ニューヨーク・タイムズ紙=国連における中国当局の影響力

2006/10/02 17:52
 【大紀元日本10月2日】かつては旧ソ連に同調、台湾の国際進出を阻害する中共の歴史を振り返ると、中国共産党(中共)政権は1971年に台湾に代わり、国連の中国代表となった。初期ではこの閉鎖的な共産党政権は安保理で、すべて旧ソ連に同調、台湾が主権国家として、平和維持活動に参加する問題を討論する際だけ、議案の通過を阻止する発言をした。

 以前、中共は国連オブザーバーに参加せず、関連議案についても、あまり関心を示さなかった。しかし、現在では国際舞台での重要な役割を担おうと動き始め、だからこそ、レバノン南部に国連軍事オブザーバーを派遣したのである。同時に、国連も一連の困惑に直面するようになり、なぜならば、中国当局が理解する「国際秩序」は、米国と西側国家と明らかに異なっている、そのため、国連による関連事案の処理も影響されている。

 狡猾な外交手段で、安保理に影響を与える中共

 中共は国連において、すでに「沈黙の羊」ではなくなった。その驚きの経済成長と世界への影響力が問題の根源である。そのほかには、自然資源への需要の増加も、中国当局が、アジアやアフリカ、南米などの国と新しい関係を構築する要因となっている。

 中共は積極的に国際組織に参加し始めている。例えば、国際貿易組織(WTO)への加盟、地域的連帯組織、例えば、安全問題を提唱する上海合作組織(Shanghai Cooperation Organization)の結成、二国間合意という外交政策の実施、医療チームと平和維持部隊の派遣などである。現時点までに、中共はまだ前線へ戦闘部隊を派遣していない。

 このような情勢の中、中共政権は外交謀略を熟知するベテラン外交官・王亜光氏を駐国連の大使として起用、狡猾かつ熟練の外交手段を用いて、安保理の運営を牛耳っている。シンガーポール駐国連大使は、以下のように中共の策略を形容したことがある。「国連において、中国は通常では、長い演説をしない。彼らは通常、最初に声明を発表しない。常に最初から聞き耳を立て、情報を探り、発展途上国の全体目標を掴み取ってから発言する」という。中国当局のこの策略は確かに、国連の人道的な支援を要する危機事件を処理する能力を弱まらせた。最も著名な事案は、1994年のルワンダと、2004年のスーダンのダルフールでのジェノサイド犯罪への国連対応である。中共は執拗に国連決議案を阻止したり、否決権を行使するなどとしたため、国連はこの二つの大量虐殺事件に強制力のない決議を下す結果となった。

 中国共産党の外交政策はほとんど、経済利益に基づいている。自らに利益がないと知ると、すぐに舵を変える。数年前に、中共はインドを支持し、モントリオール議定書が定めた環境破壊物の使用量を強制削減する規定に反対した。その後、同議定書が削減技術の提供を同意した後、中共はインドを裏切り、同議定書が定めた削減の規定は各国の主権を侵害していないと主張し始めた。

  中共は安保理常任理事国の否決権を駆使、人権に違反する国家でも友好関係を結んでいることから庇護してきた。それらの国には、スーダンやジンバブエ、エクアドル、ミャンマー、北朝鮮およびイランなどの国が含まれている。最近では、イランの核兵器問題を議論する場で、中共はイランの立場を守り、すでに安保理の機能に強い影響を与え、結果、安保理のイランを制裁する決議案は可決できなかった。

 現在、国連加盟国の意見が分かれる原因は、もはや共産主義と資本主義の対立ではなく、国家主権を主張することである。近年、ボスニアとルワンダでの人道危機が発生後、国連への期待感は変わり始め、西側国家は国連の介入を期し、制裁あるいは非難の方式で、不特定多数の人々の利益を厳守し、人権を濫用する国家と対抗することを願っている。

 しかし、これは西側国家の片思いのようだ。殖民統治をしばしば体験してきた発展途上国は、通常では外国人は現地国民の人権を侵害する内政干渉をしてはならぬと主張、国家の主権への侵害と反対する。西側帝国主義を強く恨む中国当局はなおさらであり、国家の主権は侵害されてはならぬと猛烈に主張してきた。その原則の中で、中共は1990年代に公然と国連の関連決議案を阻止、批判した。例えば、クウェートに侵攻するイラクへの撤退命令や、ソマリアや、ボスニア、ルワンダ、ハイチへの国連平和維持部隊の派遣などに反対した。

