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海外勢の日本株回帰、三角合併の課税で期待外れも

 海外勢が日本株への注目度を高めている。世界の株式市場で企業の合併・買収(M&A)が大きなテーマとして浮上するなか、日本でも来年5月に外国企業が日本の子会社を通じて日本企業を買収する三角合併が解禁されるためで、国際的な再編の進む鉄鋼株などへの買いが強まっている。

 ただ、三角合併にあたっては、外国企業の子会社が事業を行っていないペーパーカンパニーなどの場合、政府は税制上、譲渡益課税の繰り延べを認めない方針で、実効性の観点から海外勢は失望する可能性があるとの懸念が出ている。

 <M&Aへの関心高まる、新日鉄など鉄鋼株に買い>

 東京市場ではM&Aへの関心が高まっている。「キリンビール(2503.T: 株価, ニュース , レポート)によるメルシャン(2536.T: 株価, ニュース , レポート)への株式公開買い付け(TOB)などをきっかけに、食品会社や薬品メーカーやなどM&Aの対象になりやすいとみられる企業に対しては継続的な買いが入っている」(準大手証券)という。

 また、国際的に再編の嵐が吹いている鉄鋼業界に対する注目も高く、新日本製鉄(5401.T: 株価, ニュース , レポート)は20日に16年半ぶりの水準となる600円をつけた後、きょうは一時612円まで上値を切り上げた。新日鉄がブラジルの鉄鋼大手、ウジミナス(USIM5.SA: 株価, 企業情報 , レポート)を事実上傘下に収めるとの一部報道がきっかけで、21日の取引終了後、新日本製鉄はウジミナス(USIM5.SA: 株価, 企業情報 , レポート)を持ち分法適用会社化することなどを発表した。

 これについて市場では、拡大志向を強めるアルセロール・ミタル(MT.N: 株価, 企業情報 , レポート)など海外企業に対する新日鉄の買収防衛の一環とみる声が多い。アルセロール・ミタルは20日、メキシコのグルーポ・ビジャセロから鉄鋼メーカーのシカルツアを14億3900万ドルで買収することを明らかにするなど買収攻勢を続けており、株式市場ではM&Aへの関心が高まっている。

 M&Aが席巻しているのは東京市場だけではない。スウェーデンのエリクソンAB(ERIC.O: 株価, 企業情報 , レポート)が現金21億ドルで米レッドバック・ネットワークス(RBAK.O: 株価, 企業情報 , レポート)を買収することなどを背景に、20日の米ダウ工業株30種はザラ場の最高値を更新した。20日までに全世界でおよそ1000億ドルに上る企業買収の発表が相次いでいる。

 <海外企業による三角合併、日本株の刺激材料に>

 世界的にM&Aへの注目が高まるなか、草野グローバルフロンティア代表取締役の草野豊己氏は「海外企業による三角合併の解禁を来年5月に控え、国際的なM&Aに弾みがつくとの期待から海外勢が日本株への関心を強めている」と分析している。

 市場では、最高値の更新を続ける米ダウ工業株30種など海外株式に対し、日本株の出遅れが指摘されている。草野氏によると、米国勢を中心に海外勢が日本株への買いを手控えていたためで、「大型M&Aが活発な市場にはヘッジファンドの資金が活発に流入するが、こうした資金の流れから日本市場は取り残されている。海外勢が来年の日本株への取り組みを決めるうえで注目しているのは三角合併の解禁で、ヘッジファンドの間では合言葉のようになっている」という。

 「このところ、海外勢の間でもM&Aをテーマにした買いが強まっている。この背景には、来年の三角合併解禁をにらんだ動きもありそうだ」(準大手証券)との声も聞かれる。

 <三角合併の課税制度、国際資本移動を阻害との声>

 しかし、懸念は税制面にある。三角合併では、外国企業が日本にある子会社を通じて日本企業を買収する。このときの株式交換で帳簿上は譲渡益が発生するが、税制上、実際に事業を行っている子会社を通じて買収する場合には株式の売却時まで課税の繰り延べが認められる。一方、ペーパーカンパニーの場合は繰り延べが認められない見通しだ。「実際に事業を行っておらず、買収の受け皿としての機能しかない特別目的会社(SPC)などの場合は、課税繰り延べは認められないだろう」(財務省関係者)という。

 しかし、市場では「三角合併で日本企業を買収したがる外国企業にとって、日本の子会社は買収の受け皿としての機能があればいいわけで、ペーパーカンパニーで十分。これによってすぐに税負担が発生するとすれば、買収される日本企業の株主は買収に反対するケースが増えるだろう。スムーズな合併を阻害しかねない」(準大手証券)との指摘がある。

 草野グローバルフロンティアの草野氏は「こうした措置で、海外勢が三角合併制度について実効性が薄いと判断する可能性がある。この場合は日本株への失望感につながり、今年、日本株への買いを手控えてきた海外勢の姿勢は一段と後退するだろう」とみている。 新光証券エクイティストラテジスト、瀬川剛氏は「今はセンチメントが良いため、M&Aについて前向きに受け止めているが、5月になって三角合併が解禁された段階であらためて制度の使いにくさがわかり、調整ムードが強まるのではないか」との見方を示した。

 [東京 21日 ロイター]

 (06/12/22 09:40)  





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