何清漣:中国対外開放政策の重大な変化(2)

2007/02/10 08:15
 【大紀元日本2月10日】

 三.重大な変化に直面する中国外資政策

 2006年10月、中国は、外資に関する政策調整を相次いで打ち出した。このうち、象徴的な政策が2つある。1つは、国務院が、内外企業の所得税を合併する議案を10月8日に通過させ、来年3月の「両会」期間に「企業所得税法」が採決される見通しであると正式に発表した。2つ目に、政府の研究機関が中国の今後の外資政策の方向性についてまとめた報告において、将来の中国の外資政策は、「中性」的な政策に転換するとしている。この、「中性」とは、外資に対する様々な優遇政策を取り消すことを指している。

 こうした政策転換が意味することは、外資が中国で高額の利潤を稼ぐことのできた黄金時代が終息しようとしているということである。過去20年余りにおいて、約3分の1の外資が、中国を舞台にして金儲けの夢を実現してきたが、黄金の夢はなおも外資を刺激し、中国に向かう者は後を絶たない。

 現在、中国の外資政策の調整は、主として、次の二つの基準に依拠している。一つは、関係分野における外資政策が、現在の中国の経済利益と衝突しないか。二つ目は、現在の開放レベルで、経済的安全の問題が起こらないかどうか。ただ、何を「経済的安全」とするかについては、中国では意見が分かれている。この点について、中国の関係部委が基準を制定し、外資が踏み入ることが禁じられた領域を公表しているが、実際のところ、経済的安全にかかわりのない産業、領域であっても、国家経済の安全を理由に、外資の買収が頓挫しているケースもある。

 現在のところ、調整の実施が明確な外資政策は以下の2つである。

 (一)両税合併

 いわゆる「両税合併」とは、国内企業と外資企業に対し、同一の税収基準を適用することを指す。過去においては、これら2種類の企業に対して2つの税制が適用され、国内資本の税負担は重く、外資の負担は軽かった。中国国内で公表されている数字によると、国内企業の実質所得税率は25%で、外資企業の実質所得税率は12%前後であり、両者の負担税率の差は13%であった。外資に対するこうした優遇政策は、中国が緑地投資(新規設立のための投資)を引き付けた主要な要因となった。しかし、この3年来、外資による投資額が上昇するとともに、外資に対して不利な見方が次第に熱を帯びてきた。中国における外資は既に飽和状態に達しているが、その一方で、国内資本の税負担は過重であり、外資との競争の中で、不利な位置に立たされている。

 これによって、国内、外資企業の税制を統一せよとの呼び声がますます高まり、両税の合併を主張した国税総局、財政部及び国家発展改革委が勝利し、本文の初めで述べた、外資政策の調整、改変に到った。現在の過程から見ると、「両税合併」議案は、来年3月に全国人民代表大会において可決され、遅くとも2008年には実施される。

 「両税合併」後の税率は、財政部は、既に25%の税率を予告している。財政部財政科学研究所は、所得税を合併して25-28%とした場合の財政収入に対する影響の推計を既に完了させている。地方政府を安心させるため、「両税合併」を施行する時期、地域については一くくりに実施せず、施行時期について1、2年の過渡期を儲け、地域についても、西部地区において一定の緩和を行うとしている。

 「両税合併」の外資企業に対する影響は甚大である。所得税について、外資企業は、非常に多くの優遇政策を享受してきた。政策において「両免三減半(利益が出た後2年間所得税を免除、3年間半免)」が規定された後、地方政府は更に、先に徴収して後に返還する手法を実施している。外資企業の多く、特に香港、台湾資本が中国において得た利益は、基本的に税制の優遇政策と、輸出税払い戻し政策によるものである。新たな税制政策が実施されれば、こうした企業の多くは中国から撤退するであろう。他方、大きな多国籍企業の情勢は、これとは異なるであろう。なぜなら、中国は、多国籍企業の生産基地、あるいは子会社の所在地にすぎないからである。彼らは、製品を国外の親会社に販売し、定価で移転した上で、税負担が少ない国に利潤を移し、損失を回避する。また、中国を市場とし、製品の全てを中国市場に供給している一部の多国籍企業は、利益が出なくなるまで耐えるしかない。

 国内資本企業が両税合併の最大の受益者であると言う点について、これは、あくまで言い方の問題に過ぎない。なぜなら、国内資本企業の負担は全く減っていないからである。かりに、受益があるといっても、それは間接的な受益である。例えば、国内資本による製品は、外資による同種の製品に比べてもともと品質が劣るが、外資の税負担が増えることで価格が接近する。なぜなら、かつては、外資製品の税負担が低かったことから、価格を引き下げ、市場占有率を引き上げることができたからである。しかし、現在、税負担が同等になることで、中国製品は、低価格戦略によって一部の市場を奪うことができるだろう。

