中国海上民兵の停泊、攻撃的行為のパターンに適合

2021/04/19
更新: 2021/04/19

ここ数週間にわたり、中国人民軍海上民兵(PAFMM)が乗船していると考えられる数百隻の中国船舶が南シナ海の係争岩礁に集結している。この事態を受け、比領海への侵入により不要な衝突が発生し得るとしてフィリピンが非常に強い抗議を表明した。これは南シナ海および台湾や尖閣諸島周辺で中国が繰り返す攻撃的行為のパターンに適合する。

フィリピンではジュリアンフェリペ礁と呼ばれる牛軛礁は、フィリピンの基線から200海里内の排他的経済水域(EEZ)内に位置している。しかし、複数の報道によると200隻を超す海上民兵船が結集したのは同岩礁である。フィリピン当局は海上民兵の船舶が岩礁に結集しているとして抗議を申し立てた。

中国当局は悪天候の影響で中国漁船が同海域に一時的に退避しているに過ぎないと主張しているが、フィリピン当局によると船舶が漁業を操業している様子は見られない。

中国外務省(外交部)華春瑩報道官は、「中国漁船は同岩礁付近の海域で漁業を営んでいた。最近の荒天による暴風を避けるために、一部の漁船が[牛軛礁付近に]退避した。別に珍しいことではない」と述べたと、2021年3月下旬にフォーリン・ポリシー(Foreign Policy)誌が報じている。同誌によると、マニラに所在する在フィリピン中国大使館の報道官も「フィリピンが主張するような中国人民軍海上民兵など存在しない」として、直接的に容疑を否定する声明を発表している。

2021年4月にロイター通信が伝えたところでは、ロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)比政権は「両国が望まない敵対関係に発展する」リスクがあるとの声明を発表し、海上民兵の行為を批判した。フィリピンがこれほど激しい口調で中国を非難するのは異例である。同通信社によると、比大統領府のサルバドル・ パネロ(Salvador Panelo)首席法律顧問は声明を通して、「当国は相互の懸念と利益の問題については厭わずに交渉する構えだが、当国の主権については交渉の余地は全くないことを覚えておいてもらいたい」と表明している。

ドゥテルテ政権のハリー・ローク(Harry Roque)大統領報道官も、「自国国土や排他的経済水域について当国は1ミリ足りとも譲るつもりはない」と付け加えている。

日本の海上保安庁(JCG)の報告では、2021年3月下旬に中国船舶は東シナ海の尖閣諸島近辺にも侵入している。日本政府が尖閣諸島付近の水域から中国船舶に退去を要請したのは今年に入って11回を数える。ジャパンタイムズ紙が報じたところでは、中国船舶が日本領海に侵入して日本漁船に接近しようとする動きを見せた事態を受け、加藤勝信官房長官は「誠に遺憾である」として中国政府に厳重に抗議を申し入れた。

台湾においても、中国人民解放軍空軍(PLAAF)航空機20機が台湾防空識別圏に侵入するなど緊張が高まっている。ロイター通信の報道によれば、中国人民解放軍空軍の航空機は台湾が実効支配する南シナ海の東沙諸島(プラタス諸島)から台湾島南部にかけての海域上空を連日のように飛行していたが、2020年に台湾国防部が開示したデータの中でこれは最大数の航空機による侵攻となった。

同通信によれば、中国人民解放軍空軍の航空機数機は台湾島南東とフィリピンを隔てるバシー海峡の上空を通過している。台湾上空を直接飛行したわけではないにしても、台湾側は事態に備えて自国戦闘機をスクランブル(緊急発進)させる準備を整える必要があるため、こうした中国軍用機の飛行により中華民国空軍には財政的・物理的な圧力がかかる結果となる。

米台関係の親密化を警戒した中国が警告を発した直後から、中国軍用機による侵入回数が激増した。UPI通信社の報道によると、パラオ大統領の台湾訪問にジョン・ヘネシーニランド(John Hennessey-Niland)駐パラオ米国大使が同行したことに強く反発した中国は、米国は「台湾を外交訪問するべきでない」として、中国当局が警告を発した。現職の米外交官による訪台は実に42年ぶりとなる。

米国は引き続き同盟・提携諸国と協力しながらインド太平洋地域の平和維持に取り組む構えを示しており、中国の侵略行為に反対し、法治を尊重することを中国に要請している。

2021年3月に訪日したアントニー・ブリンケン(Antony Blinken)米国務長官は、「中国は強制と侵略という手段で香港の自治を体系的に侵食し、台湾民主主義の弱体化を図っただけでなく、新疆ウイグル自治区やチベット自治区の人権を侵害し、国際法に違反して南シナ海の領有権を主張している」と述べ、「各国が規則に準拠し可能な限り協力を図り、そしてお互いの相違を平和的に解決できる『自由で開かれたインド太平洋』構想に向けて諸国は一丸となって取り組むべきである。特に中国が強制や侵略という手段で自国の恣意を通そうとする場合は、必要に応じてこれに対抗する必要がある」と述べている。 

(Indo-Pacific Defence Forum)

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