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北越の株主価値向上策は説明不足、王子の「正攻法」に限界との指摘も

 北越製紙<3865.T>が王子製紙<3861.T>の敵対的TOB(株式公開買い付け)に反対して発表した株主価値向上策について、市場関係者は、焦点となっていた三菱商事<8058.T>との資本・業務提携に関する説明に欠けるとみている。北越の三輪正明社長は、第三者割当増資のねらいと王子の統合提案について「具体的に比較は考えているわけではない」と発言。市場からは、株主説明で提案力を競い合うという、王子が仕掛けた正攻法は限界にきているとの指摘が出ている。

 北越が9日午後に開いたアナリスト説明会に出席した大和証券の安藤祐介アナリストは「当然、三菱商事との提携効果が説明されると期待していたが、王子の統合提案のデメリットばかりが強調され、ポイントがずれていた」として、24%の希薄化をさせてまで実施した第三者割当増資の株主説明が欠けていたことに不満を漏らした。

 北越の三輪社長はその後の記者会見でも、増資した資金は、新潟工場の新型生産設備の導入が目的と説明したが、三菱商事との提携効果については「その作業はこれから始まる」と述べるにとどまった。一方で、王子製紙の統合提案に対しては、2009年度の税前利益で134―179億円のデメリットになるとして、王子のTOB批判を繰り返した。

 王子製紙の篠田和久社長はこれまでに「今回(のTOB)は、開かれたところで事業構想力や提案力を競い合うことをやるべきだ」として、北越に対して三菱商事との提携効果の説明を求めてきた。しかし、王子の幹部は9日夜、北越の発表を受けて「数字の議論がしたいと待っていたが、予想していたものとまったく違った」と戸惑いを見せた。それでも、「事実誤認やおかしな記述はあるが、ここで反論しておかないと、王子が認めたことになってしまうのは困る」として、週内にも北越に対して意見表明を行う方針を示した。

 ただ、北越の三輪社長は記者団から「三菱商事との提携で具体的なシナジーの数字を出さなければ、北越の既存株主は、王子の提案との比較・検討ができないのでは」と質問されたのに対し「そういう意味合いで今回の提携があったわけではない。具体的に(王子の提案との)比較は考えているわけではない」と発言。一方で、王子のTOB阻止をねらって北越株の8.85%を取得した日本製紙グループ本社<3893.T>について「われわれの自主独立路線を理解している」として、今後、協議の申し出があれば前向きに応じる考えを示した。

 王子と北越の議論はかみ合わず、主張の隔たりは大きいが、アナリストは北越製紙の9日の発表について「三菱商事と日本製紙という安定株主ができたことで、既存株主はどうでもいいという意思表示をしたということではないか」(外資系証券)と指摘している。そのうえで、「対抗グループに寝技ばかりを仕掛けられ、(株主説明でTOBを募るという)王子の正攻法は限界に来ているのではないか」として、王子製紙がTOBの条件変更によって挽回策に打って出る時期をうかがっている。

(ロイター8月10日=東京)

 (06/08/10 09:51)  





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