【インタビュー】何清漣:人民元切り上げに踏み切った原因及び中国経済に与える影響

2005/08/03 10:53
 【大紀元日本8月3日】中国人民銀行は7月21日、通貨バスケット制を導入することを発表。そのため、米ドルに固定されていた為替も1米ドル=8.2765元から1米ドル=8.1100元に2%切り上げることになった。中国の著名な経済学者、米プリンストン大学客員研究員の何清漣氏は、大紀元記者のインタビューに対して、中国人民元切り上げの背後に国際的圧力もあったが、実質上、中国国内経済の圧迫が強まったからだと指摘。同氏は、インタビューの中で中国政府が人民元の切り上げを政治化したこと、切り上げが中国経済に与える影響などについて分析した。以下はその主な内容である。

 中国国内経済の圧迫が人民元を切り上げた

 人民元の切り上げは大勢のおもむくところであり、国際社会からかねてから切り上げるように圧力がかかっているが、切り上げに踏み切った本当の理由は国内経済圧力である。

 中国政府が人民元の切り上げに反対していた主な理由は、労働集約型製品の輸出低下による失業者の増大が、既に深刻化した就職難に混乱を招く恐れもあるからである。しかし、ここ2年間、人民元は実勢よりも安いレートでドルに固定していることが経済に与えたマイナスな影響が浮き上がりつつあり、輸出低下の憂慮は二の次になった。

 人民元価値の過小評価は、中国の輸出超過及び外貨準備高条件を悪化させ、経済に圧迫している。実際、中国の外貨準備高は1993年の212億米ドルから2005年3月の6591億米ドルに急増した。その背後には、次の3つの理由が考えられる。第一に、人民元価値の過小評価によって、中国が輸入した石油、鉄鋼、材木などのエネルギー及び原材料の輸入価格が高止まりし、支出の負担が大きい。第二に、人民元貨幣価値の過小評価によって、中国の外債に対する利息返済コストの増加は、中国の産業構造調整に不利である。第三に、中国貨幣の発行量が増大し、数年も続いていることによって、海外からの投機資金が流入し、中国政府は大量の資金を使い米ドルを買うことになる。また、これらの投機資金はさらに不動産業界へと流れたことによって、不動産バブルを作ってしまった。

 中国政府はエネルギー、原材料などの輸入価格を下げ、輸入コストを節約し、中国の外債に対する利息返済コストを下げるために、人民元の切り上げを考えざるを得なかった。

 人民元の切り上げの政治化

 ここ十数年、中国政府は民心を制御するために、国家イデオロギー及び民族主義イデオロギーを交じり合わせた方法を取っており、「愛国主義」的な「民族主義」とされている。その三つの要点は、「経済発展、政治安定、および国家統一」である。

 国家統一は主に台湾独立に反対することを指す。「台湾独立を支持する背後の勢力だ」と中国に宣伝されてきた米国は、中国の人権について常に批判している。これらを背景に、米国はこれまで中国政府に、反中国の背後勢力として、敵と見なされてきた。過去において、米国が中国の人民元の切り上げを迫っても、中国政府は応じなかった。その理由は、「米国覇権主義に屈服した」と見なされたくないからだ。それ故、何度も為替制度を改変する好機を逃してしまった。

 何氏は、人民元の切り上げを7月にした理由について、実は、スノー米財務長官が8月に中国人民元の切り上げを予測していたので、中国政府はわざとその時期を外したのだ。それは、中国政府自身の意気を増長させ、覇権主義である米国の威勢を挫くためだ。

 国際社会の圧力は人民元を切り上げさせた主な原因ではない。中国政府は独自に利益を測る基準があり、少なくとも米中関係において駆け引きの駒として利用できる。以前にも、中国政府は反体制派を人質として米中談判に利用した例がある。

 リスクキャピタルのルートを遮断、二つの政策決定は人民元の切り上げを準備するため

 実際、中国政府は早くも人民元の切り上げの準備をしていた。これは、中国政府経済政策及び討論から見出すことができ、最もはっきりしているのは「国家外貨管理局11号公文書及び29号公文書」に示された新政策である。

 1月24日公告された「外資M&Aに関わる外国為替管理の改善に関しての通告(略称:11号公文書)」及び4月8日に公告された「国家外貨管理局より国内在住者が海外投資登記及び外資M&Aに関わる外国為替登記に関しての通告(略称:29号公文書)」は、中国国内に導入された高比率を占めるリスクキャピタルにとって大きな影響を与えた。

