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北魏時代の大仏、雲岡石窟

造形芸術:不器用で神秘的な微笑

文・慈璇

 【大紀元日本4月10日】兵庫県のあるお寺では、旧正月に笑いの祈願儀式が行われ、人々は笑うことによって新しい1年が健康で幸福であるよう祈るという。笑いは健康に良いという説はすでに多くある。実際、インドの内科医師カタリア氏は、長年にわたる研究で「笑いが最高の良薬」と結論付けた。さらに、大笑いの動きはヨーガの呼吸と非常に類似していることから、ヨーガを教えている夫人と共に「大笑いクラブ」を設立し、積極的に「笑いを愛するヨーガ」を推進している。世界においてすでに5000以上の大笑いクラブがあり、その内3000がインド国内にあるという。台湾にも同様な笑い
古代ギリシャの女神(紀元前6世紀末)
古代ギリシャ/クロス(紀元前530年)
クラブができたという。

 古今東西の造形芸術では、立体的彫刻においても或いは平面的絵画においても、笑顔を表現する作品は多くある。しかし、笑顔が、特定時期の特定地区に、造形芸術に普遍的に現れ、さらにある種の芸術的表現の特徴になったのは、西洋美術史における「アルカイックスマイル」であると言えよう。同名称は、古代ギリシャの彫刻史に記載され、約紀元前6世紀から480年までの間、人物彫刻に見られる表情をいう。

 当時の彫刻は発展早期にあたり、男女の彫刻は共に、杏仁の形をする両目および上向きの口元を特徴とする微笑みである。愚鈍で不器用だがやや神秘的な雰囲気は、熟睡する幼児が半覚醒時に自然に浮かべる無邪気な表情を連想せざるを得ない。このような表情は、メソポタミア文明、エジプト地区の女神の彫刻にも見ることが出来る。故に、古代ギリシャで同時期における千篇一律で変化のない彫刻は、技術が熟達していない原因ではなく、当時の彫刻家が表したい人々の精神状態およびギリシャ人の美意識と関係することを示唆される。

 「神秘的で不器用な微笑み」は、中世期の沈黙期を経て、あたかも古代ギリシャ芸術を崇め尊ぶルネッサンスの時期に再び蘇った。その内、16世紀初頭にダビンチが制作した世に比類のない「モナリザの微笑」がもっとも有名な一例と言えよう。ダビンチは同作品について、輪郭を朦朧にし、色彩を柔らかく漸次的に拡散し変化させるような書き方にて、主人公の目元および口元を表現することを示した。この書き方で描かれた「モナリザの微笑み」は500年が経ても、鑑賞者たちを惹きつけ続けているのだ。

 
北魏時代の大仏、雲岡石窟

この種の「不器用な微笑み」はギリシャの芸術と関連するインド・ガンダーラの仏像彫刻(注1)芸術も中国に伝わった。北魏の時代に雲岡曇曜五窟の魔岩の彫刻がもっともその特徴を顕著に表した作品の一つである。北方鮮卑民族の豪放な精神とインド・ガンダーラの仏像を融合し、作品は全体的に大きく荘厳な雰囲気が漂い、気迫にあふれる出来上がりである。しかし、よく見ると、仏像には杏仁のような細い目をし、しめやかな表情の中に微笑みを浮かべている。まるで、仏が持つ無限の包容力、慈悲および愛を永久に伝えているように感じられるのだ。

 
北周の時代/敦煌の第290窟の菩薩像

中国初期の仏像における表情は、多くは不器用で神秘的な微笑みである。しかし、仏教が漢民族の文化に同化されてから、仏像の微笑みは徐々に明るくなり、生き生きとなったため、神秘的な雰囲気も少しずつ無くなった。例えば、唐の時代では、敦煌の彩色菩薩像に現れた微笑は、女性的で優しいものだった。

 参考資料:

 1.「民俗美術探訪録」、著者・庄伯和

 2.「中国美術史稿」、著者・李霖燦

 3.「故宮文物月刊」、第五巻第八期(1987,11)、131~135ページ

 (注1)

 ガンダーラは古代インドのグイスワン王朝(紀元1世紀~320年)における2大仏像彫刻の地の一つで、地理的にパキスタン西部、北部およびアフガニスタン東部を包括位置、紀元前327年、アレキサンダー大王の東征により占領され、ギリシャ文化・ヘレニズムの影響を受け、バクトリア王国により統治された。仏教の伝来により両者が融合、ギリシャ風の仏教芸術が二、三世紀を境に栄えた。

 (06/04/10 09:48)  





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