知らずに進む動脈硬化 血管はこうして守る

全身に血液を運ぶ血管は、傷つきやすく、動脈硬化を起こしやすいものです。日常の食事を改善することで、血管を保護し、動脈硬化がもたらす各種のリスクを回避することができます。

人は、毎日の食事が高カロリーや高脂肪であることに、いつしか無自覚になっているものです。それによって増えた血中コレステロールが血管の内側に蓄積すると、動脈硬化の誘因ともなります。しかし動脈硬化は、油脂の摂りすぎだけで起こるのでしょうか。

動脈硬化の原因は「血管内皮の損傷」

台湾台南市にある承恩漢方治療院の医師・顔士展氏は、高脂血症よりも、血管内皮損傷が動脈硬化の主な原因だと言います。「現在主流となっている研究によると、動脈硬化の主要因は血管内皮損傷です。つまり、血管内皮の損傷した個所に、悪玉コレステロールなどの塊が粘着することで引き起こされると考えられるのです」。

こうした動脈硬化がもたらす病気は、高血圧、心筋梗塞、狭心症、脳卒中など、いずれも血管に関連する疾患で、ときには命に関わる事態になりかねないものばかりです。

血管内皮が損傷する原因は、血管の炎症です。糖度が高すぎる甘い菓子や、インスタントラーメンなどの添加物が多い加工食品は、血管内皮の炎症を招きやすい食品といえます。

また、漢方医学の視点から見ると、動脈硬化は鬱血、痰湿(たんしつ)および虚寒などの体質と関係があるとされます。痰湿体質とは、体が濁っていて、痰や女性のおりものなどの悪い液体が体内に過剰にある状態をいいます。

痰湿、鬱血、虚寒の体質である患者は、冷たい飲み物や食べ物を控えるべきとされています。台湾の街頭には、新鮮な果物を搾って飲ませるジュース店が立ち並んでいますが、顔士展氏は「もし、そういう飲料を患者が飲む場合、氷は必ず抜くようにしてください」と言います。

インスタントラーメンなど添加物が多い加工食品は、食べる頻度が高すぎると血管内皮の炎症が起きやすくなります。(Shutterstock)

血液をきれいにする食べ物

近年話題の「地中海食」とは、ヨーロッパの地中海沿岸の国々で食べられている食物のことを指します。特定の料理というより「健康的な食習慣」と理解したほうがいいでしょう。新鮮な野菜や魚介類のほか、各種のナッツ、オリーブオイル、全粒穀物、豆、種子、鶏肉などを多く使用し、またチーズやヨーグルトもよく食べます。

こうした食習慣の地域では、以前から狭心症や心筋梗塞など虚血性心疾患が少ないことが知られており、専門家の研究を含めて、台湾や日本でも注目を集めています。

さて、その地中海食に加えて、血液をきれいにして血管を保護する5種類の食べ物をご紹介しましょう。いずれも私たちの身近な食材で、今日からでも実践できます。

魚油

魚油は抗炎症効果があり、血管内皮の炎症を緩和することができます。フィッシュオイルを料理に加えたり、鮭、サンマ、タチウオ、サバ、マグロ、あさりなどを食べるのも、おすすめです。

黒キクラゲ

黒キクラゲには抗凝血、保健効果があり、普段の炒めものなどに入れることができます。

タマネギ

抗炎症に非常に効果のある野菜です。血液の粘度を下げ、血管を保護します。

紅糀(紅麹

紅糀(べにこうじ)は、蒸した米に紅糀菌をつけて発酵させた食品。コレステロールの合成を抑制でき、血中脂肪を下げる効果があります。

白湯(さゆ)を冷ましたもの

適度に水分をとることで血液の粘度を下げ、血管を詰まりにくくします。一般の人は一日に1500 ccから2500 ccの水を飲むようにすると良いでしょう。もし運動で汗をかいたり、夏季であれば、飲む量を増やします。生水ではなく、白湯(さゆ)を常温に冷ましたものか、ぬるいお湯を飲んでください。氷水は、お薦めしません。

水を適度に飲むことで血液の粘度が下がり、血管が詰まりにくくなります。(Shutterstock)

注意すべき健康食品もあります

以下の食品は健康に良いとされていますが、過剰に摂取すると問題が生じます。

保健食品の代表として知られるウコンは、すぐれた抗炎症効果を発揮しますが、長期かつ大量に服用することは避けてください。ウコンは肝臓を温めますが肝臓機能を助ける作用をもたないため、虚血体質の人が、大量のウコンを長期にわたって服用すると症状を悪化させることがあります。

ベニバナを乾燥した生薬である紅花(こうか)には、虚血を去る効能がありますが、非常に強い薬であるため、漢方医師の処方なしで服用すると危険です。

緑茶には抗炎症性のカテキンが含まれていて、血管の健康保持には有効なのですが、その品質は茶葉によってかなりの違いがあります。良質の茶葉を自分で淹れた場合でも、飲みすぎると利尿作用が効きすぎて、体内の水分が出過ぎてしまうこともあります。

どれもみな「適度が最適」ということですね。どうぞご自身の血管を、お大切に。

(文・蘇冠米 翻訳編集・鳥飼聡)