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2月21日、東京株式市場では利上げ後も株高シナリオが不変との見方が支配的に。写真は先月26日、東京証券取引所で撮影(2007年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

利上げ後も株高シナリオ不変、円高に振れず安心感広がる

 東京株式市場では、利上げ後も株高シナリオが不変との見方が支配的となっている。利上げ後に円キャリー巻き戻しの活発化による円高が懸念されていたものの、実際には円安基調が変わらなかったことで安心感が広がった。円高進行に伴う企業業績の悪化といった事態は避けられる見通しとなり、海外勢を中心とするM&Aをテーマにした株価上昇相場が続くとみる関係者が多い。

 日銀は金融政策決定会合で、昨年7月14日にゼロ金利解除を決めて以来、約7カ月ぶりに利上げを実施したが、金融市場ではサプライズ感は生じず、各マーケットとも大きな混乱は無かった。利上げによって円キャリーの巻き戻しが活発化し、円高に振れるとの読みもあった外為市場では、円が一時的に買われる場面があったものの、その後は落ち着いた展開。その後は1ドル=120円後半で推移している。株式市場や円債市場では、材料出尽くしムードとなり、大きな価格変動は無かった。

 とりわけ株式市場では「利上げ後に円キャリーの巻き戻しによる円高、エマージング市場の波乱を恐れていただけに、円相場の落ち着きは安心感を与える」(ピクテ投信投資顧問・ヘッドトレーダーの小野塚二也氏)という。昨年の株価調整局面では、円キャリーの解消によりインド株などエマージング市場が急落、マネーの流れが変調して東京市場に悪影響を及ぼした経緯があることから、その再来シナリオが後退したことが注目されている。

 市場の関心は連続利上げの有無に移ったが、決定会合後に行った福井総裁の会見の内容は「期間に関する具体的な言及はもちろんないが、(利上げを)加速する必要があるとの意味合いも一連のヘッドラインには含まれていない」(ドイツ証券チーフ債券ストラテジストの森田長太郎氏)と指摘されるなど、市場が想定している「しばらく利上げはない」との見方が広がっている。

 三井住友アセットマネジメント・チーフエコノミストである宅森昭吉氏の「昨年12月からさんざん追加利上げについて議論してきたが、今回の利上げ決定を受けて、右往左往しなくてすむ。市場では、今後、半年間は追加利上げはやらないとの見方が強く、安心感が出ている」というコメントが各金融マーケットの共通した認識だ。

 円キャリーの巻き戻しが活発化しないとなると「円高進行による企業業績鈍化」という株式市場にとって芳しくないシナリオは進まない。また、今回の利上げが産業界に及ぼす影響について「企業は潤沢なキャッシュフローがあるため、利払い金が増加したとしても企業活動への影響は小さい」(大和総研・シニアエコノミストの牧野潤一氏)との分析があるなど、利上げが好調な企業業績に水を差すようなことはないようだ。

 さらに、市場では「現在の過剰流動性は世界景気の拡大によりリスク許容度が上がっていることが根底にある。円キャリー取引の影響は喧伝(けんでん)されているほどではなく、世界景気の好調による株高の流れに何ら変わりはない」(東海東京証券・マーケットアナリストの鈴木誠一氏)との指摘がある。マネーの流れに変調がないと確認されたことで「これまでと同じように、M&Aをテーマにした海外機関投資家の日本株買いが続く」(ベア・スターンズ証券・株式営業部長の倉持宏朗氏)という。

 実際、きょうの東京株式市場では、利上げ提案報道後にいったん売り優勢となる場面もあったが、為替相場の落ち着きを確認した後、新日鉄(5401.T: 株価, ニュース , レポート)をはじめとする大型株が大量の買いを集め、TOPIXは終値で昨年来高値を更新、15年3カ月ぶりの株価水準まで上昇した。東証1部の出来高は、SQ算出を除くとライブドアショック時の昨年1月18日以来の30億株台乗せとなっている。

 エース証券・専務の子幡健二氏は「世界的に余剰資金が直接的、あるいはファンドを経由してM&Aに向かっているが、利上げ後もマネーの流れに変化が起きないと確認できれば、日本でも鉄鋼株などM&A関連銘柄に海外勢の資金が流入し続ける可能性が高い」と指摘している。

 [東京 21日 ロイター]

 (07/02/22 08:21)  





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