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6月9日、複数の日銀筋によると日銀は14、15日に開催する次回金融政策決定会合で、現行のゼロ金利政策を維持する見通し。写真は日銀の福井総裁。4月撮影(2006年 ロイター/Toshiyuki Aizawa)

日銀は6月会合でゼロ金利維持し、経済・市場動向見極めへ

 複数の日銀筋によると、日銀は14、15日に開催する次回金融政策決定会合で、現行のゼロ金利政策を維持する見通し。株安など市場が不安定なことに加え、4―6月期の経済指標を見極めたいとの声が多く、ゼロ金利解除は時期尚早との見方が強い。同時に実体経済は4月経済・物価情勢の展望(展望リポート)に沿って推移していると判断している。

 ただ、世界的に株価が軟調になっており、利上げの議論を本格化しにくい状況。日銀は、株安が長期化しないかどうか29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の市場動向を注視していくとともに、その後に出てくる日銀短観やその他の経済指標をみつつ、金融・経済情勢の動きを判断していく。

 足元の景気は「シナリオから大きくそれるようなデータが出ているかというと、決して出ていない。むしろ、われわれが考えていたラインにほぼ近い形で実体経済は推移している」(8日、岩田副総裁)と見ており、日銀内では4月展望リポートに沿った動きと判断している。

 天候不順だったこともあり、やや消費に弱い面が見られるものの、企業の設備投資意欲は強さを保っている。9日に公表された4月機械受注(船舶・電力を除く)は前月比10.8%増となり、内閣府のマイナス予想から一転し、4―6月期の受注が2期ぶりにプラスに転じる可能性が高まった。

 日経平均株価が1万5000円を大きく割り込むなど、株安が続いているものの、現時点で景気・物価に影響は出ていないと認識。日銀では「次の均衡に向けたプロセス」(7日・福井総裁)とみており、調整が終われば、安定を取り戻すとの見方を示している。

 量的緩和解除以降、削減を進めてきた当座預金残高は、9日現在で約10兆円まで減少した。当座預金残高は「ディレクティブにある『無担保コールレート(オーバーナイト物)を概ねゼロ%で推移するよう促す』との方針の下で、可能な範囲で引き下げる」(中曽金融市場局長)方針で、決定会合時には10兆円割れまで削減が進む可能性が高い。複数の日銀筋は、現行の当座預金残高水準で「技術的にはゼロ金利解除は可能。(ゼロ金利解除の)最小限の条件は整う」としている。

 ただ、当座預金残高水準がある水準まで削減されても、すぐに利上げに動くわけではないことは、福井総裁が繰り返し述べている。決定会合は15日に当面の金融政策運営を決めるが、当座預金削減を進めてきた積み期間の最終日に当たるだけに、短期市場の落ち着きを確認したいとの声がある。

 株価についても、調整が終われば安定すると見ているものの、ある幹部は「金融市場がこのように不安定だと、ゼロ金利解除の議論は難しい」と述べている。日銀の認識通り、投資家のポジション調整ならば、早晩、市場は落ち着きを取り戻すことになる。

 しかし、米国のインフレ増大・景気減速という「スタグフレーション」が現実のものとなれば、日本経済にも大きな影響が及ぶことは避けられない。

 岩田副総裁は米国の生産性の伸びが十分高い中で、単位労働費用がどんどん上昇することはなく、むしろ安定している点を挙げ「米国のファンダメンタルズは強じん」との見方を示している。岩田副総裁は「目先、やや不透明感は出ているが、年後半には3─3.5%というに潜在成長率に見合った成長率へとソフトランディングする」と見通しており、スタグフレーション懸念を否定している。

 日銀内では、28、29日のFOMC(連邦公開市場委員会)をへて、市場が落ち着くかどうかが、当面のポイントになるとの指摘が出ている。

 さらに、4―6月の経済指標を見極めたいとの指摘も多い。7月3日には6月調査日銀短観が公表されるが、株安が企業マインドや設備投資動向にどの程度影響を与えているか、確認することになる。

 
(ロイター6月9日=東京)


 (06/06/10 07:15)  





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