愛と美の女神・フレイヤの物語(上)

フレイヤ(Freja)は生と死、愛情と戦い、豊饒とセイズ(魔術の一種)を司り、非常に美しく力のある女神とされ、冬が長い北欧では、人々は春がやってくるのを常に待ち望んでいるため、最も愛されている女神でもありました。フレイヤは常に濃い化粧と色鮮やかな衣装を身にまとい、時には鎧をつけて戦場に赴き、戦場で死んだ勇敢な戦士をえらびます。

フレイヤはヴァン神族の出身で、アース神族との戦争が終わった後、父親ニョルズと双子の兄フレイとともにアースガルズに移り住み、その後、美と崇高な神格により、神々の尊敬を手に入れたのです。

最も美しい黄金の首飾り

フレイヤにはブリーシンガメン (Brisingamen) という黄金の首飾りがあり、世界で最も美しい首飾りとされています。

この首飾りをつけるとフレイヤの美貌は更に生き生きし、すべての人を魅了しました。フレイヤもまたこの首飾りを気に入り、手放さず常に身につけています。彼女の美しさはアースガルズの誇りであり、9つの世界でも比類がありません。

アースガルズには顔立ちが平凡で、あまり知られていない女神・フーラ(Fula)がいて、彼女はフレイヤの美貌に嫉妬していました。「フレイヤが神々に愛されている原因はきっとこの首飾りのおかげで、もし、自分がこの首飾りをつければ、きっともっと美しくなれる」と、フーラは思いました。

ロキが首飾りを盗む

フーラはロキ(Loke)を尋ね、「この世で最も素敵な男性になれる腰ベルトを持っている」と言った途端、ロキは「そういう物がずっと欲しかったのだ!」と興奮しました。するとフーラは「簡単よ、フレイヤの首飾りを持ってきてくれれば、すぐにこのベルトをさしあげるわ」と言いました。

しかし、ロキは「それはだめだ。君がその首飾りをつければ、すぐにフレイヤのものだとばれてしまう」と答えたのです。そこでフーラはこう言いました、「安心しなさい、コレクションとして大事にしまっておくから」

ロキは、一体どうすればフレイヤの首からその首飾りを盗めるかを必死に考えました。しかし、フレイヤはいつも身につけているため、中々盗めるチャンスが来ませんでした。そして、ロキはフレイヤが眠っている時を狙って盗むことにしました。けれども、フレイヤの部屋はぴったりと閉められており、中から鍵がかかっていました。

仕方なく、ロキは蠅(ハエ)に姿を変え、煙突から中に入ったのです。やっと部屋に入れたロキはフレイヤのところまで飛んでいきました。首飾りはあったものの、フックの部分が首の後ろにあるため、手が出せません。

そこで、ロキはノミに姿を変え、フレイヤの首を噛みました。痒さによりフレイヤは仰向けから横向きに変わり、再び寝入りました。こうして、首飾りのフックがあらわになったので、ロキは元の姿に戻り、フレイヤの首から飾りを外し、ドアの鍵を開けて外に出て、フーラのところへと向かったのです。

(つづく)

(翻訳編集・天野秀)