 二つの公告は共に、リスクキャピタルの流出を難しくし、人民元の切り上げの準備を整えるためである。中国のリスク投資に関する項目は11号公文書及び29号公文書の影響を受け、停滞状態にあると言われている。これらの公告は、当初の目的がそうでなくても、最終的このような結果を招き、中国企業が海外での上場を妨げることになった。

 中国政府は何故リスクキャピタルの出入り通路を遮断したのか。唯一の理由は、人民元の切り上げを準備するためであり、リスクキャピタルを利用し、売り買いの投機的投資した末、資金を短期間で持ち出すことを防ぐためだ。しかし、世界各地の投資家は既に中国での上場に興味が半減し、外資は他のマーケットへ目を向けていると、多くの投資銀行の責任者が認めざるを得なかった。

 人民元切り上げが中国経済への影響

 今回は人民元の切り上げ幅が小さいことから、中国国内の経済圧迫を軽減することや、国際圧力を緩ませることなどはできず、内外の圧力は継続する。

 今回の人民元の切り上げ幅は米国政府の期待を裏切った。米国側は、人民元相場が経済実勢に比べて25%割安とし、繊維工業会は35%割安とし、中国国内の専門家らは20%割安とそれぞれ幅が大きいことを示した。米国は中国に対して、人民元の切り上げは、対米ドルで10%の切り上げが必要と主張したにも関わらず、今回は2%の切り上げに留まったことに失望した。米議会は、今後も法案を提出し中国製品の関税の引き上げを図ることを強調した。

 しかし、中国政府は短期間で為替の調整は行わないと表明した。理由として、中国の銀行体系が弱すぎるからだとした。中国人民銀行貨幣政策委員、国家統治局局長・李徳水氏は7月27日、中国銀行体系、貨幣体系が弱く、国際レベルに達していないため、人民元は5年以内に自由変動性移行は行わないと発表した。

 人民元の切り上げに最も影響を受けたのが繊維製造業だ。何故なら、繊維製造業に専門技術は不要で、ブランドもなく、低価格政策で維持しているからだ。仮に、人民元が5%の切り上げになった場合、低価格で生存を維持する殆どの中小企業が市場から追い出され、60~70%の企業が淘汰されてしまう。また、仮に人民元が1%切り上げただけでも、繊維製品の輸出利益に影響を与えてしまう。例えば、綿製品の場合は12%の利益減、ウール製品は8%の利益減、アパレルは13%の利益減の試算になる。人民元の切り上げは外資の繊維製造業、アパレル製造業に比較的大きい影響を与える。また、原材料の輸入にも影響を与える。

 中国経済の衰弱・虚偽・繁栄諸相

 中国経済推進原動力は、輸出、外資系の投資、内需(国内人民の消費需要)であり、その現状は、三つの問題を抱えている。

 一、輸出は大きい問題に直面している。繊維製造業やアパレル製造業が中国の主要輸出製造業であり、人民元の引き上げ前から既に多くの問題を抱えている。人民元が実際に引き上げられたら、輸出に対して不利になることがはっきりとしている。

 二、海外からの投資が減少している。6月13日、中国商務省の発表によれば、今年に入って、海外から中国に対しての投資企業数及び外資運営金額が減少していることを示した。

 三、ここ数年、中国内需の低迷が続いている。中国国内の消費価格指数は上がらず、特に農村に於ける需要が低迷している。

 何氏はさらに、中国の産業構造の角度から見ても、第一次産業は不振のまま、第二次産業工業も低調であり、第三次産業は発展が伸び悩んでいると指摘した。

 また、金融面では不良債権が多すぎる。中国政府は一部の不良債権を認めているが、海外での試算では既に6万億米ドルに達し、不良債権は45%を占めているという。中国銀行は海外市場で上場を試みたが、うまくいっていない。

 中国の全ての業種において安心できるものはなく、要求される基準に達するものもない。中国政府はしばしば情勢はよいと言っているが、ただ自分を騙し人をも騙す虚像を作っているに過ぎず、今、中国政府が取っている措置は、問題を根本的に解決するのではなく、その場をつくろって一時逃れをするだけなのだ。

(記者・辛菲)

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