【ほっこり池】二月の教室の少女(続編)

 表題の文章を、ずいぶん昔に書いたことがあります。その続編です。

 こんなお話でした。小学校の卒業式が近づく2月。忘れものを取りに戻った私が、西日がさす放課後の教室に入りました。誰もいないと思っていた教室に、同じクラスの女の子が一人。彼女は、手に箒をもって、教室を掃除しています。私は声もかけられず、すぐに教室を出ましたが、そこで見た光景が一枚の美しい画像となって私の記憶に残りました。

 私のその後の人生のなかで、彼女との接点はなかったのですが、忘れられない光景を目にした気持ちをいつか告げたいと思っていました。

 卒業から40数年後のクラス会で、ついにその話を彼女にしました。彼女は目を開いて驚き、微笑みとともに同じ記憶をたぐり寄せた後、その優しい目を下に向けて、小さくつぶやきました。「覚えてたんだ」。

(慧)