【簡美育作品集】その一・『静観』

2005年06月11日 19時28分
 【大紀元日本6月11日】簡美育:画家、1953年台湾省南投生まれ。台湾密画の画法による花鳥絵画を得意とする。幼少時から絵画に親しみ、台湾芸術大学美術科卒業後、1987年台北市立美術館で初の個展を開催。二十数年の間に、その画風はしばしば変更されたが、近年制作された密画の画法による作品群は、台湾美術界で絶賛された。完璧な構図及び技法に加え、西洋絵画の明暗法も取り入れられているのが、その特徴となっている。一連の作品は、「万物を静観すれば、自然にその内在する生命力の強さがわかる」という、独自の自然観に基づいている。代表作である『竹雀図』は、歴代の竹雀密画作品中、宋の巨匠・徴宗に次ぐものと、高く評価されている。

 草花を題材とした中国画は、えてして描きにくいものであり、台湾ではあまり見かけることはない。この作品の中の蕾を囲む花弁は、ふっくらと丸みを帯びているが、花弁を過度に描き込むことを避け、全体を描写することによって、この花の特徴を巧みに表現している。

菜の花(部分)

 幼少時の記憶の中で、正月が過ぎるころになると、田舎ではいつも菜の花が大地を覆っていた。時には静止し、時には風に吹かれ、黄色いさざ波が起きる。それは広々として雄大な春の景色でもあった。

 この作品は1993年に日本で写生されたものである。咲き乱れる菜の花の間を、蝶と蜜蜂が行き交い、静けさの中にも、生命の息吹が感じられるものである。写生する際には、対象の外観や構図というものだけでなく、その花草の精神を感じ取る、と言うことが肝要であろう。写実のみならず、心の中で感じた“驚き”というものをいかに伝えるかにより、感動というものをも伝えることが出来る。この作品は、大自然への“敬意”を払いつつ、ある種の“静けさ”を表現しようとしている。その静けさを表すことにより、生命というものの真実に、触れているのではないかと思う。それは一つの美であり、気質でもあろう。

 それぞれの作品の色彩と雰囲気は皆異なるものがある。構図から幾度も塗り重ねる過程で、一枚の絵であっても、そのつど新たな試みとなり、筆者の心境の現れともなる。この作品が画かれている時に、折しも、金勤伯先生が他界されてしまった。そのため、その色彩は重く、やや沈痛な雰囲気を帯びるものとなっている。

 画家は、生命から悟ったことを通じ、花草の命を表現していくのであろう。
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