安倍首相、就任後初めての所信表明

2006年09月29日 13時47分
 安倍首相は29日午後、衆院本会議で首相就任後初めての所信表明演説を行い「美しい国、日本」の実現や「再チャレンジ支援」の実施などを表明した。財政再建については経済成長を維持しつつ歳出削減を徹底するとし、歳出・歳入一体改革に正面から取り組む考えを強調した。

 一方、医薬や情報技術などの分野で長期の戦略指針を取りまとめることを表明。これまで具体性に欠けていた成長戦略について、やや踏み込んだ。ただ、税制改革の焦点になる消費税では「逃げず・逃げ込まず」との表現にとどめた。

 安倍首相は、自民党総裁選を通じて訴えた「美しい国、日本」の実現に向け、組織を整備することを表明。官邸機能を抜本強化するとともに改革を続行する姿勢を示した。

 小泉前政権から継承する財政再建については「歳出・歳入一体改革に正面から取り組む」とし、「成長なくして財政再建なしの理念のもと、引き続き経済財政諮問会議を活用して、経済成長を維持しつつ国民負担の最小化を第一の目標に歳出削減を徹底し、ゼロベースの見直しを行う」と表明した。

 2011年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化を実現するため、2007年度予算はメリハリの効いた配分にするとし、同時に「新規国債発行を今年度の29兆9730億円より下回るようにする」と明言。行革の推進で「筋肉質の政府」を実現すると同時に公務員の総人件費削減を断行するとした。

 道路特定財源は、現行の税率を維持しつつ一般財源化を前提に見直し、納税者の理解を得ながら年内に具体案を取りまとめる方針を示した。

 公共事業に関しては「これまでの改革努力を継続する中で、未来への投資となる必要な社会資本の整備を重点化、効率化を徹底しながら実施する」と述べた。

 安倍首相は、所信表明のなかには盛り込まれていないものの、規制緩和やイノベーションにより「実質3%」の経済成長が可能だとみているが、その実現については具体性が乏しいと、金融市場関係者やエコノミストらから指摘されていた。所信表明演説では「成長に貢献するイノベーションの創造に向け、医薬、工学、情報技術などの分野ごとに、2025年までを視野に入れた長期の戦略指針『イノベーション25』を取りまとめ、実行する」と明言した。

 また、地方の活性化にも資する海外からの投資を2010年にGDP(国内総生産)比で倍増する計画を早期達成させるため、アニメや音楽などのコンテンツ、食文化や伝統文化などについて国際競争力や世界への情報発信力を強化する「日本文化産業戦略」の策定を打ち出した。こうした施策で「今後5年以内に主要な国際会議の開催件数を5割以上増やし、アジアでおける最大の開催国にする」との方針を示した。

 こうした改革を実施しても対応しきれない社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定的な財源を確保するため、抜本的、一体的な税制改革を推進し、将来世代への負担の先送りを回避するとしている。

 しかし、消費税に関しては「逃げず、逃げ込まず」という姿勢で対応するとの表現にとどめ、これまで以上に踏み込んだ発言は見られなかった。

 再チャレンジ支援については「2010年までにフリーターをピーク時の8割に減らすなど、女性や高齢者、ニートの積極的な雇用を促進する」と述べた。

 再チャレンジする企業家には「資金調達を支援するとともに、個人保証に過度に依存しない融資を推進する」とし、資金面でサポートする考えを強調した。

 一方、外交に関しては、中国と韓国をはじめ、米国との関係強化の必要性を強調した。特に「中国と韓国は大事な隣国だ」としたうえで「両国との信頼関係の強化は、アジア地域や国際社会全体にとって極めて大切であり、未来志向で率直に話し合えるようお互いに努めていくことが重要だ」と述べた。北朝鮮問題も、拉致や核について従来通りの姿勢で臨むことを強調した。

 日米同盟については「基盤である信頼関係をより強固にするため、首相官邸とホワイトハウスが常に意思疎通できる枠組みを整える」と表明した。

 安倍首相はさらに「わが国の理念や目指すべき方向、日本らしさを世界に発信していくことがこれからの日本にとって極めて重要だ」とし、「国家としての対外広報をわが国の英知を結集して挑戦的に実施する」と述べた。

 物理学者のアインシュタインがかつて訪日した際に賞賛した日本人の美徳にも触れ、日本を魅力や活力に満ちた国にすることへの思いを訴えた。

[ロイター29日=東京]
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