中国崑崙山の仙人(21) 蜮

前書

本文は、私が知り合った先天道を修めた平先生(500歳)の経歴を記録したもので、文章はすべて記憶によるものである。何人かの人の記憶を統合したもの、または私と平先生の間であった途切れ途切れのいくつかの対話を元に書いたものであるため、文の繋がりがよくないと感じるところもあると思われる。私はそれらを一つに統合し、論理的な文脈を整えるため、想像を使った文字を加える場合があったが、事実を離れた記述はない。平先生との経験から、私は世の中の多くの出来事は人が思っているものとはまったく違うということが分かった。本文を読んだ後、多くの人は考え方が変わると思う。
 

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十二、蜮

 村に帰ると、たくさんの人が集まっていた。神医は、皆さんに手伝ってもらいたいことがあると述べ、「豚人」を捕まえて彼の病気を治したいと話した。

 村民たちは「豚人」を恐れており、彼は汚いので、助けるかどうか議論したが、神医から恩を受けているし、「豚人」を早く村から追い出したかったので、結局、神医を助けることに同意した。彼らは20数人の若者を連れて、縄と木の棒を持って「豚人」がいる場所へ出発した。

 平先生は神医に、「蜮」は平地の上で取り出してはいけないと言った。もし平地の上でやった場合は、すぐに変身して逃げることができ、手で掴むことも危険で、真体を傷つける恐れがあるという。平先生は、山の中で水脈霊地を探し、夜にそこで九龍陣を立て、「蜮」を取り出す時は九龍陣の中でやれば逃げられなくなると言った。神医はうなずいた。

 村民たちは、「豚人」がいる糞の池をぐるりと囲み、手には棍棒を握って紐で結びを作り、紐を棍棒で支えながら「豚人」の体に被せた。

 「豚人」は糞の池から立ち上がり、村民たちに向かって大声で叫んだ。まるで怪物のようだった。紐を何回も掛け直して、やっと彼を縄目にした。村民たちは紐の一端を大きな木の株に巻き、一斉に引っ張った。「豚人」は大声で怪しく叫び、口で紐を噛んだが、大勢の人には勝てずに、すぐ糞の池から引きずりだされた。

 「豚人」の悪臭は耐えがたいほど酷かった。引きずった後、村民はみんな彼と距離を置いて、近づこうとしなかった。ある中年の人が、彼を木に縛るように指示すると、彼らは力を合わせて、「豚人」を木の側まで引きずり、一生懸命に紐で巻き、彼をしっかりと木に縛った。

 そして、神医の指揮で、村民たちは「豚人」の手と足をしっかり縛り、木から解き、竹の棒で彼を担いで山中に向かって歩いた。しばらく歩いた後、山中のある平地に着いた。平先生は、「豚人」をその平地の真中に下ろさせた。

 神医は薬の袋から薬を取り出し、一つ一つ薬量を勘定した。彼の動きが遅いのを見て、私も手伝うと言い、前に踏み出すと、彼に止められた。彼は笑い始め、私の手を通して調剤した薬は利かないと言った。そして、彼は左手で調剤した薬は利くが、右手を使うと利かなくなるのだと言った。私も笑った。噂の「獨臂神醫」の意味がわかったのだ。

 

 薬の調剤が終わると、平先生が取ってきた「沈香屑」を入れ、薬団子をいくつか練り上げた。神医は村民たちに、その薬団子を「豚人」の口に詰め込んだが、何回試しても、彼は吐き出した。そして皆は一考を案じて、薬団子を豚の糞球の中に包み、彼の口を開かせ、一気に詰め込んだ。「豚人」は大声を上げながら、豚の糞と薬団子を呑み込んだ。

 約10分後、「豚人」は狂い始めた。彼は両目を丸く、大きく見開き、目は真っ赤に充血し、絶えず大声で叫んだが、その声は数キロ離れたところでも聞こえるようだった。約一時間経つと、彼は叫ばなくなった。神医はみんなに、「豚人」をひっくり返らせて、顔を下に向けさせた。しばらくすると、彼は口の中から続々と何かを吐き出した。吐き出されたものは丸くて黒く、ねばねばしたもので臭気が強く、みんな鼻を覆い、吐き気が止まらないほどだった。黒いものを吐き終わると、最後に一団の血を吐き出したが、その中に何かが揺れ動いているのが見えた。

 神医が急いで、出てきたと平先生に言うと、彼は走って陶壇子を血の中にあるそれに伏せ、中に入れた後、迅速に壇蓋を閉じた。血の中にあったため、様子ははっきり見えなかったが、そのものは足がなく、見た目はとても太いタウナギのようだった。

 この時、「豚人」はもう静かになっていた。神医は、もう治したので、彼を縛った縄を解いてもよいと言った。最初は、みんなまだ少し恐れていたが、彼が本当に静かになり、阿呆のようにぼんやりとし、話すこともなく動くこともしないのを見て、彼を解いた。「豚人」は、みんなを見て笑い、走ることもなく、叫ぶこともなく、とてもおとなしかった。神医は、彼はもう一人の普通のばかであって、これ以上治すことはできないと言い、彼を正常な人に治すことは不可能だと言った。

 村民たちはうなずきながら、本当に不思議であり、このように治してくれたのも幸運だったと言い、これから「豚人」が人を驚かせたり、害したりすることはなくなると言った。皆は相談して、「豚人」を池の中できれいに洗ったあと、彼の家族の元に戻らせ、家族に面倒を見てもらうことで合意した。

 そして、彼が吐き出したものは何だったのかと聞いた。神医は微笑みながら、回虫だが、汚いものをたくさん食べたので、回虫が大きくなって、怪物になったと話した。みんな何かがわかったかのようにうなずいた。そして、村民たちは帰り始めた。彼らは私たちに昼ごはんを誘ってきた。平先生は、神医に先に行くように示し、自分は他の用事があるので、後で行くと言った。神医はうなずいた。私は、先に行かない、平先生と一緒に行くと主張した。なぜなら、不思議な事を続けて見ることができると思ったからだ。

 (翻訳編集・柳小明)