米中貿易戦争 三極貿易会談

日米欧の貿易相、「第三国」市場歪曲に近く措置 中国念頭か

2018/06/07
更新: 2018/06/07

日米欧の貿易相は5月末に会談し、「第三国における非市場志向の政策」に懸念を表明し、措置を取ることについて議論した。3閣僚の声明は昨年に続き、グローバル市場を乱す国の補助金や、過剰供給問題、技術移転強要など、中国を念頭としていると思われる文言が多分に盛り込まれている。

世耕経済産業相、ライトハイザー米国USTR 代表、マルムストローム欧州貿易担当委員と5月31日に仏パリで貿易会談し、共同声明を発表した。世耕経産相はSNSで、「第三国による市場歪曲措置」に関して3つもの付属文書付の声明を出したことで、対応するべき問題の重点を強調。3極が緊密に連携することを示したと述べた。

過剰供給

声明で3閣僚は、過剰供給能力や労働者・企業にとって不公平な競争条件など、「国際貿易の機能の欠損に繋がる非市場志向の政策や慣行に対処する」とした。

例えば、中国は国が鉄鋼業の振興を決め、関連企業の国有化を進めて優先的に補助金を出している。中国国内で鉄鋼事業があふれ過剰生産を招き、供給が増えすぎたため、国際市場価格の下落につながった。

2018年3月、米トランプ大統領が主に中国に対する鉄鋼に関税を課す貿易制裁を実施すると表明した。

国の補助金

3閣僚は付属の声明で「補助金を出す国が、商業上の害を他国に対して及ぼさないことを証明する義務を負う、WTO ルールの補助金規定の強化」を検討するとした。  

補助金問題は、米中貿易摩擦でも議題に上がっている。米国通商法301条調査では中国の補助金供与問題を直接指摘している。

4月、米通商代表部は年次の外国貿易障壁報告書でも、中国の産業政策と財政支援は過剰生産を招き、グローバル市場をゆがめる輸出を増加させている」と批判した。

名古屋大学・川島 富士雄氏はシンクタンク経済産業研究所の論文で、中国は「補助金の百貨店」と例えた。

川島氏によると、中国共産党政府は「国策で発展促進させる重点・戦略産業に対して(国内企業に)補助金を出し、税優遇措置を導入するだけでなく、政府調達、製品基準、輸出制限といったさまざまな政策手段を、いわば『総動員』している」と指摘。

こうした国内企業を優遇する差別的な禁止補助金の頻出が見られるため、中国産業政策当局の「WTO義務遵守意識は極めて低い」とした。

技術移転の強要

日米欧の貿易相の声明では「いかなる手段でも、外国企業から国内企業への技術移転を要求したり圧力をかけたりしてはならない」との見解を共有した。
中国は、欲する外国技術をさまざまな方法で入手している。1月、対米外国投資委員会(CFIUS)の専門家を招いた聴聞会では、中国当局による外国技術の入手方法は下記に示す6つと指摘した。

▼外国企業を中国に招き、合弁会社を作らせる▼中国企業が海外で対象企業を買収する(M&Aや株式取得を含む)▼中国が対象技術製品を輸入する▼中国企業や研究機関で、技術力ある外国人を雇う▼中国人留学生が技術を学び、帰国する、もしくは本国にデータを送信する▼インターネットやその他の手段で盗み取る

米国は2018年4月、中国の技術移転の強制に対して通商法301条に基づく対中制裁措置の発動を決定している。

3閣僚は、「有害な強制技術移転の政策及び慣行」を止めるため、WTO の紛争解決手続などを通じて動いていくことで一致した。 また「市場歪曲的措置に対処」としてG7、G20、OECD などの国際フォーラム、また鉄鋼グローバルフォーラムやGAMS等の分野別イニシアティブにおける協力を再確認した。

(編集・甲斐天海)

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