 最大の受益者は、実のところ、中国政府である。この政策によって、政府の税収が増えるからである。

 (二)外資によるM&Aに対する政策

 重大な変化が発生するのは、外資によるM&Aに対する政策である。2年前、外資によるM&Aは、中国商務部が奨励した外資の投資方式である。2004年を例にとると、2004年に、M&Aを通じて中国へ進出した外資は、当年の海外直接投資(FDI)の10%前後であった。この1、2年来、外資が中国企業とM&Aを行うテンポが加速している。注目を集めた事例について述べると、カーライル-徐工機械ケース、ラファージ-四川双馬のケース、ニューブリッジキャピタル-深セン発展銀行のケース、米国・アンバイザーブッシュ社-青島ビールのケース、アルセロール-莱鋼のケース等がある。こうしたM&Aについて、一部は成功し、一部は失敗している。失敗したケースの主な理由は、一部の企業が中国国家経済の安全に関係がある(事実として関係があるかどうかはまったく重要ではない)と世論が考えたことである。こうした世論の趨勢が3年間続いた後、国家経済の安全にかかわる産業、企業のリストが大きく拡大されていった。

 中国における資金の枯渇は既に緩和されている。国内民族主義の感情が高まるにつれ、外資がM&Aを行うハードルはますます高くなっている。2006年8月8日に公布され、9月8日より施行されている「外国投資者による国内企業の合併・買収に関する規定」は、外資によるM&Aに係る政策調整における象徴的な文書である。このほか、以下の動向についても注視すべきである。

 

 ①中国国務院は、外国投資審査委員会に類する部間合同会議の設立を準備している。これは、国家発展改革委が率い、商務部、財政部等が参画する合同機関で、装備製造業を含む重大な外資M&A項目について審査を行う。

 ②これと同時に、7大重点製造業において、外資の絶対的株式の保有、相対的株式の保有に制限を設ける。その対象には、原子力発電設備、発電設備、変電設備、造船、歯車、石油化学設備の製造、鉄鋼分野が含まれる。このほかにも、重点企業20~40社が列挙されており、国務院文書の形式で、直接名指しして保護されるという。

 重点企業の設定基準については、主として市場占有率、資産規模、生産規模、販売収入等の指標に基づいて比較衡量がなされている。外資の導入に責任を負う商務部は、歴来、外資優遇政策の維持を主張してきた。しかし、今年になると以前の態度を翻し、「外資による中国産業の統制に関する報告」を公表した。これは、数年来における、外資の中国への投入の効果について検討を行ったものであり、報告の基調は、中国の産業は、既に外資によって統制されており、経済の安全面での憂慮に満ちている、というものである。

 外資によるM&Aに対する将来の政策を、如何にして把握するのか?中国の世論は、普遍的に、二つの“赤線”を引くべきであると考えている。一つは、外資が経済秩序を撹乱するか否か、二つ目は、産業の安全にとっての脅威となるか否かである。この二つの赤線に踏み込んだ外資のM&Aは、おそらく全てが「警戒」の対象となる。他方で、産業構造の調整、経済成長モデルの転換に資する外資は、M&Aが奨励される。

 (三)中国人が外資に変身する道を遮断

 外資政策の変化に係る第三の特徴として、中国人が外資に変身して優遇措置を受ける道を遮断している。

 

 中国における外資のうち、3分の1がニセ外資である。すなわち、中国人が資金を海外に移し、外国会社の名義で登記して、中国に戻ってきた資本である。中国によると、ニセ外資は主に次の3つの類型がある。第一が、香港、マカオや国外に経営の実体がある中国内資企業で、発展戦略上の必要性から、国内に戻って外資による投資として設立した企業である。第二が、海外におけるファイナンスの必要性から、海外のダミー会社を登記して自社を買収させ、レッドチップの形で上場した内資企業である。第三が、純粋にレントシーキングを行う戦略的目的で、国外、特にオフショアの金融センターにダミー会社を登記し、外資に変身した内資企業である。

 推計によると、第三の形式のニセ外資は、現在の中国において非常に普遍的であり、今日に、単一の低税率を適用している香港は、内資企業がダミー会社を登記するホットスポットとなっている。その他、ヴァージン、ケイマン、サモアは、それぞれ、中国FDIの第2、第7、第9の来源である(中国商務部の統計による)。FDI全体におけるニセ外資の比率がどれだけあるのかについて、世界銀行は、1992年において、この比率が既に25%に達していると推定している。また、多くの専門家は、現在において、ニセ外資の比率は33%を超えていると推計している。

 中国当局が2006年8月に発表した「外国投資者の国内企業に対する合併・買収に関する規定」は、「実質支配」の原則を導入している。第11条、第15条は、当事者が、審査機関に対し、その管理関係と、実質支配者について明らかにし、国内の主体が実質的に支配するM&Aの場合、商務部の審査が必要となる。第9条の規定によると、実質的に支配する国外会社の名義で国内企業に対してM&Aを行う場合、設立された外資投資企業は、優遇措置を受けることはできない。このほか、第58条の規定によると、国籍を変更する国内企業の自然人株主は、当該企業の性質を変えないと規定している。

