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5月23日、新興諸国の株式下落が厳しくなっているが、多くの投信運用会社はこれまで急速に上昇した反動との見方を維持、今回の調整局面は投資のチャンスと指摘している。写真は2002年7月、ブラジルのサンパウロ証券取引所(2006年 ロイター/Inacio Texeira)

投信運用会社、新興国株式急落にも強気の姿勢強調

 【ロイター東京5月23日】新興諸国の株式市場の下げが厳しくなっているが、多くの投信運用会社はこれまで急速に上昇してきた反動との見方を維持しており、今回の調整局面は投資のチャンスと指摘している。ただ、調整がどの程度続くかについては明言を避けている。

 インドのムンバイ株式市場は22日、主要株価指数であるBSE指数が10%以上の下落となり一時取引停止となった。一時間後に取引再開後は急速に値を戻し、最終的に前日比3.67%安で取引を終えている。BSE指数は、18日に前日比6.7%下落して以降、下落が続いている。

 ブラジルのボベスパ株価指数も前日比2.86%下落し、2月2日に記録した下落率3.07%以来、最大の下落率となった。中国系株式でも、5月上旬の高値から下げ足を速め、H株指数やレッドチップ指数が下落傾向にある。ロシアのRTS指数も週次ベースでは2週連続の下げが続いている。22日も前日比9.05%の下落となった。

<株価下落の背景、ヘッジファンド系資金の利食い売りなど>

 これに対し、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)関連の公募投信を設定・運用する運用各社は、投資家向けにファンドの基準価額の下落と株式市場の見方についてコメントを公表。

 JPモルガン・アセット・マネジメントは、今回の新興国株式市場の下落の背景として、「最近の米国の金融引き締め政策の終えん観測の後退とともに国際商品価格の高騰が一服したことで、リスク許容度の高い投資資金が国際商品市場およびエマージング諸国全体からも引き揚げられるのではないか、という懸念がある」と指摘。「こうした懸念の中で、コアCPIなど米国で発表された指標を受け、米国の株式市場が下落したことをきっかけに、インド市場でも利食い売りが進んだ」との見方をしている。

 また、先週のインド市場の下げについては、「インド固有の要因として、海外機関投資家に対するキャピタルゲイン課税の増税が一部報道されたことも下落要因」(三菱UFJ投信)としている。

 インド政府は17日、投資家とトレーダーを区別して課税するためのガイドラインを作成する方針を示したことで、市場では、海外ファンドが投資を引き揚げるのではないかという観測が浮上していた。ただ、このキャピタルゲイン課税の増税については、この後、インドのチダムバラム財務相が、海外機関投資家をトレーダーとみなすことはしないとして、市場の観測を否定した経緯がある。

 中国系株式の下落については「直接的な下落の原因は、米国における輸入物価の高い伸びがインフレ懸念を高め、それを受けて米国株式市場が下落したことによる」(三井住友アセットマネジメント)が、これに加え「中国政府が景気過熱を抑えるために、中国人民銀行による貸出基準金利の引き上げに続き、新たな引き締め政策を打ち出すとの懸念や、中国銀行の大型IPOを控え需給バランスが乱れていることも指摘されている」(同)という。

 ブラジルやロシア市場などの資源国については、米国の金利上昇リスクへの懸念が高まったことで、商品先物や資源株などのリスク資産への需要が後退するとの見方が広がったことに加え、これまでの資源株市況の急騰に対する警戒感から、下げ局面で下げ幅は比較的大きくなったという。

<今後の市場見通しは強気で一致>

 今後の市場の見通しについて、運用各社の見方はポジティブで一致しているが、どの程度の調整が続くかについての明言は避けている。

 インド市場について、JPモルガン・アセットは、「今回の調整局面は株式の買いのチャンス。インド株式の特性として、調整幅が大きければ大きいほど、その後の株価反発期待も大きい。発表されている企業業績も好調でファンダメンタルズは良好だ」としている。また「短期的には、地方選挙と主要企業各社の業績発表が市場の主要関心事になっているため、株価が引き続き乱高下することが予想される。しかし長期的な株価動向については、楽観的な見通しを維持している」としている。

 一方、三菱UFJ投信は「インド政府は2月に発表した予算案で、電力、通信、港湾、道路輸送などのインフラ投資に力を入れていく方針を発表している。ファンドの運用においては、インフラ関連銘柄に高いウエートを置いた運用を継続する方針」としている。

 中国系株式市場については、三井住友アセットは「中国経済にとって厳しい引き締め策の導入が急がれる状況にはないとみている。今後、更なる引き締めがあるとしても、産業政策や窓口規制など特定業種に対する選別的なものにとどまり、経済全体に与える影響は限定的になるだろ。中国銀行のIPOについても、現時点では市場の関心が高いため、需給悪化で相場下落を引き起こすとはみられていない」とコメント。今後は、米国市場が落ち着きを取り戻し次第、徐々にその(中国系株式市場の)成長性が評価される相場に再び戻るとみている。

 ロイターが集計している国内投資家のBRICs諸国に投資するファンドの純資産残高は4月末現在2兆4620億2857億円。なかでも、最も純資産が大きいのがインド株ファンドで9070億円、次いで中国株ファンドの5683億円となっている。

 (06/05/23 16:01)  





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