 中国と米国は、ミャンマ政権が非暴力民主化運動指導者で、ノーベル平和賞の受賞者アウンサンスーチー氏を監禁する問題について、明らかに異なる立場を示している。中国駐国連大使・王亜光氏がTraub氏の取材で、彼は依然北京からの指示に従い、米国が主張するミャンマ政権を非難および制裁する提案を硬く反対すると述べ、このことは国連安保理の職権範囲に属しないと主張、米国がこの提案を提出する理由、曰くミャンマーには人権や、薬物、エイズ問題が存在するとの理由は成立しない、米国国内にも同様な問題が存在しているからだと反論した。

 昨年9月に、第60回国連総会で「保護責任(the responsibility to protect)」との原則を可決した。中国当局は保留の態度を堅持しているが、王亜光・中国駐国連大使は、この原則は拘束力のある国際法であると認め、国連は本原則を適用する方式を決定しなくてはならぬと弁解、本原則はジェノサイド犯罪や、大規模かつ組織的に人権を違反する案件にしか適せず、スーダンでの人権違反の個別案件には適用しないと発言した。スーダンの問題について、中国当局は一貫して国連平和維持部隊は同国政府の同意を得た上で、国内に駐留しなくてはならぬと主張している。

 西側国家が注目する問題に無関心な中共

 中共は国際社会へ参加する際には、自己主張を基準に行動する、その風格や注目の重点はロシア、西側国家と異なる。例えば、中国当局は「領土の完全性」の問題を非常に重視するが、西側国家が注目する改革問題にはまったく無関心でいる。彼らは発展途上国の組織「七十七カ国グループ(G77)」の運営に参加し、G77の主張を支持、国連は平和と安全の問題ではなく、経済と社会問題を重視すべきと認識している。

 中共が用いる策略は、大勢の流れを見計らって行動すること。例えば、中共は国連人権委員会の改革提案を支持しなく、十年以上の時間を費やし、関連の改革提案に対抗してきた。アンナン国連事務総長の提案、つまり強制力を喪失した人権委員会に代わり、もっと厳密な機構を立ち上げるとの提案にも容赦なく反対した。

 昨年9月に激しい議論を経て、中国当局の影響もあり、パキスタン駐国連大使は、膠着した局面を打破するには有益だが、曖昧な提案を提出した。一方、中国当局は依然いかなる改革提案を反対する。最後、国連総会は新しい人権委員会および加盟国の資格を緩和する規定を可決、その規定は、中国やキューバ、ロシアのような国々は、皆選挙を得て同委員会に加盟できると定めている。

 中共の外交戦略はもう一つの事件に見られる。2005年4月、日本やドイツ、インドおよびブラジルは、正式に国連安保理の常任理事国への加盟を目指すと宣言した。その後、中国国内で反日デモが発生、日本駐中国公館や、日系企業などが攻撃の対象となった。日本人はデモの規模や、日本指導部の容認の姿勢に驚いた。同時に、王亜光・中国駐国連大使と中国在外公館の関係者らは、各国の駐国連大使を見方につけようと、精力的に働きかけた。

 ヨルダンのザイド・フセイン国連大使によると、王亜光・中国駐国連大使は、日本は歴史事実の受け止めを拒否しながら、自ら世界への貢献を自負していると怒りをあらわにしたという(ちなみに、国連への拠出費の内訳の中、日本は19%を占め、米国に次ぎ二番目である、一方、中国は2%、ロシアは1%)。

 王亜光・中国駐国連大使の論調は、中共政権が国連安保理の現・常任理事国を支持するのは、これらの国々は、第二次世界大戦における貢献が目安で、現在の経済的実力は選任の基準ではないと主張している。ところが、第二次世界大戦で、同盟国と共同作戦した政権は、今の台湾にあり、北京ではないのだ。

 中共政権は依然アフリカ国家に、国連安保理の議席の拡大を反対するよう説得することに成功していないが、その巧妙な策略はやはりアフリカ連盟に影響を与えている。8月上旬のアフリカ連盟会議の数週間前に、中共はジンバブエの独裁政権の指導者ムガベ大統領を熱烈に招待した。ムガベ大統領がアフリカに帰還する際に、アフリカ国家は国連安保理の常任理事国の現存の議席数を堅持するとともに、否決権の行使を獲得すべきと公で宣言した。この行動によって、いったんアフリカ国家が同時に国連安保理での否決権を獲得しようとすれば、必ず現任の5つの常任理事国の同意を得られない、その結果、安保理の議席の拡大案も終止符を打たれることになる。まさに中共政権の思うがままになるわけである。

