の借金を背負うことが多い。病気に苦しみながらも、賠償金が全くもらえない人も珍しくない。企業主たちは、被害者らの犠牲と引き換えに、莫大な利益を手に入れた。彼らは責任から逃避し、合法的な賠償金さえ払おうとしないのである。

 記者の取材に、香港キリスト教工業委員会執行幹事・石炳坤さんは次のよう述べた。「被害者の従業員たちには、労働災害の賠償金しか払われていない。わずか数万元しかなく、それは全くすずめの涙だ。医療費が払えず、彼らの境遇は非常に困難である。 会社側は、被害者たちに対し、非常に無情である」。

 宝石は、身分と地位の象徴である。宝石は美しいが、裏では本件のような労働者の血と涙の訴えが、隠されているかもしれないことを知ってほしい。

 責任者電話番号:
 恵州市江北事務所: 0752-2802552
 恵州市市役所: 0752-2808052

 力奇宝石公司理事長 王盛龍
 住所:香港九龍紅勘民裕街41号凱旋工商中心第一期1ビルB2座
 電話番号:(852)2330 8188 FAX:(852)2330 0828
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