 上述の規定は、「ニセ外資」がもくろむ利益を実現不可能にするものである。この変更は、中国政府が、海外華人を自国民と見なす政治原則とも非常に附合している。

 四. 誰が外資政策に影響を与えるのか

 誰が外資政策に影響を与えるのかについて問う以前に、最も問うべきは、「誰が産業の安全に関心をもっているのか」である。

 上述の産業は、本来、「国家経済の安全」に係る戦略的産業のリストには列挙されておらず、中国当局も、本来、こうした産業が、「経済の安全」と関係があるとは考えていなかった。すなわち、上述の産業が国家経済の安全にかかわるという議論は、最近の2年間において喧伝されてきた話題である。では、誰が、こうした企業の経済的安全に関心を持っているのか。

 上述の産業と関係があるのは、2つの組織ないしグループである。1つは、上述の産業と競争関係にある中国企業である。もう1つは、消費者である。消費者の利益から言えば、中国の消費者が外資企業の商品、サービスを購入する場合、その品質は、中国本土企業のものを購入する場合よりもはるかに高い。また、外資からコントロールされず、「経済の安全」に脅威を受けない産業、例えば電気通信、石油エネルギー、金融業にあっては、人々は、こうした企業の独占価格、質の劣ったサービスを甘受しなくてはならない。さらに、こうした国有経済の寡頭が民衆の利益を掠奪している点については、以下の事実が証明している。中国政府は、今年の第16次全人代の開催期において、中央集権を強化し、勢力の強い部委に対し打撃を与えるため、新華社の名義で10月4日に、「特殊利益集団の拡大を抑制・防止するための措置をとる」旨の文章を発表し、公衆に対し、こうした国有経済の寡頭が公衆の利益に損害を与え、社会の調和を破壊していることを認めている。

 外資の一般工業への参入が、国家経済の安全にかかわると喧伝しているのは、こうした外資と競争関係にある国内企業であり、上述の産業のメインは国有企業、非民営の企業であるといってよい。中国国内においても、2005年9月下旬、中国自身が500強企業を選出している。500強にランクされた大企業の大多数は、依然として国有独占企業である。このうち、実現利潤が10億元を超えていた企業は83あり、その利潤の総額は4271億元で、500強の総利潤の81%を占めていた。これは、中国の企業の上げた利潤は、主として少数の大企業、しかも、主として国有企業であることを示している。私営企業が中国企業500強に占める割合は、15.8%に上昇したものの、その営業収入が占める割合は、わずか6.69%にすぎない。2005年7月に、米国「FORTUNE」誌が発表した世界500強の最新ランキングにおいて、中国企業は15社がランク入りしていた。トップ50に入っていたのは3社で、中石化(シノペック)、国家電網、中石油(ペトロチャイナ)であった。ランク入りした企業のリストを見ると、ほぼすべてが、石油、化学、銀行、エネルギー等、独占の利益を得ている大型国有企業であり、かつ、主に中央に直属する国有企業であった。

 こうした「特殊利益集団」が国家の政策及び法律に与える影響力を過小評価してはならない。近年、こうした特殊利益集団は、学者を買収するなど、様々な手段で、民族工業の保護を旗印として呼びかけをおこなっており、まさにこれによって、今年になって外資政策の方向性の調整がなされたのである。実際、中国国家経済の安全を守るためというよりも、こうした特殊利益集団の利益を守るためといった方が妥当である。これまでの事例でまだ納得がいかないという人のために更に事例を挙げると、中国はいま、外国の大型チェーン店であるウォルマート、カルフール等が中国業務の拡大を行うことを制限する規定を設ける準備をしている。これが経済の安全とは全く関係がないことは、証明可能なことである。なぜなら、こうした外資大型チェーン店の経営は、民衆の生活とは関係があっても、国家経済の安全とは全く関係がないからである。

 中国企業もまた利口になり、民族主義の感情を利用して自身の利益を守ることを学んだ。多くの産業協会は、現在、外資によるM&Aに関する争議に相次いで介入している。例えば、中国軸承(ベアリング)工業協会は、ドイツ・シェフラーグループと洛陽軸承集団が買収の合意に達したことに対し、公開で反対した。また、中国コンクリート協会は、取引規模が1億ドルを超える外資が国内のコンクリート企業を買収する事件に対し、政府が審査を行うよう求めた。

 国内企業が保護を求める理由が、時間の猶予を得て、自身の能力を改善し、商品及びサービスの質を向上させるためであるというならば、過度に批判すべき話ではない。しかし、外資を追い出す目的がここにはなく、独占の利益を保護することにあるというならば、消費者は浸透効果(Trickling-down effect)を全く享受することができず、保護主義を高く掲げた民族主義の旗幟が、疑惑の影を落とすことになる。

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