 8月から国連が次期事務総長の選挙作業に取り組み始めた。多くのアジア国家は、次期国連事務総長はアジアの国から選出されるべきと認識している。中国当局もこの認識を支持している。どなたが選挙に参加するであろう、必ず米国と中国当局の検視を受けなくてはならぬ。米国は第三世界の候補者の擁立を反対するが、中国当局は米国と同盟友好国の候補者を拒否する見込み。このほかでは、中国当局はインドの候補者を支持する可能性があり、この行動が盟友パキスタンへの影響をも考慮するはず。中国当局は極力にG77との見解の衝突を避けているが、今回は恐らく思う通りには行かないかも。それらの状況からみると、今回の国連事務総長の選挙は非常に複雑である。

 中国と米国の国連における立場は非常に違っている。米国は各国が共同作戦することを積極的に呼びかけているが、中共は自国の利益を損なう如何なる提案も拒否する。米国は道徳主義を重視するが、中共は経済利益を重視する。両国はともに、公に国連の共同認識や決議案を批判できる。

 両国の国連における立場は180度違っているが、中共の両国関係を処理する手法は非常に微妙である。例えば、中共とロシアは、国家の主権に触れる一部の議題に同じ立場を有している。しかし、両国が用いる策略には異なる点がある。ロシアは米国を痛撃することに偏っているが、米国との関係を破壊したくない中共は、米国との共通点を探ろうとする。そのため、中共は、ロシアがイラクへの国連軍派遣の議案に否決権を行使すると宣言した際に、派遣反対の姿勢を極力控えた。

 最近では、イラクの核兵器問題を議論する過程において、ロシアと中国は共に国連安保理によるイランへの譴責を反対している。しかし、中共は、できるだけ米国が受け入れられる方式で立場を表明する。ロシアが45分間も費やし、協議すべきとの見解を説明したのに対し、王亜光・中国駐国連大使は、最後にあっさりと協議することはとてもよいと語るだけにした。

 もし、中国が引き続き、国連で西側国家の提案を阻止すれば、状況は一層手を焼くことになる。しかも、最終的には各国が国連への期待を捨て、その他の方式で問題の解決を探るようになりかねない。ここ数年、一部の国は、スーダンのダルフール地区でのジェノサイド犯罪と同様な案件の発生を避けるために、新しい機構の立ち上げを提唱し始め、破壊力を持つ国、中国やシアなどの加盟を受け入れないと提議している。

 編集者注:

 ダルフールは2003年2月スーダン解放軍 (SLA) と「正義と平等運動」 (JEM) が政府に対し武装闘争を開始して以来内戦の舞台となって来た。内戦の理由は、政府がこの地方の人々の保護を怠り、この地方が軽視され発展が妨げられていると住民たちが感じたためである。それ以来、政府は遊牧民民兵ジャンジャウィドが主として農業に従事している部族民の殺害、誘拐、財産略奪をほしいままにするのを放置して来た。165万を超える人々が強制的に農村を逐われ、ダルフールの町や村の周辺にできた収容所での生活を余儀なくされている。

 拘禁者がダルフールの武装反体制力のシンパとみなされた場合、拷問が行われていると報告されている。

 国連はダルフールを「世界最大の人道の危機」と称している。しかしながら、国際社会はこれまで、人権侵害を防ぐ具体的な施策を講じていない。1万を超える住民が近隣のチャドに避難し、これまで30万人が死亡したと推定されている。また、住居を失ったのは180万人にものぼるとされている。

 ダルフール情勢に関する国際社会の懸念は深く、2004年に国連事務総長により設置されたダルフール情勢に関する国際調査委員会(ICI)が2005年1月に提出した報告書は、スーダン政府による意図的なジェノサイドの存在を否定したものの、スーダン政府及び右翼に支援されたと目されるアラブ系民兵組織、ジャンジャウィードが、国際法上の犯罪と同等の国際人権・人道法の重大な違反に責任を有すると述べている。

 (記者・呉英)

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