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ファンタジー:個人タクシー「金遁雲」の冒険独白(その4後編) 官民癒着の成れの果て「ツワモノどもも夢の跡」 作者:劉中元
【大紀元日本6月29日】先生宅の茶の間で引き続き、TVを見ながら談笑していると、ブラウン管に社会保険庁の政府広告が流れた。「・・・国民皆が健康に!・・・緑の楽園計画!・・・」続いて、社会保険庁の長官と年金族の黄乃議員がニカッと笑っている。口元の銀歯と金歯が実に成金趣味で嫌らしい。「・・・緑の楽園計画は、地方の村興し、充実した豪華なスパリゾート施設がその振興にも役立っています!・・」と溌剌と発言している。
先生は、テロップを見つめると、昆布茶をヒトすすりしてしばし沈思黙考し、「張君・・・この緑の楽園計画はね・・しばらくして破綻するよ・・・素人が商売をしてもね、所詮は武士の商法なんだ。儲けるのは開発業者だけで、国民の財産はどぶに捨てられるのと同じ憂き目に遭うよ・・・」。先生宅の薄暗い電灯に蛾が飛び込んで「ジジッ」と焼け焦げている。私は、この悪辣な人民代表の顔をしっかりと脳裏に焼き付けると、先生に慇懃に礼を述べて、先生宅を後にした。
豊島区目白の学習院近くの黄乃宅についたのは、その日の午後十時をとうに過ぎていた。自宅前で金遁雲を停め、インターフォンで接触を試みる。「すみません・・・ご贈答品をお届けにあがりました・・」「どちらからですか・・・」年配のお手伝いさんのような女性の声が聞こえた。しめた!「・・・アオヤマ・ディベロッピング・サービスですが・・妹妹餃子の配達です!」すると、暫くして「入れ!」という野太い声が聞こえ、「ギギッー」と屋敷のオートロックが解除した。
広い大理石造りの玄関に入ると、虎が身構えているので少々びっくりした。お手伝いらしい年配の女性はホホと微笑すると「これは、旦那様がインドに研修視察にいらした時に、バンガロールの郊外で仕留めたものです。時価○○円はくだらないでしょう・・」。エッ!?この国の人民代表は、研修で狩を楽しんでいるのか?まぁ、どこの国の議員でも海外研修ともなると、なにやらきな臭いのではあるが・・・
「先生は今、奥の幸福の間でおくつろぎになっています。こちらにどうぞ・・」年配の女性に促され、私は玄関から十数メートル以上奥に入った「幸福の間」まで案内された。女性が目配せするので、「・・龍紋会の張です・・妹妹餃子をお届けにあがりました・・」・・・暫くして「入れ!」と声が掛かったのでそっと障子を開けた。すると、驚いたことに、この二十畳ほどの大広間に日本の人民幣を束にして敷きつめ、その中央で酔っ払って、ステテコ姿で悠々と寝ていた。これが、この人民代表の最高の気分転換らしい。
「あー!最高だ!これが、国民の血税だと思うと、王族になったようで実に気分がいい!・・・おい!そこの龍紋会の若いの!その餃子は美味いのだろうな!」と聞くので、「・・・はい、それはもう、いつも通り申し分のない味でして・・」と答えると、札束の中央からやおら起き上がり、「・・・このオカズは、ワシの好物での・・」と嘯いている。ちなみに、私が「先生のように成功するには、どうすればいいのでしょうか?」と釜を掛けると、顔面に歪んだ微笑を浮かべ、「・・おまえのような若いヤクザものにはもったいない教えだが・・教えてやろう。それはな、この国民の勤勉さと正直さを奉るのでなく、逆手にとることだ。・・まぁ、実際にやるとなったら、権力が必要だ・・ワシのような時代の寵児でなくては無理な話だな」。
黄乃が土産物の中身を検めると、果たして惣菜の餃子であったので、みるみる血相を変えて「何のマネだ!おまえ、何者だ!蛇頭の手のものか?」と聞くので、私は静かに頭を振り、「あなたに引導を渡しに、はるばる中国の山奥から来たものです・・・」と言った。「お前、この屋敷から生きて出られぬぞ!」と凄むので、これ以上の問答は無用と玉帝の如意棒をその脂ぎった太鼓腹に突き刺した。すると、出るわ出るわ、その霊腹から山ヒルや吸血蝙蝠や大量の藪蚊など、国民の血税を啜る魑魅魍魎があふれんばかりに迫り出してきて、しばらくして元神が麻痺したのか、白眼を向いて札束の中央でもんどりうって、うつぶせになって倒れこんでしまった。
それから数日して・・また私は吾味先生の田園調布宅にお邪魔していた。先生は、眼鏡の奥から慧眼の目を細めて、TVで国会中継を見ている。丁度、最大野党の民洲党で斬り込み隊長と知られる千葉選出の犬吠崎議員が資料を手に吠えている。「・・・ですから総理!・・国民年金の不正流用があった。横領があった。それは官民癒着だった。それに年金族の与党議員もこれに加担していたと・・どうして認めることができないのですか!?地方の緑の楽園計画もすでに経営難で二束三文で売りに出ている・・どうして、関係者を刑務所に送って断罪できないのですか!」・・「阿吽君!」鯉角政権の後を継いだ「保守の星」が防戦一方だ。「・・・ですから、そのような・・ああ言えば、こう。こういえば、ああという風に・・飛車には角、角には飛車と・・・斯く斯くしかじか・・うんぬんと・・」。
「何を分けのわからない答弁をさっきから繰り返しているのですか!」犬吠崎は、眼鏡を掛けなおすと手元の資料を見つめた。「ここに80年代後半に書かれた社会保険庁の内部資料がある。これは、当時の局長クラスが書いた覚え書きだ・・・これにはこう記されている。国民から集めた年金基金は、つまるところ支払いはずっと先なので、今が使い時だ。これは、長官にいったん献上して、われわれが天下る独立行政法人で資金を洗浄した後、長官傘下の企業に発注して、緑の楽園計画を進めれば、われわれの覚えもめでたく将来の昇進は間違いないだろう・・何だ!これは!この当時の長官は、現在与党の政調会長じゃないのか!公安の捜査が入ってしかるべきじゃないか!そうでないと、国民も納得しないだろう・・」。
それからさらに数日後、私がくだんの外苑近くの柳麺屋で夜食を摂っていると、年金族に公安捜査の手が入った後、その首魁に不幸があったことが報じられていた。「・・・今日午後4時頃、東京豊島区目白の黄乃政調会長宅で、黄乃議員が自宅の一室で首を吊って死亡しているのを・・政策秘書が発見してすぐさま最寄の慶応病院に搬送されたが、午後5時半頃、脳死と判定され死亡が確認された・・遺書らしきものはなく、与党関係者はその訃報に一様に遺憾の意を表明し・・黄乃議員は緑の楽園計画の全貌を知る中心人物として・・公安捜査当局の取調べを受け・・国会では野党・民洲党の厳しい追求を受け、阿吽内閣支持率低下の地雷原として・・・参院選も近く、責任を痛感したものと・・・」、外の外苑大通りでは、油蝉が暢気に鳴いている。以って瞑すべし。
(07/06/29 08:00)
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