ブドウの種を食べると盲腸になる」。そんな俗説を、昭和のころに子供時代を経験した人ならば、必ず一度は(大人から)聞いたことがあるはずです。
もちろん、これは全く根拠のない迷信です。ブドウの種で盲腸炎になることはありませんので、ご心配なく!
 

ブドウは栄養と健康の宝庫

本記事の結論を先に申しますと、「ブドウには抗酸化物質やアンチエイジングに役立つ成分が豊富に含まれているので、きれいに洗ってから、皮も種も捨てずに食べてください」ということです。

ブドウは果皮の色により、黒ブドウ、紫ブドウ、赤ブドウ、緑ブドウなど、いろいろな種類がありますが、どの種類のブドウにも抗酸化物質が豊富に含まれています。

台湾の栄養士・蔡宜方氏は、「ブドウの有効成分は皮と種に集中しています。果肉は主に糖分や炭水化物を含みますが、健康効果を発揮する栄養分は比較的少ないのです」と言います。

蔡氏は、ブドウの果肉だけでなく、皮や種も一緒に食べることを薦めています。

ブドウから得られる抗酸化物質は、アントシアニンレスベラトロールフラボノールタンニン酸、ビタミンA、ビタミンCなどです。
このような抗酸化物質は、以下のような多くの利点を人体にもたらします。

1、 がん化した細胞を取り除くアポトーシスを促進することで、抗がん効果が期待できる。

2、 血圧を下げ、血管の弾力を改善することで、心臓血管を保護する。

3、 体を傷つけるフリーラジカルを除去することで、抗炎症作用および抗老化(アンチエイジング)作用を発揮する。

4、体内の老廃物を取り除き、免疫力を高める。

5、眼精疲労やドライアイを改善し、夜間視力を増進する。

6、コラーゲンの形成を促進し、皮膚と粘膜の健康を増進する。

7、腸管内の病原微生物を除去し、胃腸を保護する。

蔡宜方氏は「体内にフリーラジカルが多すぎると体の細胞にダメージを与えます。ここで強力な抗酸化物を摂取すれば、フリーラジカルの攻撃を防ぎ、体の修復を助け、病気の発生を防ぐことができるのです」と言います。
 

ブドウの色によって、これらの栄養素の含有量は異なります

興味深いのは、ブドウの色によって含まれる栄養素に違いがあることです。
黒ブドウ、紫ブドウ、赤ブドウなど濃い色の品種は、アントシアニン、フラボノール、レスベラトロール、タンニン酸などポリフェノール類の栄養素が比較的多くなっています。表皮の色が濃いほど、その含有量が多いのです。

これに対して、色の薄い緑色のブドウはビタミンA、ビタミンCの含有量が高くなっています。ただ、これらのブドウは、それぞれにメリットがありますので、特に色や種類にこだわることなく、多く食べていただきたいのです。

ブドウの皮と種を一緒に食べるためには、生ブドウを丸ごと食べる以外に、干しブドウ(レーズン)を食べてもいいでしょう。

そのほか、新鮮なブドウを、皮も種もいっしょにミキサーにかけ、スムージー状のジュースにして飲む方法もあります。
ただし、酸化防止剤などを加えていない生ジュースは、搾ってから30分以内に飲みきるようにしてください。

ジュースにしても、レーズンにしても、余分な砂糖を加えていないものを選ぶ必要があります。レーズンは、他のドライフルーツと同じく、カリウムや食物繊維のほか、カルシウムなどのミネラル分も多く含むため、骨粗鬆症の予防にも役立ちます。
 

胃腸の弱い人は、少し気をつけてください

ブドウは栄養豊富な果物ですが、糖分が多いので、食べる量には注意しなければなりません。

蔡宜方氏によると「食べるブドウは1日に約10粒。多くても最大30粒までにして」とのこと。それも一度に食べるのではなく、数回に分けて食べます。

一気にブドウを食べると、血糖値が急激に高くなってしまいます。
特に、ブドウをジュースにすると消化速度が上がり、血糖の上昇も速くなります。

なお、食事管理をしている糖尿病患者は、食べるブドウの量も含めて、担当の医師や栄養士の指導を必ず受けるようにしてください。

また台湾では、ブドウに関して「牛乳と一緒に食べない」「魚介類を食べた直後には食べない」などの俗説もあります。

ブドウは酸性であるため牛乳のタンパク質が酸っぱくなって固まり、体が吸収しにくくなることは考えられます。魚介類は高タンパク食であるため、ブドウのタンニン酸と固まりやすく、消化に少々影響を与えるかもしれません。

蔡宜方氏によると、これらの俗説はそれほど気にする必要はありませんが、例えば、ブドウも牛乳も冷蔵していることが多いため、それらが冷たいまま胃に入ることで消化不良を起こすことはあると言います。
胃腸の弱い人は、少しご注意ください。
(文・蘇冠米/翻訳編集・鳥飼聡)